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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年6月24日

空気中で高強度な銅焼結接合を実現!

次世代パワー半導体向け新技術

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
熱および電気伝導率の高さから、次世代パワー半導体の接合材料としての利用が期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学環境学化学総合理工工学農学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
コンピューティング/人工知能(AI)/再生可能エネルギー/ケイ素/耐熱性/エネルギーシステム/酸化銅/材料科学/GaN/フレキシブル/酸化膜/窒化ガリウム/電力変換/持続可能/省エネ/高温環境/持続可能な開発/電気伝導/SiC/ナノメートル/ナノ粒子/パワーエレクトロニクス/高効率化/自動車/省エネルギー/新エネルギー/接合部/電気自動車/電気伝導率/電力変換器/半導体/特殊環境
2026-6-17●工学系産業科学研究所特任教授(常勤)陳 伝彤(CHEN CHUANTONG)

発表のポイント

熱および電気伝導率の高さから、次世代パワー半導体の接合材料としての利用が期待される「銅」を用いた銅ペースト焼結接合において、空気中で高速かつ無酸化での接合を実現する新技術を開発。
従来は、空気の影響による銅の酸化を防ぐため、窒素ガスなどを用いた保護環境が必要だったが、独自の溶剤を開発することで、空気中でも銅粒子の酸化を抑制しながら焼結接合を可能にした。
次世代パワー半導体モジュールやAIデータセンター向け先端半導体の高放熱・高信頼性接合構造への応用、製造プロセスの簡素化によるコスト減や省エネルギー化に期待。

発表概要

大阪大学産業科学研究所 フレキシブル3D実装協働研究所のFupeng Huo特任研究員、陳伝彤(チン・テントウ)特任教授(常勤)らの研究グループは、空気中での銅粒子の酸化を抑制しながら、高強度な焼結接合を実現する新技術を開発しました。
銅(Cu)は銀(Ag)に比べて低コストでありながら熱および電気伝導率が高く、次世代パワー半導体や高性能電子機器向け接合材料として期待されています。しかし、銅は高温で容易に酸化するため、従来の焼結接合プロセスでは、窒素ガスなどを用いた特殊環境下での実施が不可欠であり、生産コストや設備負担が大きな課題となっていました。
今回、研究グループは、焼結中に銅の酸化と還元を制御する技術を開発しました。この技術では、独自に設計した還元性溶剤を用いることで、銅粒子表面の酸化抑制だけでなく、生成された酸化銅の酸素を取り除き、銅に戻すことに成功しました。さらに、焼結により得られた接合体は、高い強度と優れた熱・電気伝導特性を示し、実用レベルの信頼性を有することを確認しました。
本技術は、電気自動車や電力機器などで使われる、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を用いたWBGパワー半導体モジュールをはじめ、AI向けデータセンター、高性能コンピューティング、電気自動車、再生可能エネルギーシステムなど、高発熱・高信頼性が求められる先端電子機器への応用が期待されます。また、製造プロセスの簡素化による省エネルギー化や製造コストの低減にも貢献することから、次世代半導体実装技術の発展に大きく寄与することが期待されます。
本研究成果は、材料科学分野の国際的な中国科学誌 『Journal of Materials Science &Technology』 に、2026年5月26日にオンライン掲載されました。



図1.
(a) SiCパワーモジュールにおける銅焼結接合構造、
(b) 本研究で開発した焼結銅接合層の構造模式図、
(c)(d) 空気中における銅の酸化抑制および高速焼結メカニズム、(e)(f) 250℃、5分間焼結後の接合部断面観察結果

研究の背景

パワーエレクトロニクス分野では、電気自動車や再生可能エネルギー、データセンターなどで使われる電力変換器の小型化・高性能化・省エネルギー化が期待されています。性能向上のためには、半導体チップなどの部品を基板や部材に接合する技術も重要です。接合材料には高い耐熱性や信頼性が求められますが、従来の主流であった鉛フリーはんだでは、次世代パワー半導体の高温環境に対応できない場合があるため、新しい接合材料の研究開発が活発に行われています。
たとえば、銀粒子を利用する焼結接合技術について注目されていますが、実用化においてはコストや技術的な課題が障壁となっています。その点、銅粒子は銀よりも低コストであるとともに、大電流が流れる環境でも故障しにくい性質を有します。
ただし、銅は酸化しやすく、酸化銅は焼結反応を阻害します。そのため、銅を用いた接合プロセスでは、一般的には窒素ガスや酸化防止ガスなどを用いた保護雰囲気下、または真空環境下での実施が想定されています。この環境のために必要なコストや設備負担もまた課題となっており、空気中で耐酸化性を有しつつ、より効率的に焼結接合構造を形成できる銅ペーストが求められていました。

研究の内容

今回、研究グループは独自に設計した還元性溶剤を用い、銅粒子表面の酸化膜(Cu₂O、CuO)を常温で銅ナノ粒子(粒径10 ナノメートル以下、ナノは1メートルの10億分の1)へ還元する技術を開発しました。
具体的には、常温で還元性を示す混合溶剤(主溶剤・補助溶剤)を用いて、銅粒子表面の自然酸化膜から生成した銅ナノ粒子を含む銅ペーストを開発し、その焼結特性を評価しました。
その結果、空気中において250℃、5分間という短時間の焼結条件で、SiCチップとDBC基板の接合において38.1 Mpa(メガパスカル)の高い接合強度を達成しました。また、特別な保護環境や真空装置を用いることなく、空気中で高速かつ無酸化な銅焼結接合技術を実現しました。
この還元性溶剤は焼結後も接合構造内に残存し、継続的な酸化防止機能を発揮するため、銅接合体の長期信頼性向上にも寄与します。焼結により得られた接合体は、高い強度と優れた熱・電気伝導特性を示し、実用レベルの信頼性を有することを確認しました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果は、空気中で高強度な焼結銅接合を実現する技術であり、電子部品製造の低コスト化、省エネルギー化および高信頼化に貢献します。特に、次世代パワー半導体モジュールへの応用を通じて、電気自動車や再生可能エネルギー機器の高効率化を促進し、脱炭素社会の実現に寄与することが期待されます。

特記事項

本研究成果は、2025年5月26日(日本時間)に中国科学誌 『Journal of Materials Science & Technology』 (オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Oxidation-resistant and rapid Cu sintering in an air atmosphere via the synergistic strategy of sustained release reduction and in-situ surface nanostructuring”
著者名:Fupeng Huo, Chuantong Chen , Sangmin Lee, Wanli Li, Kazutaka Takeshita, Yoshiji Yamaguchi, Yashima Momose, and Katsuaki Suganuma
DOI:10.1016/j.jmst.2026.05.041
なお、本研究は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の若手研究者支援事業(若サポプロジェクト、JPNP20004)における研究推進事業の一環として実施され、ヤマト科学株式会社の協力を得て行われました。

参考URL

大阪大学産業科学研究所 フレキシブル3D実装協働研究所
https://www.f3d.sanken.osaka-u.ac.jp/

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