京都大学 研究
Dis cov er y Sa ga
2026年8月20日
日本アルプスはなぜこれほど速く隆起したのか —マグマ活動が山脈形成を促進する新たな仕組みを解明— 【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
山脈形成における火山活動の重要性を示す新たな成果です。日本列島や世界の沈み込み帯における山脈形成の理解が大きく進むことが期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
この研究の主な対象者
企業・研究者の方
公開日
2026年08月19日
研究者情報 研究者名
Takahiro Tagami
ORCID 研究者名
河上 哲生
京都大学 教育研究活動データベース 研究者名
東野 文子
京都大学 教育研究活動データベース 発表のポイント 北アルプス(飛騨山脈)では、世界で一番若い花崗岩(地下深くでマグマが固まった岩石)が地表に露出していることから、非常に速い隆起・侵食が起きた可能性が指摘されていました。しかし、隆起・侵食の速度や発生の仕組みは十分に解明されていませんでした。
黒部地域に露出している花崗岩の形成時期と深度を詳細に調べた結果、過去約 80 万年間に世界最高水準の速さで隆起・侵食が起きていたことを明らかにしました。加えて、数値解析から、急速な隆起の背景要因として、火山活動で高温になっていた地殻に変形が集中した、という山脈形成の新たな仕組みを示しました。
本研究は、山脈形成における火山活動の重要性を示す新たな成果です。日本列島や世界の沈み込み帯における山脈形成の理解が大きく進むことが期待されます。
概要 本研究では、北アルプス(飛騨山脈)が世界でも極めて速い速度で隆起したメカニズムを岩石の形成深度解析などから明らかにしました。またシミュレーション解析から、その要因に火山活動に伴う地下の熱の存在を示し、急速な山脈形成における火山活動の重要な役割を解明しました。
山脈は、地殻が押し縮められたり断層が動いたりすること(断層運動)で形成されると考えられてきました。ヒマラヤ山脈やアルプス山脈は、このように形成されてきた山脈の代表例です。一方、北アルプスには、約80万年前にできた世界で一番若い花崗岩(地下深くで形成された岩石)が地表に広く露出していることから、過去に非常に速い隆起と侵食が起きた可能性が指摘されていました。しかし、北アルプスを隆起させるような断層はこれまで見つかっておらず、どのような仕組みでそのような隆起と侵食が起きたのか、あるいは本当にこの地域で非常に速い隆起と侵食が起こっていたのか、については十分に解明されていませんでした。
日本アルプスのうち、中央アルプスと南アルプスは明瞭な断層に囲まれており、断層運動で形成されていることがすでに明らかにされていました。しかし、北アルプスの周辺に山を隆起させるような断層があるかどうかは明らかにされておらず、どのようにして隆起したのかは様々な説が提案されていました。研究チームは北アルプス黒部地域の岩石について、世界で一番若い花崗岩(黒部川花崗岩)を含めて、形成深度や年代を詳しく調べました。その結果、年間約1センチにも達する世界最高水準の速さで隆起・侵食が過去約80万年間に起きていたことを明らかにしました。さらに、急速に隆起した背景には、火山活動によって高温になった地殻に対し、変形が集中しやすくなったことが関係している可能性を示しました。これにより、火山活動が山地の急速な成長を促す新たな仕組みを解明しました。
本研究は、山脈形成を理解する上で、断層運動だけでなく地下の熱やマグマ活動も重要であることを示しています。今後、日本列島の他地域や世界の沈み込み帯との比較研究を進めることで、火山活動と山脈形成の関係をより包括的に理解できると期待されます。また、現在進行中の地殻変動(山脈形成、地震活動など)の理解にもつながる可能性があります。今後の展開の一つとして、このような火山活動に伴う熱で形成された山脈における地殻変形のメカニズムと、それに伴って発生する地震活動を解明することを目指しています。
なお、本研究は国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:小口正範)東濃地科学センター ネオテクトニクス研究グループの末岡茂研究副主幹、年代測定技術開発グループの鏡味沙耶研究員、横山立憲研究副主幹、京都大学の田上高広名誉教授(元理学研究科教授)、理学研究科の河上哲夫教授、東野文子助教、日本大学文理学部地球科学科の長田充弘助手らによるものです。
本研究成果は、8月3日付(現地時間)の「Earth and Planetary Science Letters」にオンライン掲載されました。
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詳しい研究内容について
日本アルプスはなぜこれほど速く隆起したのか—マグマ活動が山脈形成を促進する新たな仕組みを解明—
書誌情報
【DOI】https://doi.org/10.1016/j.epsl.2026.120218 【書誌情報】 S. Sueoka, T. Kawakami, K. Suzuki, S. Kagami, T. Yokoyama, B. Shibazaki, M. Nagata, A. Yamazaki, F. Higashino, G.E. King, S. Tsukamoto, F. Herman, T. Tagami (2026). Extreme exhumation along a volcanic arc exposed the world's youngest pluton in the Japanese Alps.Earth and Planetary Science Letters , 692, 120218.
関連部局
理学部・理学研究科