BBCubeが切り拓く次世代チップ積層技術
高精度実装・高密度接続・熱設計の3つの基盤技術の確立
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | BBCubeTMの社会実装を加速し、今後のAIアクセラレータや高性能コンピューティングシステムの高性能化と省電力化に貢献することが期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
アーキテクチャ/アクセラレータ/コンピューティング/GPU/言語モデル/最適化/人工知能(AI)/幾何学/ホットスポット/広帯域/ディスプレイ/エッチング/温度分布/樹脂/ドライエッチング/メモリ/微細化/持続可能/VLSI/シミュレーション/シリコン/マイクロ/マルチスケール/低消費電力/電磁界解析/半導体/分解能/ラット
2026年6月18日 公開
ポイント
ワッフルウェハを用いたChip-on-Wafer技術により、チップ間隔10マイクロメートルの高精度チップ実装と約30%の反り低減を実現Via-Last TSVを用いたバンプレス接続技術により従来比約4倍のチップ間通信密度を可能とする高密度接続アーキテクチャを提案
約52%の熱抵抗低減を示すワッフルウェハ構造と、1マイクロメートル分解能・1億点規模のマルチスケール熱解析技術を開発
概要
東京科学大学(Science Tokyo) 総合研究院 WOWアライアンス異種機能集積研究ユニットの北田研究員、中條徳男特任教授、大場隆之特任教授らは、WOWアライアンス[用語1]との共同研究により、次世代AIシステム向け高密度半導体集積技術「BBCubeTM[用語2]」の実現に向け、実装・接続・熱設計の3つの基盤技術を開発しました。近年、生成AIの急速な発展に伴い、複数のチップを高密度に集積する先端パッケージ技術が重要になっています。一方で、チップ実装の高精度化・チップ間接続の高密度化の要請、ウェハ反りや熱の発生が、高性能化を阻む課題となっています。
研究チームは、独自の「ワッフルウェハ[用語3]」を用いたChip-on-Wafer(COW)[用語4]技術を開発し、チップ間隔を10マイクロメートルまで縮小することに成功しました。さらに、実装時の反りをこれまでより約30%低減するとともに、複数のワッフルウェハを積層可能な構造を実現しました。また、Via-Last TSV(Through-Silicon Via)[用語5]を用いたバンプレス接続技術により、従来のマイクロバンプ[用語6]方式と比較して約4倍のチップ間通信密度を実現できる見通しを得ました。加えて、熱シミュレーションにより従来構造比で約52%の熱抵抗低減を示し、高密度集積における放熱性能向上の可能性を明らかにしました。さらに、BSPDN(Backside Power Delivery Network)[用語7]や3次元積層などの新半導体構造に対応するため、チップ全体を1 μm分解能で評価可能な1億点規模の熱解析技術も開発しました。
これらの成果はBBCubeTMの社会実装を加速し、今後のAIアクセラレータや高性能コンピューティングシステムの高性能化と省電力化に貢献することが期待されます。
本成果は、2026年6月14日~18日米国ハワイで開催される国際会議「2026 Symposium on VLSI Technology and Circuits」において発表されます。
背景
近年、生成AIや大規模言語モデル(LLM)の急速な発展により、AIシステムが扱うデータ量は爆発的に増加しています。そのため、AI半導体にはこれまで以上に高い演算性能とメモリ帯域が求められるようになりました。しかし、半導体の微細化による性能向上は限界に近づいており、今後は複数の半導体チップを高密度に集積し、一体となったシステムとして動作させる先端パッケージ技術が重要になると考えられています。一方で、チップ間隔を縮小して高密度に実装する際、実装精度の確保が難しいことやウェハの反りが大きな課題となります。また、チップ間通信に必要な接続密度を高めることや、発熱量が増加する次世代AI半導体の熱設計も大きな技術課題となっています。特に近年は、BSPDN(Backside Power Delivery Network)や3次元積層などの新しい半導体構造が提案されており、発熱密度のさらなる増大が想定されます。そのため、従来以上に高度な熱設計技術が求められています。
研究チームは、これらの課題を解決し、次世代AIシステム向け高密度半導体集積技術「BBCubeTM」を実現するため、実装・接続・熱設計の3つの基盤技術の研究開発に取り組みました。
研究成果
本研究の第一の成果は、独自に開発したワッフルウェハ構造を用いたChip-on-Wafer(COW)技術の開発です。チップをワッフルウェハ内に高精度に配置することで、チップ間隔を10マイクロメートルまで縮小するとともに、ワッフルウェハを積層する技術を確立しました。また、独自のワッフルウェハ構造の採用によって使用するモールド樹脂量を削減し、実装時に発生するウェハ反りをこれまでより約30%低減できることを明らかにしました。反りが低減されることで、従来難しかったCOWウェハを複数積層することが可能となり、高密度3次元集積への道を開きました。

