アゲハ蝶における擬態スーパージーンの平行進化の遺伝的メカニズム
【研究キーワード】
スーパージーン / 擬態 / 平行進化 / アゲハチョウ / 染色体逆位 / アゲハ蝶
【研究成果の概要】
シロオビアゲハのベイツ型擬態の原因領域は染色体逆位によって固定されたスーパージーンであるが、ほぼ同じ擬態スーパージーンをもつ近縁種のナガサキアゲハには染色体逆位が存在しない。そこで、2種の擬態スーパージーンの構造と構成遺伝子の発現と機能の比較などから、ベイツ型擬態の平行進化の遺伝的背景とスーパージーンの構築原理を解明する。
シロオビアゲハとナガサキアゲハの擬態紋様で異なるのは、前者の擬態形質は翅だけにみられるのに対し、後者は翅だけでなく腹部にも警告的な擬態色(黄色)が着色する。一方、シロオビの擬態翅では擬態型dsxや擬態型UXTが蛹初期に発現誘導され、これが擬態形質に結びついている可能性がこれまでに示唆されてきた。しかし、スーパージーンの内外の遺伝子群全体について擬態形質形成と関連した発現や機能は体系的には解析されていなかった。そこで、シロオビアゲハのスーパージーン内部の遺伝子(dsx, UXT, U3X)とスーパージーン近傍の遺伝子(prospero, sir2)の発現パターンが擬態型雌、非擬態型雌、雄の蛹期後翅でどのように変化するかをq-PCR法やRNAseq法により明らかにした。また、electroporation-mediated RNAi法により各遺伝子がシロオビアゲハ擬態型雌の後翅紋様形成にどのように働いているかを明らかにした。一方、ナガサキアゲハ擬態型雌の腹部での警告色の発色にdsxやUXTが関与しているかを調べるために、ナガサキアゲハ擬態型雌、非擬態型雌、雄の蛹期後翅と蛹期腹部及びシロオビアゲハ擬態型雌と雄の蛹期腹部(警告色を発色しない)における発現パターンを明らかにした。また、ナガサキアゲハの腹部において各遺伝子群をelectroporation-mediated RNAi法によりノックダウンして、dsx-Aが擬態形質に関与することを初めて明らかにした。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】40,560千円 (直接経費: 31,200千円、間接経費: 9,360千円)