戦功書上から由緒へ―兵からみる兵農分離、九州北部分散所在型武家文書を事例に
【研究分野】日本史
【研究キーワード】
兵農分離 / 島原の乱 / 土豪 / 由緒 / 中近世移行期 / 在地領主 / 牢人 / 家臣団 / 転封 / 在地 / 日本史 / 史料研究 / 戦争 / 記憶
【研究成果の概要】
本研究では、日本近世史の転換点として重要な概念である兵農分離について、武士の側から見た兵農分離の意味を、北部九州の武士を事例に再考した。
兵農分離において、在地から離れた武士は、中世に活動した地域との関係を断ち切ったわけではなく、百姓などとして残った一族との関係を一程度維持していた。それらをつなげるものとして中世以来伝来する家の文書が、重要な役割を果たしていた。文書群は、近世期、他家の文書群との間に統合や写本の相互融通などを通じて形成されていたことがわかった。また、近世初期に析出された牢人たちの再仕官の過程を分析し、武士として大名家中に定着するためには、秩序を重要視することがわかった。
【研究の社会的意義】
兵農分離は、従来農村における百姓身分の成立と武士の都市集住という点に重点をおいて学校教育の教科書などで理解されてきている。
しかし、本研究を通じて武士は、かつて支配していた土地と関係をもっていたケースもあることがわかった。また、中世の由緒に基づく伝来した文書群が近世期に再編成され、各家の格式形成と関係した。また、社会的移行期であった17世紀、武士には、戦闘者としての技能と、新たに作られてきた社会秩序の遵守という二つの価値をバランスよく体現することが求められた。近世社会の成立について学術的に再検討を要する論点を提出するとともに、教科書や一般書にも反映させていきたい。
【研究代表者】