磁気スキルミオンが押し合い跳ね返る瞬間をナノ秒で観測
―超高速・高密度スピントロニクスデバイス実現へ新指針―
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 磁気スキルミオンと呼ばれるナノメートルスケールの磁気渦は、高い安定性と電気的制御性を有することから、超高速・高密度スピントロニクスデバイスへの応用が期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
低消費電力化/電気通信/トポロジー/パルス/ポンプ・プローブ法/時間分解/磁気構造/集団運動/電流駆動/反強磁性/スキルミオン/時間分解能/磁性体/強磁性/持続可能/持続可能な開発/X線顕微鏡/コバルト/スピン/スピントロニクス/ナノメートル/多層膜/低消費電力/分解能/スキル/プローブ
2026年8月18日 11:00
研究者情報
〇電気通信研究所 助教 土肥昴尭研究室ウェブサイト
発表のポイント
磁気スキルミオン(注1)と呼ばれるナノメートルスケールの磁気渦は、高い安定性と電気的制御性を有することから、超高速・高密度スピントロニクスデバイスへの応用が期待されています。時間分解X線顕微鏡(注2)を用い、電流で動く多数のスキルミオンが互いに押し合い、電流を切った直後に跳ね返る様子を、ナノ秒スケールの実時間軌道として世界で初めて直接捉えました。
この反跳軌道からスキルミオン間の反発相互作用を定量化し、さらに高電流領域では、慣性遅れや横方向の曲がりを伴わず、スキルミオン格子全体が一体的に直進することを実証しました。超高速・高密度スピントロニクスデバイスの実現に向けた重要な知見となる成果です。
発表概要
近年、情報処理技術のさらなる高速化と低消費電力化に向けてスピントロニクス技術が注目されています。その一つである磁気渦「磁気スキルミオン」は有力な次世代デバイスへの応用が期待され、研究が盛んに行われていますが、ナノ秒スケールで起こる過渡的な運動を直接捉えることは困難でした。東北大学とドイツ・マインツ大学ヨハネスグーテンベルグ校からなる国際共同研究チームは、人工反強磁性多層膜中のスキルミオン格子を用い、電流駆動下での集団運動を時間分解X線顕微鏡で直接観測しました。研究では極限的な空間・時間分解能で軌道を追跡したところ、低電流領域ではスキルミオン同士の「反跳運動」を捉え、反発相互作用ポテンシャルを直接・定量的に抽出しました。また高電流領域では、格子全体が直進し慣性遅れがないことを実証しました。本成果は、多数のスキルミオンを高密度に集積したデバイスにおける相互作用や応答時間の制御に関する設計指針となるもので、今後は超高速・高密度・低消費電力なスピントロニクスデバイスの実現に向けた研究開発が大きく進展することが期待されます。
本研究成果は、2026年8月10日(英国時間)に出版された科学誌 Nature Physicsに掲載されました。

図1.人工反強磁性多層膜に形成された反強磁性スキルミオン格子と電流誘起運動
本研究で用いた人工反強磁性多層膜と、時間分解X線顕微鏡による測定の模式図。鉄を多く含む磁性層とコバルトを多く含む磁性層が、非磁性層を介して反強磁性的に結合している。X線のエネルギーを変えることで二つの磁性層を個別に観察でき、反対向きに結合したスキルミオン格子が形成されていることを確認した。右上には電流駆動の方法を示している。
用語解説
注1. 磁気スキルミオン磁性体中に形成されるナノメートルスケールの渦状の磁気構造。中心部と外側で磁化の向きが反対になっており、その間で磁化の向きが連続的に回転している。磁気構造のトポロジーに由来する高い安定性を持ち、電流によって移動・制御できることから、次世代の高密度・低消費電力スピントロニクスデバイスへの応用が期待されている。
注2. 時間分解X線顕微鏡
X線を用いて磁性体内部の磁気構造を観察する顕微鏡手法。特定元素の吸収端にX線エネルギーを合わせることで、元素ごとの磁化情報を取得できる。本研究では、ポンプ・プローブ法により電流パルスに対する応答を1 ns刻みで再構成し、スキルミオンの運動を時間分解して観察した。
論文情報
タイトル:"Time-resolved imaging of antiferromagnetic skyrmion interactions"(反強磁性スキルミオン相互作用の時間分解イメージング)著者: Mona Bhukta*, Takaaki Dohi*,**, Kilian Leutner*, Maria-Andromachi Syskaki, Fabian Kammerbauer, Duc Minh Tran, Sebastian Wintz, Markus Weigand, Simone Finizio, Jörg Raabe, Hendrik Ohldag, Thibaud Denneulin, Joseph Vimal Vas, Rafal E. Dunin-Borkowski, Robert Frömter**, and Mathias Kläui**
*:共同筆頭著者
**:責任著者
東北大学電気通信研究所 助教 土肥 昂尭
掲載誌:Nature Physics
DOI:10.1038/s41567-026-03383-4
詳細(プレスリリース本文)
問い合わせ先
(研究に関すること)東北大学電気通信研究所
助教 土肥 昂尭
TEL: 022-217-5555
Email: tdohi*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学電気通信研究所 広報室
TEL: 022-217-5427
Email: riec-kohoshitsu*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)


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