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京都大学 研究Discovery Saga
2026年7月10日

乳がんの悪性度を決める代謝バランス

―細胞内BCAA濃度によるがん幹細胞の制御―

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
工学農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
センサー/バイオセンサー/生合成/悪性度/不均一性/アミノ酸/がん幹細胞/がん細胞/がん治療/幹細胞/腫瘍形成/乳がん
この研究の主な対象者
企業・研究者の方
公開日

研究者情報

研究者名
松浦 顕教

京都大学 教育研究活動データベース 

研究者名
服部 鮎奈

京都大学 教育研究活動データベース 

研究者名
Takahiro Ito
ORCID 

概要

がん組織の中には、自分自身を複製して腫瘍を新たに作り出す「がん幹細胞」が一部存在し、がんの再発や転移の原因になると考えられています。京都大学医生物学研究所 松浦顕教 助教、服部鮎奈 准教授、伊藤貴浩 教授らの研究グループは、有効な治療薬の少ないトリプルネガティブ乳がん(TNBC)において、分岐鎖アミノ酸(BCAA)という栄養素の代謝が、がん幹細胞の性質を左右していることを明らかにしました。
 研究グループは、生きた細胞1個ごとにBCAA濃度を測れるバイオセンサー「OLIVe」を用い、がん組織の中で細胞ごとにBCAA濃度が大きく異なること、そしてBCAA濃度の高い細胞にがん幹細胞が多く含まれることを発見しました。さらに、BCAAを作る酵素BCAT1の働きが強まる一方、BCAAを分解する働きが弱まることで高いBCAA濃度が保たれ、これが悪性度を高めていることを突き止めました。
 本成果は、細胞内のBCAA代謝を標的とする新しい乳がん治療の可能性を示すものです。本研究成果は、2026年7月8日に米国の国際学術誌「Cell Reports」にオンライン掲載されました。
画像

claudin-low型のトリプルネガティブ乳がん細胞はBCAA代謝に高い依存性を示し、腫瘍組織の内部では細胞ごとに異なるBCAA濃度を示す不均一性がみられました。BCAAバイオセンサーのOLIVeによってBCAA濃度の高い細胞と低い細胞を分離することで、BCAA濃度が高い細胞は高い腫瘍形成性を有することを示しました。BCAA濃度が高い細胞では、BCKAからBCAAの生合成が亢進しており、その代謝変化にBCAT1の発現上昇と、下流のBCKDH複合体の抑制が関与することが分かりました。(作成者:松浦 顕教)

詳しい研究内容について

乳がんの悪性度を決める代謝バランス―細胞内BCAA濃度によるがん幹細胞の制御―

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2026.117630

【書誌情報】
Kenkyo Matsuura, Ririko Shinonaga, Mizuki Yamamoto, Yoshiki Yamamoto, Hsin Chen, Ayaka Maeno, Kayo Okuda, Haruki Inoue, Sota Imotani, John Glushka, Koji Miki, Yukako Watanabe, Mamoru Takada, Hironori Kaji, Jun-ichiro Inoue, Ayuna Hattori, Hiromi Imamura, Takahiro Ito (2026). Distinct metabolic dependency on BCAA defines cancer stemness and malignancy in human triple-negative breast cancer.Cell Reports, 45, 7, 117630.

関連部局

医生物学研究所