第二の成果は、Via-Last TSV(Through-Silicon Via)を用いたバンプレス接続技術の開発です。ワッフルウェハ上に配置したチップ同士を高密度に接続するため、Via-Last TSVとRDL(ReDistribution Layer)[用語8]を組み合わせた接続構造を開発しました。電磁界解析および回路シミュレーションの結果、従来のマイクロバンプ方式と比較して、同等以上の信号品質を維持しながら、同じ通信帯域を実現するために必要なチップ間接続面積を16分の1に低減できる可能性を示しました。これにより、同じ面積でより多くの信号を伝送できる高密度接続が可能となり、AIアクセラレータとメモリ間の超広帯域通信を実現する次世代チップ間接続技術への道筋を示しました。


第三の成果は、高密度3次元集積に対応する熱設計技術の開発です。ワッフルウェハ構造の熱特性を評価した結果、従来のマイクロバンプ構造と比較して約52%の熱抵抗低減が可能であることを示しました。さらに、BBCubeTMで目指す高密度3次元集積や、近年注目されているBSPDNなどの新たな半導体構造では、発熱密度の増加に伴い熱設計が重要な課題となります。研究チームは、次世代AI半導体開発において求められる熱設計を支援するため、チップ全体を1マイクロメートル分解能で評価可能なマルチスケール熱解析技術を開発しました。本技術では、センチメートルサイズのチップ全体を対象としながら、1億点を超える温度分布を効率的に解析することが可能です。これにより、従来は100マイクロメートル程度の分解能でしか解析できないために困難であったチップ内部の微細なホットスポットとチップ全体の温度分布を同時に評価できるようになりました。

社会的インパクト
本研究成果は、次世代AIシステム向け高密度半導体集積技術「BBCubeTM」の実現を加速するものです。チップ間通信の高密度化により、AIアクセラレータとメモリ間のデータ転送能力を向上できるだけでなく、配線長の短縮による消費電力の低減も期待されます。また、高精度な実装技術と熱設計技術を組み合わせることで、より高性能で信頼性の高いAIシステムの開発につながります。さらに、AIシステムの省電力化を通じてデータセンターの消費電力削減に寄与し、持続可能な社会の実現に貢献します。今後の展開
今後は、本研究で開発した高精度チップ実装技術、超高密度接続技術、および熱設計技術を統合し、BBCubeTMの実用化に向けた研究開発を進めます。特に、AIアクセラレータや次世代メモリを用いた実チップ実証を行い、高性能かつ低消費電力なAIシステムの実現を目指します。また、テック・エクステンション社を通じて量産技術の確立を進めるとともに、国内外の半導体メーカーやシステム企業との協力を拡大し、BBCubeTMの社会実装を加速していきます。
参考文献
- [参考文献1]
- T. Ohba他:Review of Bumpless Build Cube (BBCube) Using Wafer-on-Wafer (WOW) and Chip-on-Wafer (COW) for Tera-Scale Three-Dimensional Integration (3DI):Electronics 2022, 11, 236. DOI:/10.3390/electronics11020236
- [参考文献2]
- N. Chujo他:Bumpless Build Cube (BBCubeTM) 3D: Heterogeneous 3D Integration Using WOW and COW:IEEE Journal on Emerging and Selected Topics in Circuits and Systems, 2025, 15, 3. DOI: 10.1109/JETCAS.2025.3591677
- [参考文献3]
- N. Chujo 他:BBCube 2.5D: A Bumpless 2.5D Integration Technology Enabling High-Density Inter-Chiplet Interconnection Using Waffle-Wafer and Via-Last TSVs:2026 IEEE 76th Electronic Components and Technology Conference.
- [参考文献4]
- H. Ryoson他:Multiscale Thermal Simulator development for high resolution Hot Spot analysis:2026 IEEE 76th Electronic Components and Technology Conference.
