IoTを利用した重度・重複障害児の新たなコミュニケーション支援システムの開発
【研究キーワード】
重度・重複障害 / 重度心身障害 / コミュニケーション / IoT / OAK / AAC / iOAK / モーションヒストリー
【研究成果の概要】
初年度である今年度は,IoT(Internet of Things)技術を利用して視覚・聴覚・触覚刺激を提示しながら重度・重複障害児の反応の変化を自動的に観察記録できるタブレット(iPad)向けアプリのプロトタイプシステムを開発した。刺激の種類,提示時間・回数,方向,強度等を簡単なタップ操作で設定できるインタフェースを実装し,選択された刺激を設定された観察条件に合わせて一定間隔で自動的に提示することを可能とした。また,カメラが捉えるわずかな動きの変化について,その変化量に応じて着色することで対象児の反応を可視化しながら,観察結果を観察の条件ごとに分けて一覧表示できる機能を実現した。今後,実験結果に含まれる刺激による反応の違いを見分けることに役立つことが期待される。
次に開発したプロトタイプシステムを用いて,重度・重複障害児を対象とした実験を行った。コロナ禍の影響を受け,研究の実施者が直接学校や施設に入ることが困難となったため,ビデオ通話アプリを利用してベッドサイドと研究室をつなぎ,現地にいる保護者あるいは教師に対象児の映像を撮影してもらう形で実施した。実験の結果,開発したプロトタイプシステムを用いることで人の目では観察できない微細な動きの検出が可能なことが確認できた。また,運動障害があっても大きな動きがある子どもはその行動の意味づけが容易である一方,最重度の子どもの微細な反応の意味づけに関しては,刺激と反応の時系列分析から推定するしかなく,今後,最重度の子どもの事例を軸に様々な観点から分析することが,本研究遂行の要点となることが示された。
【研究代表者】