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金沢大学 研究Discovery Saga
2026年7月3日

胎児期の細胞分化異常が自閉症様行動を引き起こすことを解明

―自閉症の発症メカニズム解明と新たな治療戦略の開発に期待― 新学術創成研究機構/医薬保健研究域医学系、教授 西山 正章 NISHIYAMA, Masaaki

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
脳発達期における自閉症発症メカニズムの解明や治療法開発へとつながることが期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
総合生物医歯薬学
【Sagaキーワード】
脳発達/抑制性ニューロン/臨界期/ニューロン/マウスモデル/神経前駆細胞/胎児/モデルマウス/前駆細胞/マウス/細胞分化/自閉症/神経回路/遺伝子/疫学/疫学研究/自閉スペクトラム症/発達障害
Research NEWS 2026/7/2

概要

金沢大学新学術創成研究機構/医薬保健研究域医学系の西山 正章 教授、仁田原 憲太 博士研究員(研究当時、現・九州大学 博士研究員)、川村 敦生 助教(研究当時、現・カリフォルニア大学バークレー校 博士研究員)らの研究グループは、自閉スペクトラム症(以下、自閉症)の原因遺伝子である CHD8(※1)の変異が胎児期の腹側前駆細胞の分化異常を引き起こし、それが成体における自閉症様行動の原因となることをマウスモデルで初めて示しました。
 自閉症を含む発達障害は社会生活においてさまざまな困難を伴うため、当事者や家族のみならず、その患者数の増加とともに社会全体にとっても重要な課題となっています。CHD8 遺伝子は、自閉症の原因遺伝子の中でも特に変異頻度が高いことが近年の疫学研究で明らかとなっており、注目を集めています。一方で、CHD8遺伝子の変異によって、「いつ」「どこで」「どのような細胞」が原因となり自閉症の症状を引き起こすのか、これまで十分に解明されていませんでした。
 本研究グループは、CHD8 遺伝子の変異を特定の時期や細胞に限定して誘導できるモデルマウスを用いて、どのような条件で自閉症様行動が起こるかを観察しました。その結果、マウスの胎生中期にCHD8遺伝子の変異が起きている場合、社会的行動の変化や不安様行動といった自閉症様行動が生じることを見いだしました。さらに詳細な解析により、CHD8遺伝子の変異によって胎生中期の脳の腹側神経前駆細胞(※2)が通常より早く分化することが明らかになりました。この腹側前駆細胞は、抑制性ニューロン(※3)やオリゴデンドロサイト(※4)の起源となる細胞であり、その分化異常は成体脳における神経回路ネットワークの異常につながることが分かりました。
 さらに詳しい解析から、CHD8 の発現低下を胎生中期に回復させることで、マウスの自閉症様行動が改善することを明らかにしました。本研究成果は、自閉症発症に関わる臨界期および責任細胞種を明らかにし、また発達段階における治療介入の可能性が示唆されました。本研究により、脳発達期における自閉症発症メカニズムの解明や治療法開発へとつながることが期待されます。
 本研究成果は、2026 年 5 月 27 日午後 6 時(日本時間)に英国科学雑誌『Nature Communications』のオンライン版に掲載されました。

研究詳細

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