[Top page] [日刊 研究最前線 知尋] [Discovery Saga総合案内] [大学別アーカイブス] [Discovery Saga会員のご案内] [産学連携のご案内] [会社概要] [お問い合わせ]

岐阜大学 研究Discovery Saga
2026年8月24日

植物が開花時期を決める「季節メーター」の仕組みを解明

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
地球温暖化等により気候変動が進行する中、未知の気候パターンに対する野生植物や農作物の反応を予測・評価する上で大きく貢献すると期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
環境学数物系科学生物学工学農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
環境変動/地球温暖化/気候変動/アブラナ科/ライフサイクル/アブラナ科植物/温暖化/生態学/イミン/遺伝子

概要

植物は、環境の周期的な変化に備えるため、過去数週間から数ヶ月間の気温などの環境シグナルをもとに、季節を予測し、成長・開花・休眠などのタイミングを決定する「季節メーター (Season-Meter) 」と呼ばれる仕組みを備えています。しかし、この季節メーターがどれくらい過去までさかのぼって環境変動を記憶しているのか、また、異なる植物や遺伝子の間で同じように働いているのかは、これまで分かっていませんでした。
 本研究では、日本に自生する2種の野生の多年生アブラナ科植物であるワサビ(Eutrema japonicum)とハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri)を対象に、両種で保存される花成制御に関わる遺伝子の挙動と気候データの関係を2年間にわたって追跡し、これらの遺伝子を制御する季節メーターが過去の気温履歴をどれくらいさかのぼって記憶しているかを算出する手法を確立しました。これにより、同じ制御系にある3つの遺伝子が、それぞれ異なる温度記憶期間注)(数日間、数週間、約5カ月)に基づいて制御されることを明らかにしました。さらに、この手法を用いて、モデル学習には使用していない別の年の気温データから予測した3遺伝子の挙動は、実際に観測された遺伝子の挙動と一致することを確認しました。
 本研究結果は、気温データのみから遺伝子の挙動、さらにはそれに引き続く生理現象の予測が可能であることを示唆しています。今後、地球温暖化等により気候変動が進行する中、未知の気候パターンに対する野生植物や農作物の反応を予測・評価する上で大きく貢献すると期待されます。
 本研究成果は、現地時間2026年8月19日にPLOS ONE誌のオンライン版で発表されました。


植物の遺伝子が持つ季節メーター
3つの遺伝子が、それぞれ異なる時間スケールで過去の気温を記憶している。これらの記憶により、季節の推移を示す情報が絶えず更新され、植物の年間を通じたライフサイクルを制御する。

研究代表者

筑波大学生命環境系 Diana Mihaela Buzas 准教授
京都大学生態学研究センター 工藤 洋 教授
岐阜大学応用生物科学部 山根 京子 准教授

詳しい研究内容について

植物が開花時期を決める「季節メーター」の仕組みを解明

論文情報

雑誌名:PLOS ONE
論文名:Conserved gene- and network-level thermal memory intervals in two divergent perennial crucifers in nature
著 者:Yoshikazu Endo, Haruki Nishio, Oguchi Taichi, Kyoko Yamane, Victoria Faith Eseese, Clarissa Frances Frederica, Hiroshi Kudoh and Diana Mihaela Buzas
DOI:10.1371/journal.pone.0336733

用語解説

注) 温度記憶期間(TMI:Thermal Memory Interval)
植物が現在の遺伝子の働き(発現量)を決める際に、過去どれくらいの期間の気温履歴をさかのぼって集計(記憶)しているかを示す定量的な指標のこと。