広重が描いた浮世絵風景画にみる景観の構図に関する研究
【研究分野】広領域
【研究キーワード】
浮世絵風景画 / 構図 / 河川景観 / 緑景観 / 視点場 / 仰角 / 距離景 / 数量化III類分析 / 景観 / 水景 / 景観分類 / 景観設計 / 景観の構図 / 超近景
【研究成果の概要】
絵画と現地の風景との比較を行った。以下のことが明らかになった。(1)どこにでも誰でも見ることが出来る生活景を描いた。(2)「俯瞰化」「移動配置」「デフォルメ」「スケールダウン」「削除」などの手法を用いて「絵になる景観」とした。(3)遠景要素の山は、仰角10度以下であり、平均4.9度の山を活用している。
広重が描いた「東海道五十三次」「木曽街道六十九次」の中の河川景観を決定づける要素としては、水視率と流軸角の2つの要素である。景観の構図は、この2つの要素によって、次の4つのタイプの構図を見いだした。(1)水視率が小さな対岸景(50m以下の小河川)、(2)水視率が小さな流軸景(50m以下の小河川の場合と500m以上の大河川の場合)、(3)水視率が大きな対岸景(100m以上の河川)、(4)水視率が大きな流軸景(200m以上の河川9である。
描かれた樹木の画面上の配置から、樹木の実用的機能以外に構図的機能をもつことを明らかにした。それは、次の4つの機能が見いだせる。(1)画面両側に樹木を配置する場合で額縁的機能、(2)画面の片側に樹木を配置する場合で奥行表示機能、(3)画面の中央部に樹木を配置する場合で画面分割機能、(4)画面に連続的に樹木を配置する場合で視線誘導機能である。
さらに3ケ年の総括として、前年度までの分析結果を活用し、浮世絵風景画に類似した景観の構図を現代の都市空間の中に求めるための視点場探索のチェックリストを作成し、それに基づきプログラムを構築した。つまり景観資源と考えられる景観要素を地図上から抽出し、ついで近景、中景、遠景の各距離景に必要な構成要素を示し、仰角と俯角の条件から「絵になる景観」を眺望できる視点場を推定しうる手順を示した。そして、それぞれの視点場の現地写真を用いて、被験者にアンケート調査で評価して、手順の妥当性を示した。
【研究代表者】