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鹿児島大学 研究Discovery Saga
2026年10月14日

魚の"若白髪"の正体は新種の寄生虫スズメダイの幼魚を好む寄生虫 「スズメノワカシラガ」を発見

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学環境学生物学工学農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
3Dモデル/海洋/マイクロCT/持続可能/持続可能な開発/マイクロ/沿岸域/海洋生物/熱帯林/カイアシ類/サンゴ礁/寄生虫/生物多様性/腎臓/遺伝学

[記事掲載日:26.10.13]



概要

鹿児島大学大学院理工学研究科の上野 大輔教授、国立遺伝学研究所の前野 哲輝技術専門職員による共同研究グループは、薩南諸島海域で新種のカイアシ類を発見しました。この新種は、スズメダイ科魚類の幼魚に多く寄生し、体外に伸びる白く細長い卵のうが白髪のように見えることから、標準和名スズメノワカシラガ(学名:Cardiodectes laybackinabaueroides)と命名しました。さらに本研究では、マイクロCT解析により、スズメダイの腎臓に寄生する様子を鮮明に捉えることに成功しました。これらの研究成果は、2026年9月18日付、Marine Biodiversity (マリンバイオディバーシティ)のオンライン版に掲載されました。




スズメノワカシラガの寄生を受けたアマミスズメダイの幼魚
卵のうとその付着部(胴体の後端部)のみが体外に露出する。
スケール:10 mm(上野大輔・前野哲輝提供)


研究体制・経緯

 研究は、上野 大輔(鹿児島大学大学院理工学研究科・教授)、前野 哲輝(国立遺伝学研究所・技術専門職員)による共同研究として進められました。上野教授は、2015年の鹿児島大学への着任を契機として、薩南諸島海域全域における海洋生物調査を11年以上継続し、スズメダイ科魚類に外内部寄生するヒジキムシ科カイアシ類の1種 (体長8mm程度)が薩南諸島に限り広域に分布することを確認しました。上野教授は寄生虫の形態の顕微鏡的解析と新種記載について主に担当し、前野氏はマイクロCT解析を主に担当しました。


研究の成果・意義

 琉球列島の中北部に位置する薩南諸島には豊かな自然がひろがり、特に与論島からトカラ列島の沿岸域はサンゴ礁が発達する国内有数の海域です。サンゴ礁は「海の熱帯林」とも喩えられ、海洋における生物多様性の25%を育むとも試算される環境であります。今回の研究を通じ、薩南諸島の広域(三島村竹島から与論島海域)において発見された寄生性カイアシ類、ヒジキムシ科ウオノカンザシ属の1種は、過去記載された近縁な種いずれとも異なる形態的特徴を有していました。これを新種として記載し、Cardiodectes laybackinabaueroides(カーディオデクテス・レイバックイナバウロイデス)と命名しました。この学名は、本種の特徴でもある背側に大きく反り返り、頭部の背面が胴の背側に接触しそうに見える様子が、フィギュアスケートにおけるレイバック・イナバウアーという技を連想させることに因みます。ヒジキムシ科は魚や鯨類の寄生虫であり、多くは前体部を宿主体内に深く穿孔させ、胴体と紐状の卵のうを宿主魚の体外へ露出させる「外内部寄生」と呼ばれる寄生様式を示します。今回、薩南諸島海域から発見された新種は、様々なスズメダイ科魚類を宿主としますが、そのほとんどが未成熟の幼魚という生態的特徴を示しています。寄生された幼魚が、白髪のようにも見える細長い卵のうを体側にぶら下げる事に因み、標準和名はスズメノワカシラガとしました。
 宿主体内における寄生部位や寄生様式の解明を目的として、マイクロCT解析から3Dモデルの構築を行ったところ、本種の頭部は宿主魚の腎臓に深く食い込み、静脈血を摂食する可能性が示されました。寄生部の腎臓は大きく膨れあがり、宿主魚が被る影響は甚大であると予想されます。この事実は、おそらくこの種が幼魚ばかりに寄生する理由にも繋がると予想されます。
 このように、本種は薩南諸島海域からのみ見つかっており、おそらくこの海域が分布の中心域と考えられ、生息域が狭い種であると考えられます。また、その寄生様式も極めてユニークで、珍しい新種です。本研究により、薩南諸島海域に分布する希少な未知なる生物の存在を、また一つ明らかとすることができました。鹿児島県海域の自然の豊かさ、希少さを明確に示す新たな根拠となります。
 


発表論文

Daisuke Uyeno and Akiteru Maeno. 2026. Non‑destructive approach using micro‑CT for understanding the strategy of mesoparasitism of the genusCardiodectes (Copepoda: Siphonostomatoida: Pennellidae) on marine fishes, with a new species description from coastal waters of the Ryukyu Islands, the western North Pacific. Marine Biodiversity (2026) 56: 101, published online at 18 September 2026.
doi: 10.1007/s12526-026-01698-2
 



スズメノワカシラガの雌成体
2本の細長い部分は卵のう、体長(卵のう含まず)は約8 mm。
スケール:3 mm (上野大輔・前野哲輝提供)







マイクロCT解析から構築された3Dモデル
緑及び青色部分はスズメノワカシラガ成体、薄桃色部分は宿主魚の腎臓を示す。
スケール:1 mm (上野大輔・前野哲輝提供)