時空間データの局所複雑構造に対する統計解析の理論的新展開
【研究キーワード】
時空間データ / 局所的統計解析 / 局所グレンジャー因果性 / EEGデータ / 時変スペクトル / 主成分分析 / 高次元時系列 / 縮小推定 / ミニマックス / 予測誤差 / フィッシャー情報量 / 統計科学 / 時系列解析 / 統計的検定論 / 漸近理論
【研究成果の概要】
時空間データが簡単に取得できるようになった昨今、その複雑な構造を統計的に解析することが重要になってきている。従来の時系列解析では、定常過程の統計解析が主な研究対象であった。それに対し、本研究では、時空間データの局所構造に着目し、新たな統計解析手法を提案する。このような時空間データに対して、局所定常過程のもつ時変スペクトルを利用して、局所部分観測の統計的解析を行う。これは一種の高次元的統計解析であり、チャレンジングな課題である。本年度は昨年に続き、多変量時空間データのモデル推定論、仮説検定論を展開した。その上で、高次元時系列に対する主成分分析法の基礎を構築し、複数時系列間のネットワーク構造を推定する基礎を作り上げた。多変量時空間データの推定においては、局所的な複雑構造を捉えるため、カーネルによる重み付きホイットル尤度法を提案し、その漸近論を展開した。とくに、このような推定統計量にはバイアスを持ち、それを調整する方法を解明した。また、多変量時系列モデルに対するミニマックス推定論や縮小推定論も同時に展開した。これは従来の統計解析手法とは異なり、リスク関数を考慮する場合、従来の手法を改善する様相を示した。一方、仮説検定論においては上記のモデル推定論に基づき、局所グレンジャー因果性という新たな概念を提案した。理論面では、この新しい検定方法で用いる検定統計量に対し、漸近論的観点からその漸近分布を導くことに成功した。また、局所グレンジャー因果性の検定を、脳波データへ応用し、脳波間のグレンジャー因果性変化を、時間変化で捉えることに成功し、癲癇患者の脳波間にはどのような時間変化があったかを初めて明らかにした。以上のように、本年度は局所的変化をもつ時空間データに対し、新たな枠組みでモデル推定、仮説検定を展開し、理論的解明に留まらず、実データへも適用することにより、新たな知見を得ることができた。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)