用語説明
- [用語1]
- WOWアライアンス:東京科学大学総合研究院WOWアライアンス 異種機能集積研究ユニット(大場研究室)が中心となって運営される産学研究プラットフォーム。半導体関連の設計・プロセス・装置・材料などを手がける企業、および研究機関によって構成される。三次元開発としては国内で唯一、300ミリウエハを利用した実証開発、高度かつ簡便なウェハの薄化技術・積層技術を持ち、バンプレスTSV配線を用いた三次元化技術を世界で初めて開発に成功した。
- [用語2]
- BBCubeTM(Bumpless Build Cube):従来の平置きチップレットを三次元でコンパクトにまとめ、バンプを利用しないでシステムの小型化を可能にするアーキテクチャ。
- [用語3]
- ワッフルウェハ:その名の通り菓子の「Waffle」を由来としたウェハ表面の加工形状で、ウェハ表面に四角い溝を規則的にエッチング加工したものである。ドライエッチングの最適化で幾何学的な段差と平坦な底部を形成し、接着層を塗布後、溝の底部にチップをFace-down でボンディング(接合)する。ボンディングが完了したらモールディング(樹脂による封止)し、モールド材料とチップ裏面のシリコンを同時に研削、そして平坦化する。通常の平坦ウェハではチップ間を樹脂が広く占めるのに対し、ワッフルウェハではシリコンの土手構造がチップ間に残るため、樹脂量を削減できる。
- [用語4]
- Chip-on-Wafer (COW):半導体チップをウェハ上に接合しながらWOW(Wafer-on-Wafer)技術で接続配線する技術。半導体チップをトレンチ加工したウェハ(ワッフルウェハ)上に接合することにより、以降の半導体製造工程において、各種ウェハプロセス装置を用いた高精度な配線加工が行えるようになる。異なるチップサイズの接合も行うことができることから、サーバーなどの大規模演算2.5Dシステムだけでなく、搭載される異種機能デバイスシステムを超小型化で三次元集積することが可能になる。
- [用語5]
- Via-Last TSV(Through-Silicon Via):半導体チップを実装した後に、シリコンを貫通する電気配線を形成する技術。チップ同士を短い距離で接続できるため、高速・低消費電力な半導体システムの実現に役立つ。
- [用語6]
- マイクロバンプ:半導体チップと基板やパッケージ、半導体チップ同士を接続するための突起状の電極。熱と圧力を加えてハンダを溶かしながら接続するため、変形したバンプが隣接するバンプと接触してショートしないよう、一定の間隔が必要となる。
- [用語7]
- BSPDN(Backside Power Delivery Network):半導体チップの裏面から電力を供給する技術。半導体チップの表側の面に信号配線と電力配線を設けていた従来の構造に比べチップ内部の配線を効率化できるため、AI半導体の高速化や省電力化を実現する次世代の半導体技術。ただし局所的に熱がたまりやすくなるため、適切な設計のためには熱解析が必要となる。
- [用語8]
- RDL(Redistribution Layer):半導体チップの電気信号を目的の箇所に引き出すための配線層。複数のチップや外部端子を効率よく接続するために用いられる。
論文情報
- 発表学会:
- 2026 Symposium on VLSI Technology and Circuits
- セッション:
- T17.1(現地時間6月18日午後3時50分)
- 論文タイトル:
- High-Density Chiplet Integration using Face-Down COW Processes with Bumpless Interconnects for Heterogeneous 3D Systems
- 著者:
- Hideki Kitada, Yoshiaki Satake, Wataru Doi, Naoko Araki, Hiroyuki Ryoson, Norio Chujo, Tatsuya Funaki, Azusa Yagi, Toshiyuki Takasaki, Takashi Yoda, Tadashi Fukuda and Takayuki Ohba
- 学会情報:
- 2026 IEEE/JSAP Symposium on VLSI Technology & Circuits
研究者プロフィール
北田 秀樹 Hideki Kitada東京科学大学 総合研究院 WOW Alliance機種機能集積研究ユニット 研究員
研究分野:BBCube三次元大規模集積技術
中條 徳男 Norio Chujo
東京科学大学 総合研究院 WOW Alliance機種機能集積研究ユニット 特任教授
研究分野:BBCube3次元集積のデザイン、アーキテクチャ
大場 隆之 Takayuki Ohba
東京科学大学 総合研究院 WOW Alliance機種機能集積研究ユニット 特任教授
研究分野:BBCube三次元大規模集積技術および応用技術
関連リンク
プレスリリース BBCubeTMが切り拓く次世代チップ積層技術—高精度実装・高密度接続・熱設計の3つの基盤技術の確立—(PDF)3次元半導体実装技術を推進する三つの革新技術を開発 | Science Tokyoニュース
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大場 隆之 Takayuki Ohba|Science Tokyo研究情報データベース
中條 徳男 Norio Chujo|Science Tokyo研究情報データベース
北田 秀樹 Hideki Kitada|Science Tokyo研究情報データベース
WOWアライアンス異種機能集積研究ユニット(大場隆之研究室)
未来産業技術研究所
総合研究院
東京科学大学 研究