化学選択性と安全性を両立した新規パラジウム触媒を開発
安全性の高い水素化反応の実現へ 理学研究院 徳永信 教授/吉澤明菜 助教
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | より安全な水素化反応の実現と、医薬品や化成品などの製造プロセスへの応用に期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
2026.10.30
研究成果Physics & Chemistry
発表のポイント
Pd/Cを用いた水素化反応で、触媒の自然発火による事故が報告されている。ポリフェニレンサルファイド(PPS)ポリマー(※1)を担体に用いた、化学選択性と安全性を両立する新しいパラジウム触媒の開発に成功した。
より安全な水素化反応の実現と、医薬品や化成品などの製造プロセスへの応用に期待。
発表概要
Pd/Cは、炭素担体上にパラジウム(Pd)を担持した触媒であり、医薬品、農薬、化成品などの製造プロセスにおける接触水素化に広く利用されています。一方、Pd/Cは乾燥状態や水素化反応後に空気中で発熱・発火する危険性があり、使用済み触媒の取り扱いや保管には注意が必要です。そのため、触媒性能だけでなく、使用後の安全性にも配慮した新たな触媒開発が求められています。九州大学大学院理学研究院の徳永信教授、吉澤明菜助教、大学院理学府修士課程2年の大隅佳起氏、博士課程修了(2026年9月)の鄭雨馨氏、DIC株式会社の茨木拓氏、池田まい氏らの研究グループはPd/Cに用いられている炭素担体に代えて、難燃性、自己消火性、耐薬品性に優れる多孔質ポリフェニレンサルファイド(PPS)ポリマーを担体として用いたパラジウム触媒(Pd/PPS)を開発しました。
開発したPd/PPSは、α,β-不飽和カルボニル化合物のC=C結合を選択的に水素化するとともに、発火温度が510℃と、従来のPd/C(200℃未満)より大幅に高いことが分かりました。さらに、実際の水素化反応後にPd/Cで発火が生じる条件で評価したところ、Pd/PPSでは発火が観察されませんでした。この結果は、Pd/PPSが水素化反応における触媒性能だけでなく、使用後の安全性も向上させ、より安全な水素化反応の実現につながる可能性を示しています。
本研究成果は、パラジウム触媒の高い反応性を維持しながら、使用後の触媒の安全性にも配慮した触媒設計の新たな選択肢を示すものです。今後、Pd/PPS触媒の適用範囲をさらに広げることで、医薬品や化成品などの製造プロセスにおける、より安全な接触水素化反応の実現につながることが期待されます。
本研究成果は2026年10月28日(水)(日本時間)に英国王立化学会(RSC)の国際学術紙「Catalysis Science & Technology」にオンライン掲載されました。
Pd/PPSを用いた化学選択的水素化(※2)反応と触媒使用後の発火試験による安全性評価

Pd/PPS触媒を用いたα,β-不飽和ケトンの化学選択的水素化による飽和ケトンの合成(左)と、水素化反応後に回収した触媒の発火試験(右)。Pd/Cでは発火が観察された一方、Pd/PPSでは発火は観察されなかった。
用語解説
(※1) ポリフェニレンサルファイド(PPS)ポリマー・・・自動車部品や電気・電子部品などに利用されている汎用性の高いエンジニアリングプラスチック。
(※2) 化学選択的水素化
・・・分子内に複数の反応する部位がある場合に、その中から特定の部位だけを選んで水素化する反応。
論文情報
掲載誌:Catalysis Science & Technologyタイトル:A Safer Hydrogenation Strategy Using Poly(p-phenylene sulfide)–Supported Pd Catalysts for the Chemoselective Reduction of α,β-Unsaturated Carbonyl Compounds
著者名:吉澤明菜・大隅佳起・鄭雨馨・沈思テイ・村山美乃・中山晶皓・山本英治・茨木拓・池田まい・古澤高志・岩楯展行・徳永信
DOI:10.1039/d6cy00847j
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