時間とともに構造が変化する高分子材料を開発―自然界の「らせん構造」に着想―
融合研究域融合科学系、准教授 堀 優太 HORI, Yuta
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
中性子/スペクトル/円二色性/らせん構造/高分子/クロロフィル/小角散乱/エキシトン/動的挙動/AFM/シミュレーション/ポリマー/原子間力顕微鏡/高分子材料/組織化/超分子/ヘリックス/構造変化/誘導体
2026/6/16
概要
金沢大学融合研究域融合科学系の堀優太准教授は、千葉大学、キール大学、静岡大学、立命館大学の共同研究チームの一員として、自然界のDNA やタンパク質に見られる「らせん構造」に着想を得て、時間の経過とともに自律的に構造を成熟させる新しいクロロフィル由来の超分子ポリマーを開発しました。本材料は、形成直後に構造が固定されることが多い従来の合成材料とは異なります。クロロフィル誘導体が水素結合により環状に集合した「ロゼット」が積み重なることで、まず非らせん状の繊維を形成します。その後、数日かけて段階的に構造が変化し、ピッチの異なる3 種類のらせん構造(HF1:26 nm、HF2:13 nm、HF3:8 nm)へと自発的に移行する特徴的な動的挙動が確認されました。
この構造変化は、ポリマーが一度分解して再集合するのではなく、超分子ポリマー内の一部で生じた構造変化が隣接する領域へと連鎖的に伝わる「協働的」な再組織化によって進行することが、原子間力顕微鏡(AFM)や中性子小角散乱を用いた解析によって明らかになりました。さらに、AFM 観察では、右巻きのらせん構造が確認される一方、円二色性スペクトルによる光学解析では、左巻きに相当する信号が得られました。この一見矛盾する結果について、ロゼットは単に回転しながら積み重なるのでなく、横方向の「ずれ」を伴って積層する「クリーパー・ヘリックス」構造をとることが示され、この構造的な「ずれ」がエキシトン結合の符号反転を引き起こす要因であることが、エキシトン理論に基づく計算シミュレーションによって説明されました。
金沢大学 研究