磁気電気光学効果の開拓
【研究分野】物性Ⅱ
【研究キーワード】
磁気電気光学効果 / 磁気カイラル効果 / 時間・空間反転対称性の破れ / X線共鳴散乱 / トロイダル・モーメント / GaFeO_3 / Fe_3O_4 / スピン軌道相互作用 / カイラリテイー
【研究成果の概要】
通常の磁気光学効果、例えばファラデー効果とは異なり、無偏向においても光の進行方向により光学応答が異なる新しい磁気光学効果"磁気電気光学"あるいは"磁気カイラル効果"を開拓し、そのメカニズムを解明することを本研究では目的としていた。これらの現象の候補物質として、空間・時間反転対称性がともに破れている(自発磁化と自発電気分極を有する)フェリ磁性体GaFeO_3と、局所的な空間反転対称性の破れを有するFe_3O_4等に着目し研究を推進した。
フェリ磁性体GaFeO_3において、可視、X線領域の波長の光による電場あるいは磁場変調透過スペクトルの測定と、磁性と電気分極を同時に担うFe元素に共鳴条件を合わせたX線共鳴磁気散乱の測定を行った。透過スペクトルの測定では"磁気電気光学効果"を、X線磁気散乱の測定では"磁気カイラル効果"に由来する散乱信号を観測した。これらの信号が電気分極や磁化の変化に相関することから、トロイダル・モーメントの寄与を想起させる。X線共鳴散乱による磁気カイラル効果の測定では、散乱位相を利用することにより原子散乱因子の個々の成分(電荷、軌道、スピン、トロイダル・モーメントに起因した成分)を分離・決定できることが特徴として挙げられる。X線散乱の指数とスピン超格子構造の相関関係の考察から、トロイダル・モーメントに起因したX線散乱成分を同定することにも成功した。さらに、量子論的な考察から空間反転対称性の破れによって3d軌道の励起状態への電気2重極・4重極子遷移がともに許容になり、励起状態間のスピン・軌道相互作用による混成が磁気カイラル効果に重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらにX線共鳴散乱において、各サイトの散乱因子間の散乱位相差を利用することで、結晶構造的には空間反転対称性を有するが、局所的に反転対称性が破れている物質においても、磁気カイラル効果を検出できる。本研究ではFe_3O_4を候補物質として研究を進めた結果、磁気カイラル効果の検出に成功した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
宮坂 茂樹 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】15,500千円 (直接経費: 15,500千円)