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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年6月26日

発電と栽培を両立する有機太陽電池

農業用ハウスで有効性を実証!

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
農作物生産と発電を両立する、持続可能な次世代ハウス栽培技術として期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学環境学数物系科学化学生物学総合理工工学農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
最適化/光エネルギー/再生可能エネルギー/気候変動/太陽/ナノマテリアル/有機太陽電池/有機半導体/光合成/青色光/太陽光/半導体材料/持続可能/持続可能な開発/太陽電池/電池/半導体/トルコギキョウ/トマト/環境制御/食料安全保障/農地/フラーレン/ストレス
2026-6-25●工学系産業科学研究所教授家 裕隆

発表のポイント

太陽光の選択利用で発電・栽培を両立する「緑色光波長選択型有機太陽電池(OSC)」を高性能化
低コスト材料とロール・ツー・ロール製造により、メートルサイズのOSCパネルを実現
農業用ハウスでの栽培試験により、複数作物で、通常のハウス条件と同等の良好な生育を確認
農作物生産と発電を両立する、持続可能な次世代ハウス栽培技術として期待

発表概要

大阪大学産業科学研究所の家裕隆教授らの研究グループは、公立諏訪東京理科大学、大阪公立大学、岡山県立真庭高等学校らと共同で、農作物の生育に必要な青色光と赤色光を透過し、光合成への寄与が少ない緑色光を発電に用いる「緑色光波長選択型有機太陽電池(OSC)」の開発において、低コストな有機半導体材料での高性能化に成功し、メートルスケールのモジュール(太陽光パネル)を作製しました(図1)。
さらに、このモジュールを農業用ハウスに設置し、複数の農作物を対象とした生育評価を行った結果、通常のハウス条件と同等の良好な生育を確認しました。OSCは軽量かつ柔軟であるため、農業用ハウスなどへ搭載できれば、同一農地での発電と農作物栽培の両立が可能になります。
本研究成果は、6月9日(現地時間)にElsevier誌 『Chemical Engineering Journal』 (オンライン)に、公開されました。



図1. 緑色光波長選択型OSCモジュールと農作物評価

研究の背景

食料安全保障や気候変動への対応が求められるなか、農作物を安定して生産できる農業用ハウスの重要性が高まっています。一方で、夏季の高温化による作物へのストレスや、温度管理に必要な燃料コストの増加が大きな課題となっています。農業用ハウスの多くは、環境制御に必要なエネルギーを化石燃料に依存しており、再生可能エネルギーの導入が求められています。しかし、作物の生育に必要な光を妨げずに発電する技術は十分に確立されていません。さらに、農業用ハウスは設置面積が大きいため、太陽電池の導入には大面積化が必要となり、農家や農業企業の太陽電池導入のための初期投資に大きく影響します。そのため、発電性能だけでなく、低コストで製造・導入できることが普及に向けた重要な条件となります。そこで、農作物栽培と発電を両立し、低コストで大面積展開可能な太陽電池技術が期待されています。

研究の内容

OSCは軽量性、柔軟性の特徴を有することから農業用ハウスへの搭載が比較的容易な太陽電池です。植物の光合成には主に青色光と赤色光が重要である一方、緑色光は光合成への寄与が比較的小さいとされています。そこで研究グループは、農業用ハウスでの発電と農作物栽培の両立を目指し、緑色光を選択的に吸収して発電するOSCを開発しています(2024年8月28日プレスリリース)。これまで、このような緑色光波長選択型OSCを実際の農業用ハウスで評価するためには、大面積モジュールの作製が課題となっていました。そこで研究グループでは、合成しやすく、低コスト化が期待できる新しい非フラーレン型アクセプター材料(電子を受け取る役割を担う材料)であるFNTz-F-CNを開発しました。この材料を、安価で広く用いられるドナー材料(光を吸収して電子を放出する材料)のP3HTと組み合わせることで、低コストで緑色光を選択的に発電へ利用できる高性能なOSCを実現しました。さらに、インク塗布条件を最適化することで、ロール・ツー・ロール法によるメートルスケールのOSCモジュール作製にも成功しました。作製したOSCモジュールを農業用ハウスに設置し、トマト、ヒマワリ、トルコギキョウ、ホウレンソウなどを対象とした栽培試験を行いました。その結果、OSCモジュール下でも通常のハウス条件と同等の良好な生育・収量が得られ、農作物栽培との適合性が確認されました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果によって、①同一農地における発電と農業の完全両立 ②太陽光エネルギーを活用した地産地消型発電技術の実現が視野に入ります。高性能化した緑色光波長選択型OSCは、国土へ悪影響を与えることなく、エネルギーと食料、両方の持続可能な生産拠点を実現する革新的なエネルギー源であり、我が国の社会課題である「GHG削減と食料供給の安定確保」の解決に貢献します。

特記事項

本研究成果は、2026年6月9日(現地時間)にElsevier誌 『Chemical Engineering Journal』 (オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Scalable green-light wavelength-selective organic solar cells for agrivoltaics enabled by a synthetically accessible nonfullerene acceptor”
著者名: Shreyam Chatterjee, Naoya Tagashira, Takuji Seo, Seihou Jinnai, Yasuyuki Watanabe, Katsutoshi Fukushima, Shuji Yokoi, and Yutaka Ie
DOI:10.1016/j.cej.2026.178216
なお、本研究は、JST 未来社会創造事業、大学発新産業創出基金事業などの一環として行われました。
<関連動画>
2026年6月19日(金)配信
知の拠点【すぐわかアカデミア。】
講演147:家 裕隆
すぐにわかる!作物を育てながら発電する技術 ― エネルギーも地産地消の時代へ (国立大学共同利用・共同研究拠点協議会)

参考URL

家裕隆教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/3cc5087df5e9219c.html
家研究室(ソフトナノマテリアル研究分野) HP
https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/omm/

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