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大阪公立大学 研究Discovery Saga
2026年8月7日

世界初!地震時の断層内で発生した乱流の痕跡を発見

~巨大津波を引き起こす断層滑りのメカニズム解明に貢献~

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
プレート沈み込み境界での巨大地震時の断層の滑りやすさの評価や引き起こされる津波の規模推定へ貢献することが期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
複合領域数物系科学工学農学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
活断層/幾何学/プレート境界/巨大地震/沈み込み/南海トラフ/持続可能/せん断/持続可能な開発/東北地方太平洋沖地震/大地震/地震動/津波/電子顕微鏡/東日本大震災/南海トラフ地震/摩擦力/乱流構造/流体力/流体力学/東北地方

2026年8月6日
理学研究科
プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院理学研究科地球学専攻 廣野 哲朗教授、理学部地球学科 福田 成氏(研究当時:学士課程4年)

発表概要

本研究グループは、房総半島に分布する断層を詳細に解析し、地震時に断層内部で物質が乱流※1のように激しく流動した痕跡(渦状の構造)を世界で初めて発見しました。さらに、流体力学的な解析により、地震時にはサーマルプレッシャライゼーション※2によって断層粘土が流動化し、その粘性が水と同程度まで低下していた可能性を示しました。この超低粘性化によって断層が急激に弱化し、大きな断層滑りを促進する可能性が示されました。
これらの結果は、プレート沈み込み境界での巨大地震時の断層の滑りやすさの評価や引き起こされる津波の規模推定へ貢献することが期待されます。
本研究成果は、2026年6月27日に国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。



図1:(上)房総半島の岩相図
(下)地震時の断層内で発生した「乱流」の痕跡

発表のポイント

    約1500万年前の地層に発達する断層から、地震時に断層物質が乱流のように流動した痕跡を世界で初めて発見した。
    流体力学的な解析により、地震時の断層物質の粘性は、常温常圧の水と同程度の極めて低い値であったと推定された。
    地震時のサーマルプレッシャライゼーションによって断層物質が著しく流動化し、断層の急激な弱化や大規模な断層滑りを引き起こす可能性が示された。

<研究者コメント>


東日本大震災などの巨大な海溝型地震のとき、海溝付近のプレート境界断層が大規模に滑り、巨大津波を引き起こすと考えられてきました。しかし、なぜ断層が大規模に滑ってしまうのか、滑ったときに断層で何が起きているのか、この研究でその実体を明らかにすることができました。



廣野 哲朗教授

研究の背景

2011年東北地方太平洋沖地震では、海溝付近のプレート境界で断層が滑りやすい状態になり、巨大滑りが引き起こされ、巨大津波が発生したと考えられてきました。このように断層が滑りやすい状態になることは「断層の滑り弱化」と呼ばれ、マグニチュードの大きさに加え、地震動や津波の規模に強く影響すると考えられています。断層の滑り弱化の主なメカニズムとして「サーマルプレッシャライゼーション」が提案されており、その証拠は断層を構成する元素の種類や濃度の違いから推定されていましたが、実際の断層で観察することができる痕跡は、これまで発見されていませんでした。

研究の内容

本研究では、約1500万年前の地層(房総半島鴨川市に分布する保田層群)に発達する断層から試料を採取し、偏光顕微鏡と電子顕微鏡による詳細な観察を実施しました。その結果、断層内部では「乱流」が生じていたことを示す痕跡(渦状の構造)を世界で初めて発見しました。この乱流の構造は、地震時にこの断層でサーマルプレッシャライゼーションが生じ、断層粘土が流動化した痕跡と推定されます。
さらに、乱流構造の幾何学的特徴から、クエットポアズイユ流れ※3と層流※4から乱流に移行する臨界レイノルズ数※5を仮定した流体力学的な解析を行いました。その結果、地震時の断層の粘度は1.2 × 10-4〜2.3 × 10-3 Pa sと見積もることができ、常温常圧の水と同程度の極めて低い値であったことが推定されました。
なお、断層内の乱流構造自体は、摩擦発熱による溶融・流動化を伴うシュードタキライト※6では報告例がありますが、サーマルプレッシャライゼーションを引き起こした断層での発見は世界初となります。



図2:断層内に保存された乱流様構造とその流体力学的解析

期待される効果・今後の展開

本研究により、地震時のサーマルプレッシャライゼーションによって断層物質が著しく流動化し、断層が非常に滑りやすい状態になることが示されました。このような地震時の断層での低い粘度は、断層の著しい滑り弱化を促進し、巨大津波を引き起こす可能性があります。そのため、将来の発生が危惧される南海トラフ地震の断層の評価や、世界各国の海溝型地震でのプレート境界断層ならびに陸上活断層でも本研究での研究方法を適用することで、それらの断層滑りの規模の評価ならびに津波防災への貢献が期待されます。

資金情報

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業 基盤研究(C)(課題番号:JP25K07460)の支援を受けて実施しました。

用語解説

※1 乱流:流体の各部分が入り乱れて不規則に運動し、流れる方向(流線)が細かい不規則な変動を示す流れのこと。
※2 サーマルプレッシャライゼーション:摩擦発熱により断層内の流体の圧力が増加し摩擦力(剪断抵抗)が低下する効果。
※3 クエットポアズイユ流れ:平行平板間のせん断によるクエット流れと、圧力差で駆動されるポアズイユ流れが同時に存在する流れの様式。
※4 層流:流体が層を成して乱れずに滑らかに流れる状態を指し、流線がほぼ平行で混ざり合いが小さい流れのこと。
※5 レイノルズ数:「慣性力÷粘性力」を表す無次元数で、値が小さいと層流、大きいと乱流になりやすい。

※6 シュードタキライト:断層によって発生した摩擦熱で岩石の一部が溶融し、その後、 冷えて固まった岩石。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Scientific Reports
【論文名】 Coseismic turbulence-like flow of fault material along the shallow portion of a plate-subduction-related fault
【著者】 Tatsuru Fukuta & Tetsuro Hirono
【掲載URL】https://doi.org/10.1038/s41598-026-57630-y

問い合わせ先

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院理学研究科
教授 廣野 哲朗(ひろの てつろう)
TEL:06-6605-2591
E-mail:hirono[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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