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大阪公立大学 研究Discovery Saga
2026年6月19日

負熱膨張材料の安全でクリーンな合成法を開発

-環境負荷の低減、精密機器の熱制御に適した微粒子化に成功-

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
負熱膨張材料は、半導体製造装置や光学機器といった極めて高い精度が求められる分野での活用が期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学数物系科学工学農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
自律システム/高温超伝導体/水溶液/超伝導体/負熱膨張/超伝導/前駆体/NOx/ペロブスカイト/高温超伝導/非晶質/持続可能/持続可能な開発/膨張材/アモルファス/ナノサイズ/環境負荷/金属イオン/金属酸化物/酸化物/窒素酸化物/熱膨張/半導体/微粒子/機能性/結晶構造/イミン

2026年6月19日
工学研究科
プレスリリース

発表のポイント

負熱膨張材料の安全かつクリーンな新しい合成手法「共沈酸化同時プロセス」を開発
有害な窒素酸化物(NOx)の排出や爆発のリスクがある酸化剤を使わない画期的な手法
負熱膨張材料のみならず、超伝導物質などの機能性酸化物への応用が可能

発表概要

東京科学大学(Science Tokyo) 総合研究院 自律システム材料学研究センターの西久保匠特定助教(兼 神奈川県立産業技術総合研究所 常勤研究員)、東正樹教授、米国ノースウェスタン大学のケネス・ポッペルマイヤー教授らの研究グループは、加熱すると体積が収縮する「負熱膨張(用語1)」という性質を持つペロブスカイト型(用語2)酸化物 BiNi1-xFexO3の、安全かつクリーンな新しい合成手法を開発しました。
負熱膨張材料は、半導体製造装置や光学機器といった極めて高い精度が求められる分野での活用が期待されていますが、負熱膨張材料BiNi1-xFexO3の従来の合成では、有害な窒素酸化物(NOx)の排出や爆発のリスクを伴う酸化剤の使用が避けられず、安全性・環境負荷の面で大きな課題がありました。
本研究では、逆共沈法(用語3)と次亜塩素酸イオン(ClO⁻)による同時酸化を組み合わせた新プロセス「共沈酸化同時プロセス」を開発しました。高度に酸化された非晶質(用語4)前駆体を用いることで、酸化剤を添加することなく、短時間かつ低温での合成に成功しました。また、この手法によって材料の微粒子化が可能となり、広い温度範囲で安定して機能する優れた負熱膨張特性を引き出すことに成功し、さらに、他の機能性酸化物の合成にも応用できることも見いだしました。今回の研究成果は、半導体製造装置や光学機器などの分野において、より広範囲かつ安定した熱膨張制御を実現し、機器のさらなる高性能化に寄与するだけでなく、高温超伝導体をはじめとする他の機能性酸化物の合成にも応用可能です。


図1 本研究で開発した共沈酸化同時プロセスの概略。Bi3+、Ni2+等を含む酸性溶液をNaOHとNaClOを混合した塩基性溶液に滴下することで、酸化された非晶質前駆体を調整し、得られた前駆体を高圧下で短時間加熱することで負熱膨張物質の微粒子が合成できる。
本研究には、米国ノースウェスタン大学のライアン・パウル博士、東京科学大学 物質理工学院 材料系の廣岡孝聡大学院生、松野夏奈大学院生、前林航紀大学院生(いずれも研究当時)、同大学 総合研究院の山本隆文特定教授(現 京都大学理学研究科教授)、大阪公立大学 大学院工学研究科の森茂生教授、笠井秀隆准教授、丁炯特任研究員が参加しました。
本研究成果は、6月18日(現地時間)付で「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。

掲載誌情報

掲載誌:Journal of the American Chemical Society
論文タイトル:Synthesis of unusually high valent perovskite oxide from highly oxidized co-precipitation precursor
著者:Takumi Nishikubo, Ryan J. Paull, Takatoshi Hirooka, Kana Matsuno, Koki Maebayashi, Jiong Ding, Hidetaka Kasai, Shigeo Mori, Takafumi Yamamoto, Kenneth R. Poeppelmeierand Masaki Azuma
DOI:https://doi.org/10.1021/jacs.6c04051

用語解説

(1) 負熱膨張:通常の物質は温めると体積や長さが増大する、正の熱膨張を示す。しかし、一部の物質は温めることで可逆的に収縮する。こうした性質を負の熱膨張と呼び、ゼロ熱膨張材料を開発する上で重要である。
(2)ペロブスカイト(型):一般式ABO3で表される元素組成を持つ、金属酸化物の代表的な結晶構造。
(3)逆共沈法:金属イオンを含む混合水溶液を、沈殿剤(塩基など)の入った容器に滴下して沈殿を得る手法。一般的な共沈法では沈殿剤を金属溶液に加えるため、滴下の過程で液体のpHが徐々に変化し、金属イオンごとに沈殿するタイミングがずれて組成が不均一になりやすい欠点があるが、逆共沈法では過剰な沈殿剤の中に金属イオンが投入されるため、すべての成分を一斉に、かつ均一に沈殿させることができる。これにより、ナノサイズの微細で、元素組成が均一な多成分系の粉末が得られる。
(4)非晶質:原子や分子が規則正しい周期的な配列を持たず、無秩序に集まっている固体状態のこと。物質を構成する原子が規則正しく並んだ結晶に対し、非晶質は原子がバラバラに固まって存在している状態を指す。身近な例ではガラスがこれに相当する。アモルファスとも言う。

問い合わせ先

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学 大学院工学研究科
教授 森 茂生(モリ シゲオ)
Email:moris[at]omu.ac.jp
TEL:072-254-9318
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
プレスリリース全文(PDF文書:1.2MB)
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