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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年10月6日

免疫反応リスクを抑えた注射型ヒアルロン酸ハイドロゲルの連続製造技術を開発

安全性の高いドラッグデリバリーシステム(DDS)の実現へ

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
安全性の高い局所ドラッグデリバリーシステム(DDS)や組織再生用足場材料としての実用化が期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
化学生物学工学総合生物農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
触媒反応/ELISA法/ファイバー/ハイドロゲル/キャリア/生体適合性/微細化/持続可能/持続可能な開発/ナノファイバー/ペルオキシダーゼ/酸化酵素/カイコ/フェノール/ELISA/ヒアルロン酸/酵素反応/組織修復/臨床応用/組織工学/組織再生/DDS/ファージ/マクロファージ/細胞培養
2026-10-5●工学系基礎工学研究科教授境 慎司

発表のポイント

植物由来の過酸化酵素(HRP)を微細化シルクフィブロインナノファイバーに固定化したリアクターを開発し、酵素の残留量が検出限界以下となる注射型ヒアルロン酸ハイドロゲルの連続製造に成功
これまで酵素反応を用いたハイドロゲル作製法には、ゲル内に残留した植物由来の酵素が体内で免疫反応を引き起こすリスクがあった
生体への安全性が極めて高く、リアクターの流速を変えることで薬物の放出速度も容易に制御できるため、患部へ直接投与する次世代のドラッグデリバリーシステム(DDS)キャリアや組織修復材への応用に期待

発表概要

大阪大学大学院基礎工学研究科の大学院生の宮脇彩里(みやわき あやり)さん、境慎司(さかい しんじ)教授の研究グループは、植物特有の糖鎖構造に起因する免疫反応リスクを極限まで抑えた、極めて安全性の高い注射型ヒアルロン酸ハイドロゲルを連続的に製造する技術を開発しました。
これまで、過酸化酵素を用いたハイドロゲルの作製方法は、反応条件が穏やかで有用である一方、ゲル内に酵素が残留することによる体内での免疫反応が懸念されていました。さらに、従来の手法では均一な品質のハイドロゲルを連続的に作製することが困難であり、これらが医療応用に向けての大きな課題となっていました。
今回、研究グループは、優れた生体適合性と広い表面積を持つシルクフィブロインナノファイバーに酵素を固定化し、不織布状にしたフローリアクターを構築することにより、酵素残留量が検出限界値付近となる均一なハイドロゲルを連続製造できることを解明しました。さらに、このシステムを用いることで、ハイドロゲルを連続的に製造しながら、そのまま直接体内へ注入(注射)できることも実証しました。これにより、安全性の高い局所ドラッグデリバリーシステム(DDS)や組織再生用足場材料としての実用化が期待されます。
本研究成果は、科学誌「Advanced Materials Technologies」に、9月29日に公開されました。



図1. 酵素を固定したフローリアクターにより、酵素をほとんど含まないハイドロゲルを作製する様子

研究の背景

これまで、過酸化水素の存在下で西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(HRP)酵素の触媒反応を利用して作製される注射可能なハイドロゲルは、薬物の放出特性や力学特性を細かく調整できるため、DDSや組織工学の材料として有望視されていました。しかし、植物由来のHRPがゲル内に残留してしまうと、特有の糖鎖構造により免疫反応を引き起こすリスクがあり、人体への使用に対する懸念材料となっていました。さらに、従来の手法ではゲルの架橋密度にムラが生じやすく、均一な品質のハイドロゲルを連続的に作製することが技術的に極めて困難でした。

研究の内容

研究グループでは、酵素をシルクフィブロインナノファイバーに固定化して不織布状のメンブレンフローリアクターを構築し、そこにフェノール修飾ヒアルロン酸と過酸化水素の混合溶液を透過させる手法を開発しました。この手法により作製されたハイドロゲルは、ELISA法による評価でHRP残留量が検出限界である2.01 ng/mLを下回るまで低減されていることが確認されました。
さらに、1.5時間の連続運転においても均一な架橋密形成を保つことに成功し、リアクターに溶液を通す速度(流速)を調整するだけで、ゲルに内包したタンパク質などの薬物放出速度を自在にコントロールできることを実現しました。また、このシステムを注射器に接続し、ハイドロゲルを連続的に製造しながら、そのまま体内(皮下)へ直接注入できることも実証しました。



図2. (a) リアクターの流速が薬物放出速度へ与える影響 (b) ハイドロゲルをチキンの皮下(食用)へ注入する様子

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、酵素の残留によるマクロファージの活性化などの免疫反応リスクを回避しつつ、均一な品質のハイドロゲルを連続製造することが可能になります。製造と同時に患部へ直接注入できるという医療現場での高い実用性も備えているため、生体への安全性が極めて高い局所DDSキャリアや、細胞培養用のインジェクタブルな(注射可能な)足場材料としての臨床応用が大きく加速することが期待されます。

特記事項

本研究成果は、2026年9月29日に科学誌「Advanced Materials Technologies」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Silk Fibroin Nanofiber-Immobilized Horseradish Peroxidase Enables Continuous Preparation of Injectable Hydrogels with Negligible Residual Enzyme for Drug Delivery”
著者名:Ayari Miyawaki and Shinji Sakai
DOI:https://doi.org/10.1002/admt.71371
なお、本研究は、農林水産省委託プロジェクト研究「昆虫(カイコ)テクノロジーを活用したグリーンバイオ産業の創出プロジェクト」の一環として行われました。また日本学術振興会(JSPS)特別研究員奨励費(25KJ1794)の助成を受けて行われました。

参考URL

境 慎司教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/f1c3678eb1a88b0c.html

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