経済学は《良き社会》をいかに構想してきたか~ミドルデータ構築による共通善の抽出
【研究キーワード】
良き社会 / 公共善 / 経済学の歴史 / ミドルデータ / ビッグデータ / 自由主義 / コーパス / 定量テキスト分析 / 共通善
【研究成果の概要】
●当該年度は、大型の研究会を2回開催した。第1回「良き社会研究会」は、2020年9月14日(月)に「ボザンケ夫妻のケースワーク論~イギリス理想主義の「良き社会」構想」と題して、共同研究者のほぼ全員が揃って、討論を行った。第2回はケインズ学会東北部会、および経済思想研究会と共催して、2021年2月21日(日)に「M. Fourcade, Economists and Societiesについて」と「19世紀後半から20世紀初頭におけるパターナリズムの展開」の二報告を行った。
●いずれの研究会も、研究目的に指名した三区分(経済学の古典的時代、改革的時代、現代的時代)のうち、二番目の新(介入的)自由主義に対応した期間を考察している。この期間では、New Liberalismの思想的支柱であるホブソン、ホブハウスと対照的な論陣を張っていたボザンケ夫妻の再評価によって、新しい「良き社会論」の発掘が行われた。あるいは、《パターナリズム》という言葉を重要な鍵概念として、世紀転換期における自由主義の多様な議論が整理された。
●その他では、「資本主義の終焉論」について共同研究者の発表が2020年の進化経済学会で報告された。この論題は近年、にわかに多くの研究者や論壇が注目しているものであり、研究代表者も「良き社会論」と関連付けて、このトピックを集中的に考えるきっかけとなっている。
●研究代表者は「戦争と平和の経済思想」(晃洋書房;2020年3月)という編著をこの期間に発刊した。これは前の科研費結果報告であると共に、本研究のさきがけとなる序章という位置づけとなる。すなわち、理想の状態を設定した上で、様々な条件を加味して、安易に「与えられた条件」とせずに、バランス良く《公共善》を求める経済思想の流れを一定程度、打ち出した。
【研究代表者】