将来の気候変化にともなう温帯域の感染症媒介蚊の時空間分布変化
【研究キーワード】
地球温暖化 / 感染症 / 感染症媒介蚊 / 個体群動態 / 個体群動態モデル / 降水量変化 / 生態系影響評価
【研究成果の概要】
現在進行中でかつ将来にわたっても継続すると予測されている気候変化は、感染症を媒介する生物の活動期間や分布域を変えるので、いままで感染症の流行が少なかった温帯域でもその拡大が懸念される。ゆえに、従来からの熱帯域を対象とした疫学的研究に限らず、温帯域の生物種の特性を踏まえた生態学的研究が必要である。また、有効な感染症対策のためには、媒介生物の国・地域単位などの広域分布に加えて、都市域内の不均一な微気象環境を反映させた局地的分布を明らかにしなければならない。
初年度は、本研究課題代表者がこれまでに作成してきた、感染症媒介蚊の生理にもとづいた気象データ駆動型の個体群動態モデル(Physiology-based Climate-driven Mosquito Population: PCMP)の修正に焦点を当てた。将来気候下での動態予測の精度を上げるため、文献調査を精力的に行った。また、降水量変化時の感染症媒介蚊の動態の重要性は、2018年度から2020年度にかけて行なった科研費課題のなかですでに明らかになっているため、このことを定量的に示す研究に着手した。とくに、降水パターンは局地的であることが多く、微気象データのなかでも取り扱いが極めて難しい。そこで、降水量を数値モデル内で明瞭に変更させる実験を行うことを検討し、いくつかの予備的な試験を繰り返し行ってきた。得られた実験結果の分析を踏まえ、本実験を実施できるよう現在調整している段階である。他に、都市域の土壌条件を考慮した土壌水分量変化の数値実験を行えるよう、現実的な条件の組み合わせを検討した。
これ以外に、PCMPモデルに関する論文をPloS ONE誌に投稿した。2回のやり取りののち、受理の一歩手前まで来ている。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)