[Top page] [日刊 研究最前線 知尋] [Discovery Saga総合案内] [大学別アーカイブス] [Discovery Saga会員のご案内] [産学連携のご案内] [会社概要] [お問い合わせ]

東北大学 研究Discovery Saga
2026年7月16日

鳥類の免疫学の常識を覆す発見

―教科書にないB細胞の分化経路を解明―

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
工学農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
持続可能/持続可能な開発/哺乳類/消化管/微生物/ニワトリ/抗原特異性/リンパ球/粘膜免疫/B細胞/T細胞/抗原/受容体/免疫応答/免疫学/疫学/加齢/抗体/細菌/細菌叢/腸内細菌/腸内細菌叢
2026年7月16日 11:00

研究者情報

〇大学院農学研究科 特任助教 平川良太
大学院農学研究科 教授 野地智法
研究室ウェブサイト

発表のポイント

鳥類固有の免疫臓器であるファブリキウス嚢(注1)は免疫に関わるB細胞(注2)が特異的に分化する場として長らく知られていましたが、ファブリキウス嚢を経由しないB細胞が存在することを発見しました。
ファブリキウス嚢で分化するB細胞と協調的に、ファブリキウス嚢を経由しないB細胞が機能する場として盲腸扁桃(注3)を特定しました。
ファブリキウス嚢で分化するB細胞と、ファブリキウス嚢を経由しないB細胞が作り出す抗体(IgA)(注4)はともに、腸内細菌叢を適切に保つだけでなく、体内(主として肝臓)への細菌流入を阻止することで、肝臓での機能維持に貢献していることを実証しました。

発表概要

B細胞は、鳥類固有の免疫臓器であるファブリキウス嚢において初めて発見されました。従来の鳥類における免疫学では、すべてのB細胞はファブリキウス嚢で分化すると理解されていました。
東北大学大学院農学研究科の平川良太特任助教と野地智法教授らの研究グループは、同研究科内に動物粘膜免疫学共同研究講座を設置する共立製薬株式会社、および株式会社GENODASとの共同研究を通じて、ニワトリの腸管には、ファブリキウス嚢とは無関係にB細胞が分化する経路も発達していることを世界に先駆けて明らかにしました。さらに、このファブリキウス嚢を経由しないB細胞が、ファブリキウス嚢で分化するB細胞と協調的に、かつ成長後はさらに豊富に腸内に抗体(IgA)を産生することで、腸内細菌叢を適切に保つことを実証しました。また、その結果、腸管から全身組織(特に肝臓)への微生物流入が阻止され、肝臓の機能が健全に保たれていることを実証しました。
本研究成果は、日本時間2026年7月16日(米国東部時間7月15日)に米国科学アカデミー紀要PNAS (Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America) に掲載されました。



図1. ニワトリの盲腸扁桃に存在するファブリキウス嚢を経由しないB細胞と、従来から知られていたファブリキウス嚢を経由するB細胞

用語解説

注1. ファブリキウス嚢
鳥類に特有の免疫臓器で、消化管の末端付近に位置する。従来、鳥類ではB細胞がファブリキウス嚢で成熟すると考えられてきた。ファブリキウス嚢は若齢期に発達し、加齢に伴って萎縮することが知られている。
注2. B細胞
リンパ球の一種。一つの成熟B細胞は、抗原(異物)を特異的に認識する1種類の受容体(B細胞受容体)のみを発現している。B細胞から分化した形質細胞が分泌する抗体が有する抗原特異性は、分化前のB細胞が発現するB細胞受容体の抗原特異性と同じである。
注3. 盲腸扁桃
腸管の一部である盲腸基部に発達する免疫臓器。鳥類の腸管に発達する重要な免疫組織の一つであり、B細胞やT細胞などのリンパ球が多数集積する。腸内微生物に対する免疫応答に関与する。
注4. IgA
鳥類や哺乳類の粘膜組織(例:腸管、呼吸器)で分泌される主要な抗体アイソタイプ。多くは、微生物が発現する特定の抗原に認識することができ、結合した微生物を排除することに加え、定着を促すことも知られている。

論文情報

タイトル:Bursa of Fabricius-independent B cells establish an IgA-mediated intestinal barrier that safeguards gut-liver homeostasis
著者: Ryota Hirakawa, Motoshi Hisamatsu, Sayoko Maekawa, Eiki Asai, Miyuko Ohta, Ayumi Matsuo, Kunihiro Okano, Toh Miyazaki, Motofusa Akiyama, Masaaki Toyomizu, Jahidul Islam, Mutsumi Furukawa, Tomonori Nochi*
東北大学:平川良太、久松基史、前川紗佳子、浅井映輝、太田実友子、豊水正昭、Jahidul Islam、古川睦実、野地智法*
共立製薬株式会社:宮崎杜夫、秋山元英
株式会社GENODAS:松尾歩、岡野邦宏
*責任著者:東北大学大学院農学研究科 教授 野地智法
掲載誌:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)
DOI:10.1073/pnas.2605569123

詳細(プレスリリース本文)

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院農学研究科
教授 野地智法
TEL:022-757-4312
Email: nochi*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院農学研究科広報室
Email: agr-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)






東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています