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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年8月18日

従来法で診断が困難な 術後骨盤内感染症の起炎菌をmNGSで推定

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
>診断が難しい術後感染症における原因病原体の把握や、抗菌薬の選択、治療方針の検討への応用に期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
総合生物農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
インフォマティクス/rRNA/16S rRNA/細胞壁/病原性/微生物/シークエンス/病原体/メタゲノム解析/ゲノム解析/メタゲノム/PCR/バイオテクノロジー/抗菌薬/ゲノム/遺伝子/感染症
2026-8-7●生命科学・医学系医学系研究科教授忽那 賢志

発表のポイント

術後骨盤内感染症において、従来の検査法では特定が困難であったMetamycoplasma hominis(M. hominis)が、メタゲノム次世代シーケンシング(mNGS)により最も可能性の高い起炎菌であることを明らかに
これまでM. hominisなどの病原体は、グラム染色や通常の培養検査では検出が難しく、混合感染では16S rRNA解析による特定も困難で、従来のmNGSで検出された微生物も、リード数のみでは病原性を判断できないという課題があった
診断が難しい術後感染症における原因病原体の把握や、抗菌薬の選択、治療方針の検討への応用に期待

発表概要

大阪大学大学院医学系研究科 忽那賢志教授(感染制御学)らは、亞洲準譯(Asia Pathogenomics, APG)およびAPGアジア準訳ジャパン(Asia Pathogenomics Japan)との共同研究により、メタゲノム次世代シーケンシング(mNGS)を実施することで、術後の産婦人科領域における骨盤内感染症において、M. hominisが、最も可能性の高い起炎菌であることを明らかにしました。
これまで、術後の骨盤内感染症では、原因となる病原体の特定に培養検査や16S rRNA遺伝子PCRおよびそれに続くサンガー法によるシークエンシングなどが用いられてきました。しかし、検出が難しい病原体や複数の微生物DNAが混在する検体では、従来法だけでは原因病原体の特定が困難となる場合がありました。
今回、研究グループは、M. hominisが関与した術後骨盤内感染症の2症例を解析し、従来法で原因病原体を特定できなかった症例に対してmNGSを用いることで、臨床的に重要な病原体の推定につながる可能性を示しました。これにより、術後感染症における原因病原体の把握や、より適切な診断・治療方針の検討に貢献することが期待されます。
本研究成果は、国際学術誌「Frontiers in Cellular and Infection Microbiology」に、2026年4月29日(水)に公開されました。

研究の背景

これまで、術後の産婦人科領域における骨盤内感染症では、原因となる病原体の特定にグラム染色、培養検査、16S rRNA解析などが用いられてきました。しかし、M. hominisのように細胞壁を持たない病原体はグラム染色で識別しにくく、また増殖が遅く厳格な培養条件を必要とするため、通常の培養検査では検出が困難となる場合がありました。さらに、混合感染が疑われる症例では、16S rRNA PCRで増幅が確認されても、サンガーシークエンスの信号が重なり、原因病原体の特定に至らないことがありました。

研究の内容

研究グループは、標準的な培養法および16S rRNA解析で起炎菌が特定できなかった術後骨盤内感染症の2症例を対象に、ショットガンメタゲノム解析(mNGS/Shotgun mNGS)を実施しました。その結果、両症例においてM. hominisが最も可能性の高い起炎菌であることを明らかにしました。
また、本研究では、mNGSの結果を単純なリード数のみで判断するのではなく、抗菌薬治療の開始状況、発熱経過などの臨床情報とあわせて総合的に解釈することの重要性も示されました。特に、検出リード数が少ない場合であっても、非ランダムな分布パターンや臨床経過と照らし合わせることで、診断上重要な情報となる可能性が示されました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、従来の検査法では原因病原体の特定が困難であった術後骨盤内感染症に対して、mNGSが補助的な診断手法として有用である可能性が示されました。これにより、診断が難しい感染症における原因病原体の把握が進み、抗菌薬の選択や治療方針の検討に役立つことが期待されます。また、mNGSの結果をリード数だけで判断するのではなく、臨床経過や検体背景とあわせて解釈することで、適切な診断により、不必要な治療や外科的介入を避けられる可能性があります。

特記事項

本研究成果は、2026年4月29日(水)に国際学術誌「Frontiers in Cellular and Infection Microbiology」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Diagnostic challenges in postoperative pelvic infections associated withMetamycoplasma hominis: a two-case analysis using metagenomic sequencing”
著者名:Yusuke Takahashi, Ryuichi Minoda Sada, Hiroo Matsuo, Shungo Yamamoto, Shinya Matsuzaki, Aiko Okada, Atsuko Sunada, Miyuki Takao, Go Yamamoto, Ching-Kai Chuang, Chun-Hao Liu, Satoshi Kutsuna
DOI:https://doi.org/10.3389/fcimb.2026.1823299
亞洲準譯は、感染症病原体の遺伝子検査サービスを提供する台湾発のバイオテクノロジー企業です。次世代シーケンシング(NGS)技術およびバイオインフォマティクスを活用し、感染症の精密診断に関する研究開発および検査サービスの提供を行っています。
APGアジア準訳ジャパンは、日本における事業展開を担う法人として、将来の臨床実装を目指して国内の医療機関や研究機関との共同研究・連携を進めています。
URL:
亞洲準譯:https://www.asiapathogenomics.com/tw
APGアジア準訳ジャパン:https://www.asiapathogenomics.co.jp/

参考URL

忽那賢志 教授 研究者総
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/5cbb2ec6074dffb6.html