初期印刷文化における「書物のあるべき姿」の変容の総合的な解明
【研究キーワード】
インキュナブラ / グーテンベルク聖書 / 書物史 / 活字文化 / 聖書 / 初期印刷文化 / デジタル
【研究成果の概要】
本研究は、西洋の初期書物文化において人々が抱いていた「書物のあるべき姿」の変容を探ることを目的している。そのため、西洋書物文化の規範を高度に具現化した聖書を分析の対象とする。本年度は、課題①「初期印刷文化における聖書の形態的特徴の変遷」について初年度に引き続き取り組むとともに、課題②「聖書に対する同時代の印刷業者の認識と読者の期待の分析(コンテクスト)」を開始した。
課題①については、1500年までの出版物についてはIncunabula Short Title Catalogue、1501年から1545年についてはUniversal Short Title Catalogueという2種類の総合目録から、統一書名としてBibliaをもつものを抽出した。初年度に各種の書誌・書誌データベース等から収集した基礎情報をもとに、デジタルアーカイブや複写依頼により入手したデジタル画像を用いて分析した。その結果、1490年代後半以降は標題紙をもつものが主流となり、インキュナブラ全体と同じ傾向を示していること、一方では俗語聖書の方がラテン語のウルガータ聖書よりも標題紙の採用は早いものの普及は緩やかであること、俗語聖書は木版画を使用する割合が高いこと、木版画の使用方法には様々なパターンが見られることなどが明らかになった。この結果は日本図書館情報学会2019年度研究大会にて発表した。その後、デジタル画像が入手できず調査できなかった対象の一部について、海外で所蔵されている原資料調査を行った。
課題②については、標題紙や刊記の有無や、そこに記載されている文言の分析を行うために、書誌からの転記、デジタル画像や原資料からの転記を行い、データ入力を進めた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
徳永 聡子 | 慶應義塾大学 | 文学部(日吉) | 教授 | (Kakenデータベース) |
池田 真弓 | 慶應義塾大学 | 理工学部(日吉) | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2018-04-01 - 2022-03-31
【配分額】8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)