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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年9月30日

\声を聞けば、顔が浮かぶ!?/イヌもヒトの大人と子どもの違いを分かっている?

声と顔を結びつけていることを発見

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
イヌがヒト社会をどのように認識しているかを理解する手がかりとなり、イヌと子どものより安全で良好な関係づくりにつながることが期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学医歯薬学
【Sagaキーワード】
クロスモーダル/視覚情報/認知科学/聴覚/ホルモン/日常生活/ストレス
2026-9-25●社会科学系人間科学研究科特任研究員(常勤)千々岩 眸

発表のポイント

イヌはヒトの「大人」と「子ども」の声を聞いた際、対応する顔を関連づけて認識していることを発見。
イヌはヒトの「子ども」を「大人」とは異なる存在として捉えていることがこれまでも示唆されてきたが、本研究ではさらに、声と顔の年齢が一致する画像を、一致しない画像よりも長い時間注視したことから、「大人」と「子ども」の聴覚情報と視覚情報を結びつけて認識していることが示された。
子どもと同居経験があるイヌにおいて、この傾向が顕著であったことから、イヌがヒトとの暮らしを通じて子ども特有の声や顔の特徴を学習している可能性が示唆された。
イヌがヒト社会をどのように認識しているかを理解する手がかりとなり、イヌと子どものより安全で良好な関係づくりにつながることが期待される。

発表概要

大阪大学大学院人間科学研究科の千々岩眸特任研究員(常勤)と鹿子木康弘教授は、イヌがヒトの「大人」と「子ども」の声と顔を関連付けて認識している可能性を発見しました。
これまでイヌは、ヒトの性別や感情を声と顔で一致させて認識できることは知られていましたが、「年齢」というカテゴリを、声と顔を結びつけて理解しているかは不明でした。今回の研究では、イヌに「大人の声」または「子どもの声」を聞かせた後、その音声の年齢と一致する、あるいは、一致しない顔写真をモニターに提示し、その注視時間を測定しました。
その結果、イヌは声と顔の年齢が一致している組み合わせをより長く注視する傾向が見られました。特に、子どもと同居経験があるイヌにおいて、この関連付けが特に顕著にみられる傾向がありました(図1 a,b)。
これは、イヌの、ヒトの特徴を区別する能力が、ヒトとの日常生活における学習や経験によって形作られることを示唆しています。本研究は、イヌがヒト社会をどのように認識しているかを理解する手がかりとなるだけでなく、イヌと子どもの安全で良好な関係づくりにもつながる可能性があります。
本研究成果は、英国科学誌「Animal Behaviour」に公開されました。



図1. (a)子どもとの同居経験があるイヌと (b)子どもとの同居経験がないイヌの平均注視時間(秒)
子どもとの同居経験があるイヌでは、音声と画像が一致している時に(水色の棒)、モニターを見る時間が長くなった。

研究の背景

私たちヒトは、話者の姿が見えなくても、声を聞くだけで、相手が誰であるかや、年齢といった特徴を推測できます。このような能力は、視覚と聴覚の情報を統合した「クロスモーダル表象」をもっていることを示唆しています。イヌにおいても、飼い主の声と顔を結びつけて認識していることや、ヒトの性別や感情の声と顔を対応づけて認識していることが報告されています。しかし、ヒトの「大人」と「子ども」という年齢カテゴリについて、声と顔を結びつけて認識しているかは明らかではありませんでした。
近年の研究では、イヌが乳児の泣き声に反応してストレス関連ホルモンが上昇することや、子どもと愛着関係を形成し、行動を同期させることなどが示されています。また、イヌと子どもの関係は概ね良好であることが知られています。その背景には、子どもの予測しにくい行動に対しても、イヌが比較的寛容に反応することが関係しているのかもしれません。このような行動は、イヌがヒトの「子ども」を、「大人」とは異なる存在として認識していることを示唆しています。しかし、イヌが視覚情報と聴覚情報を統合して、「子ども」や「大人」というカテゴリとして理解しているかは、これまで検討されていませんでした。

研究の内容

家庭犬69頭を対象に、スピーカーから流れる音声(未知の成人女性もしくは女児の声)の直後に、モニターに「声と一致する年齢の顔」または「不一致の年齢の顔」を提示する実験を行いました(図2,3)。
分析の結果、全体として一致する組み合わせを長く見る傾向が確認されました。さらに、子どもと同居経験のあるイヌではこの傾向がより強くみられました。一方で、そういった経験のないイヌでは明確な反応がみられませんでした。この結果は、イヌがヒトとの暮らしの中での経験を通じて子ども特有の声や顔の特徴を学習している可能性を示しています。





図2. 実験時の様子



図3. 実験手続きの説明
「子どもの声→子どもの顔」「子どもの声→大人の顔」
「大人の声→大人の顔」
「大人の声→子どもの顔」の
4条件を設定した。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究は、イヌが、声や顔といった異なる感覚情報を結びつけて、「相手が大人か子どもか」を認識している可能性を示しました。これは、イヌが子どもの予測不能な行動に対して寛容に振る舞う理由の解明や、イヌと子どもの安全な共生環境を整えるための重要な知見になると期待されます。

特記事項

本研究成果は、英国科学誌「Animal Behaviour」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Dogs might associate the voices and faces of human girls and adult women”
著者名:Hitomi Chijiiwa and Yasuhiro Kanakogi
DOI:https://doi.org/10.1016/j.anbehav.2026.123710
なお、本研究は、日本学術振興会からの科学研究費補助金を用いて行われました。

参考URL

千々岩眸 特任研究員(常勤) researchmap
https://researchmap.jp/chijimi
大阪大学大学院 人間科学研究科 発達認知科学ラボ HP
https://babylab.hus.osaka-u.ac.jp/