環境・社会・ガバナンス情報の計量化と投資分析―ESGのアナリティクス
【研究キーワード】
ESG / アナリティクス / 投資分析 / 環境 / ガバナンス / 二酸化炭素
【研究成果の概要】
近年企業活動のあらゆる局面で環境・社会・ガバナンス(ESG)に配慮した活動が尊重されるようになってきている.実業界では学術界に先行し,ESG投資なるものが進んでいるが,その実態は課題だらけであると言わざるを得ない.本研究ではこうした問題意識のもと,全体を3つのフェーズ[1]ESG評価指標の鑑定と統合指標の作成, [2]ESG情報開示の計量化と効果分析,[3]ESG投資の基礎理論,に切り分け,オーバーラップしながら進めていく.最終的に包括的な枠組み構築を目指すこととした.
2021年度は前年に引き続き[3](ESG投資の基礎理論)の研究を進めつつ,[2](ESG情報開示の計量化と効果分析)に取り組んだ.ESG投資の本質は,ESGに対して好ましい活動を行いつつ,市場平均を超えるリスク調整済みリターンを生み出すという,ダブル・ボトムライン効果にあると考えられる.2020年度はESGを考慮した資産評価モデルについて検討したが,2021年度はこの考え方を推し進めファクターモデルを構成し,二酸化炭素(CO2)排出と企業価値(具体的には株価)の関係について検討した.すなわち,個別企業のCO2排出量を一つの説明変数,株価を被説明変数とするマルチファクターモデルを構成し,我が国の株式市場の計量分析を行った.得られた結果は以下のように要約できる.
日本の株式市場においては,上場企業が排出する二酸化炭素は負の株価リターンをもたらし株価を有意に押し下げる効果がある(負の炭素リスクプレミアムが存在する).これはONTAI報告に係る直接排出や間接排出,SCOPE3報告に係るサプライチェーンからの排出についても確認できる.また,CO2(対数)絶対量およびその変化率についても同様のことが確認できる.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
石島 博 | 中央大学 | 法務研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2025-03-31
【配分額】17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)