ナイトの不確実性の理論と応用:その更なる飛躍
【研究キーワード】
ナイトの不確実性 / 曖昧さ / リスク / 意思決定論 / 非期待効用理論
【研究成果の概要】
本年度は研究課題に直結する論文3本の執筆を行った。2本は完成して専門誌に投稿したところ、不採択となったものの、編集者および査読者のコメントが非常に参考になったため、これをもとに論文の改訂を行い、再投稿に向けて鋭意執筆中である。残りの一本については、完成まであと少しのところまで漕ぎ着けてはいるものの投稿には至っていない。以下、簡単に3本の論文の内容について触れる。
1本目は、不確実性の問題を動学モデルに応用する際に非常に重要な概念となる「矩形性」と呼ばれる性質について研究したものである。この性質を満たしていないモデルでは、動学的最適化(Dynamic Programming)と呼ばれる大変便利な数学的手法が使えず、また、その結果、モデルの分析が困難になる。そこで、動学のフレームワークで矩形性を満たすモデルを新しく考案し、これを用いて動学的最適化の手法が用いられることを示した。また、これを動学的職探しモデルに実際に応用することによって、新しい経済学的含意を導くことに成功した。投稿した雑誌の査読者は、前半の理論部分に公理化がなされていないことに不満のようであったが、応用上極めて有効であるとの判断から、より応用研究を中心とする専門誌への投稿を目指して改訂を行い、この作業がほぼ終わった段階である。
2本目は、純粋理論に関する論文で、主観的確率と客観的確率の理論モデルにおける役割に関するものである。これに関しては、投稿した専門誌の編集者から非常に有益なコメントを得た。似た論文があることの指摘をはじめ、関連する問題点を教示いただいたが、それを踏まえたうえで、改訂を行い、特に申請者の知る限り全く新しい結果を幾つか証明し、論文に組み込んだ。これもほぼ完成している。
3本目は、以前に公表した論文の一般化で、得たいと思っていた結果が得られたが、現在、最終稿の完成を目指している段階である。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)