がん撃退の新戦略第2弾:ヘルパーT細胞を活性化する改変エクソソームの開発に成功
ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)/医薬保健研究域 医学系、教授 華山 力成 HANAYAMA, Rikinari
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
ナノメートル/微粒子/免疫調節/液性免疫/細胞性免疫/がん抗原/がん免疫/マウスモデル/脳神経外科/免疫制御/ヘルパーT細胞/免疫療法/Th1/Th2/T細胞/がん細胞/マウス/抗原/腫瘍免疫/培養細胞/分化誘導/免疫応答/免疫学/エクソソーム/サイトカイン/疫学
Research NEWS
2026/6/26
概要
金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)/医薬保健研究域医学系免疫学の華山力成教授、山野友義准教授、医薬保健研究域医学系脳神経外科の中田光俊教授、木村亮堅助教らの研究グループは、細胞から分泌される微粒子「エクソソーム」を人工的に改変し、がん抗原特異的なヘルパーT 細胞を選択的に活性化・分化誘導する「改変エクソソーム(AP-EV)」の開発に成功しました。本研究は、2025 年 3 月に報告されたがん細胞を直接攻撃するキラーT 細胞(CTL)を活性化する AP-EV 技術に続く第 2 弾として、免疫応答の中枢を担う「ヘルパーT細胞(Th1/Th2)」の制御技術を新たに確立したものです。これにより、キラーT 細胞ががん細胞を直接攻撃し、ヘルパーT 細胞が免疫調節を行うという二方向からの包括的ながん免疫活性化による新たな免疫療法の道が拓かれました。
エクソソームは、直径約 100 ナノメートルの膜小胞で、タンパク質や核酸を運搬して細胞間の情報伝達を担う、いわば「細胞間のメッセージボックス」です。本研究グループはこれまでに、キラーT 細胞を選択的に活性化する改変エクソソーム(AP-EV)を開発してきましたが、今回はヘルパーT 細胞に着目しました。その分化を誘導するサイトカイン(IL-12 または IL-4)をエクソソームに搭載することで、Th1 型(細胞性免疫に関与)またはTh2型(液性免疫に関与)のヘルパーT細胞への分化を制御できる「AP-EV-Th1」「AP-EV-Th2」を作製しました。
培養細胞およびマウスモデルを用いた実験により、AP-EV-Th1 はがん抗原特異的なヘルパーT 細胞を選択的に活性化し、Th1 型への分化および腫瘍免疫応答の増強が確認されました。これにより、がん細胞に対する強力な免疫応答が誘導され、マウスの腫瘍縮小が実証されました。
本研究は、エクソソームを用いた免疫制御技術の新たな可能性を示すとともに、キラーT 細胞とヘルパーT 細胞の両面からがん免疫を強化する次世代免疫療法の実現に向けた重要な一歩です。
本研究成果は、2025 年 6 月 13 日(金)午前 0 時 1 分(日本時間)に、国際学術誌『Drug Delivery』のオンライン版に掲載されました。
金沢大学 研究