幾何的トポロジーと写像の特異点論の革新的研究
【研究分野】幾何学
【研究キーワード】
微分位相幾何 / 特異点 / 幾何的トポロジー / 低次元トポロジー / 産業数学 / 安定写像 / Vassiliev型不変量 / 絡み数 / 符号数 / 相対的特性類 / 沈めこみ / 非特異ファイバー / 特異点集合 / 特異点論 / 特異Lefschetz束 / trisection / shadow / はめ込まれた曲面結び目 / 位相的複雑さ / 特異ファイバー / 特異Lefschetz構造 / データ可視化 / 多目的最適化 / 多様体対 / 不変量
【研究成果の概要】
本研究では,トポロジーにおける幾何的アイデアを特異点論の世界に持ち込み,既存の概念・定式化・手法を革新し,写像の特異点論の飛躍的発展を図ること,そして逆に幾何的トポロジーに特異点論から新しい道を切り開き,重要な問題の解決を図ることが目的である.本年度は,3次元多様体上の安定写像について調べ,新しいVassiliev型不変量を構成することに成功した.実際我々は,非特異ファイバー達から決まる絡み数行列を定式化し,その符号数を用いて既存の不変量の新しい公式を導き出した.なお,4次元多様体を用いた別の定義から,これがVassiliev型不変量であることがわかる.安定写像は与えられた3次元多様体上にある種の構造を与えていると見ることもでき,これはそうした構造に対する不変量を与えていると考えることもできる.我々はさらに,3次元多様体上の安定写像の非特異ファイバーからなる絡み目と,特異点集合からなる絡み目の位置関係について詳しく調べた.その結果,非特異ファイバーを与えたとき,その補空間の絡み目が,安定写像の特異点集合として現れるための必要十分条件を,相対的な特性類を用いて記述することに成功した.それを用いて,非特異ファイバーと特異点集合が互いに絡まないことがあることを突き止め,具体例も与えた.これまで非特異ファイバーと特異点集合が絡む例しか見つかっていなかったことから,この具体例のインパクトは大きい.さらに,特異点集合が非特異ファイバーと絡まない場合に,その特異点集合を無限遠に逃がすことで,非コンパクト3次元多様体内に与えられた絡み目が,3次元多様体から平面への沈め込みのファイバーとして現れるための必要十分条件に関する既存の結果に対する,特異点論的な新しい証明を与えることに成功した.また,学術研究員を2名雇用し,幾何的トポロジーと特異点論の研究を推進した.
【研究代表者】