変動金利の確率過程モデルと金利商品価格の実証研究
【研究分野】数学一般(含確率論・統計数学)
【研究キーワード】
変動金利 / 金利モデル / デフォルト リスク / 数理ファイナンス / 拡散モデル / 確率偏微分方程式 / ハザード率 / 確率解析 / 数値計算 / マリアバン・カリキュラス / リー環 / 確率テイラー展開 / デリバディブ / 変動金利モデル / クレジットデリバティブ / ハザードレート / 確率変動 / 確率偏微分方程
【研究成果の概要】
本研究の目的は金利モデルとして近年研究が始まった確率偏微分方程式モデルについて理論的研究及び実証的研究を行うことにあった。当初の研究計画では国債やLIBORといったリスクのない金利のみを対象とする事を考えていた。しかし、倒産の可能性のある会社の社債などに関連したいわゆるクレジットデリバティブに対する関心が近年高まり、当初の計画を若干変更して倒産確率を含むモデルの構築も研究の対象としていった。
まず金利に関連した確率偏微分方程式の研究に関してはある適当な境界条件・係数に対する条件の下で、解の存在と一意性を示した。また解が正の範囲にとどまる条件も与えた。
次にdefaultのある債券の価格の理論的研究を行った。ここでは、従来信じられていた、hazard rate processとdefaultの条件付き確率との関係を与える公式が一般には成立しないことをファイナンスとして意味のある例の下で示した。また連続観測のフィルターリングモデルにおけるHazard rate processに対する公式を与えた。
数理ファイナンスにおいてはモデルから決まる実務的に重要な価格公式は期待値の形で表示される。統計パラメータの推定等においても、この期待値を精度よく高速に計算することは重要である。拡散モデルという特別な、しかし一般的に用いられているモデルにおいて、従来とは全く違う数値計算法を考案し、理論的には非常に効率がよいことを証明した。ヘッジング戦略等はさらに複雑な期待値の計算が必要であり、その点は将来の問題として残された。
数理ファイナンスにおいては確率過程モデルにおける統計学が今後重要になっていくと考えられる。その理論の構築も今回の研究テーマの一つであった。今回の研究では、準楕円性をもつ拡散過程について、その加法的汎関数の分布の収束に関する漸近展開公式を得たにとどまった。
【研究代表者】