慢性腎臓病患者の重いうつ症状は 死亡や末期腎不全のリスクを上昇させる
日本人CKD患者1694名を追跡研究
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 慢性腎臓病患者において、うつ症状が腎疾患の予後に影響を与える重要な因子であることが示され、医療の質の向上につながることに期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
2026-8-7●生命科学・医学系ウェルネス推進機構健康支援相談センター講師新澤 真紀発表のポイント
慢性腎臓病患者におけるうつの重症度が、死亡や末期腎不全の発症に関連することが明らかにこれまで慢性腎臓病患者においてうつの罹患率が高いことが知られていたが、末期腎不全の発症に関与するかは知られていなかった
慢性腎臓病患者において、うつ症状が腎疾患の予後に影響を与える重要な因子であることが示され、医療の質の向上につながることに期待
発表概要
大阪大学ウェルネス推進機構 健康支援相談センターの新澤真紀 講師、山本陵平 教授、同医学系研究科腎臓内科学の猪阪善隆 教授らの研究グループは、日本腎臓学会、協和キリン株式会社との共同研究である日本CKDコホート研究(CKD-JAC)のデータを用いて、うつ症状が重いほど末期腎不全の発症および死亡リスクが有意に増加することを明らかにしました。特にベック抑うつ質問票(BDI-II: Beck Depression Inventory-II)スコアが20以上の中等度以上の患者では、死亡リスクが約3倍以上に上昇しました。一方で末期腎不全については、有意差は認めなかったものの、重症度に応じた有意なリスクの上昇傾向が確認されました。慢性腎臓病は、末期腎不全や死亡のリスクが高いことが知られていますが、患者のうつ症状の重症度と腎予後との関係は十分に解明されていませんでした。
今回の研究で、慢性腎臓病患者においてうつなどの心理的評価が生命予後および腎予後に対して重要である可能性が示唆されます。
本研究成果は、2026年8月4日(火)(日本時間)に日本腎臓学会英文誌「Clinical and Experimental Nephrology」(オンライン)に掲載されました。

図. 慢性腎臓病患者における末期腎不全の発症(a)および死亡(b)の累積発症率(カプランマイヤー曲線)。正常(BDI-II スコア 0-13[青])、軽度 (14-19 [緑])、中等度(20-28 [オレンジ])、重症(≥29 [赤])
研究の背景
慢性腎臓病は世界人口の約10%が罹患する重要な疾患であり、末期腎不全や死亡のリスクが高いことが知られています。また、うつ症状は慢性腎臓病患者の約20%に認められますが、その重症度と腎予後との関係は十分に解明されていませんでした。研究の内容
研究グループでは、日本腎臓学会、協和キリン株式会社との共同研究である日本CKDコホート研究(CKD-JAC)の1694名のデータを用いた後ろ向きコホート研究で、うつ症状の重症度と死亡および末期腎不全の発症との関係を検討しました。対象者の年齢の中央値は61歳、腎臓の濾過機能を示す推算糸球体濾過量(eGFR)の平均は 29.0 ± 12.2 mL/min/1.73 m2、ベック抑うつ質問票BDI-IIスコアの中央値は8点でした。
関係の検討の結果、うつ病の重症度が高くなるにつれて、末期腎不全の発症および死亡が有意に上昇する傾向を示しました。特に中等度および重度のグループ(BDI-IIスコアが20以上)では死亡リスクが有意に高くなりました(ハザード比 中等度群 3.11 (95%信頼区間 1.61–6.03)、重症群 3.51 (1.40–8.80))。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究は、うつ症状が慢性腎臓病の予後に影響を与える重要な因子であることを示しました。今後は精神状態の評価を含めた診療が求められ、医療の質向上につながることが期待されます。特記事項
本研究成果は、2026年8月4日(火)(日本時間)に日本腎臓学会英文誌「Clinical and Experimental Nephrology」(オンライン)に掲載されました。【タイトル】“Dose-dependent association of depression with incidence of end-stage kidney disease and all-cause mortality, CKD-JAC study: a retrospective cohort study”
【著者名】新澤真紀1, 2)、室谷健太3, 4)、今泉貴広5)、山本陵平1, 2)、猪阪善隆2)、和田隆志6)、丸山彰一7)
1. 大阪大学ウェルネス推進機構健康支援相談センター
2. 大阪大学大学院医学系研究科腎臓内科学
3. 久留米大学医学部医療検査学科
4. 久留米大学バイオ統計センター
5. 名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻総合管理医学
6. 金沢大学大学院腎臓・リウマチ膠原病内科学
7. 名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座腎臓内科学
DOI:https://doi.org/10.1007/s10157-026-02908-8
参考URL
新澤真紀 研究者総覧https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/cb406d5fede8309e.html
山本陵平 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/5483155cff49bf0a.html
猪阪善隆 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/e6f37e55995dcccf.html
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