\太陽光によりアンモニアから水素を取り出す!/ アンモニアの光分解メカニズムを解明
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 高活性NH₃分解光触媒および光触媒利用型NH₃分解技術の開発に期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
光エネルギー/化学物質/再生可能エネルギー/循環型社会/水溶液/スペクトル/太陽/光触媒反応/赤外分光/アンモニア/触媒反応/太陽エネルギー/太陽光/赤外分光法/活性サイト/触媒設計/アンモニア合成/キャリア/持続可能/持続可能な開発/チタン/光触媒/酸化チタン/化学工学/光分解/結晶構造/水素ガス/カップリング/酸化反応
アナターゼニ酸化チタンの特殊な表面
2026-6-1●工学系基礎工学研究科准教授白石 康浩発表のポイント
太陽光によりアンモニア(NH₃)水溶液から水素ガス(H₂)を発生させるニ酸化チタン(TiO₂)光触媒上の酸化活性サイトの構造とそのメカニズムを解明。NH₃は再生可能エネルギーのエネルギーキャリアとして有望視されており、安定的にH₂を取り出す技術が求められていたが、効率を決定づけるTiO₂の特性は不明であった。
アナターゼ型TiO₂表面の四配位Ti種(Ti4c)がNH₃を酸化する活性サイトとして働き、H₂生成の効率を決定づけることが明らかに。
今後、高活性NH₃分解光触媒および光触媒利用型NH₃分解技術の開発に期待。
発表概要
大阪大学大学院基礎工学研究科 化学工学領域/附属太陽エネルギー化学研究センターの、白石 康浩准教授、大学院生 矢倉 秀基さん(2025年度、博士前期課程修了)、笹井 桃佳さん(2023年度、博士前期課程修了)、平松 航さん(博士後期課程3年、日本学術振興会特別研究員)、平井 隆之教授、関西電力株式会社らの研究グループは、太陽光によりNH₃水溶液からH₂ガスを発生させるTiO₂光触媒上の酸化活性サイトの構造とそのメカニズムを解明しました。NH₃は、あらゆる含窒素化合物を合成するための基幹化学物質です。最近では、再生可能エネルギーの貯蔵・輸送を担うエネルギーキャリアとしても注目されています。そのため、常温・常圧下、再生可能エネルギーを利用して、NH₃水溶液からH₂を取り出す技術の開発が求められています。光触媒反応では、太陽光エネルギーによりNH₃水溶液からH₂を生成させる(2NH₃ → 3H₂ + N₂)ことが原理的には可能です。これまで、白金(Pt)などの助触媒を載せたTiO₂光触媒が、NH₃水溶液からのH₂生成に有効であることは明らかにされていましたが、活性サイトの構造は不明でした。
研究グループは、多数のTiO₂粉末を使った反応実験、スペクトル分析、および計算化学により、NH₃からのH₂生成活性を決定づけるTiO₂の特性を明らかにしました。TiO₂には複数の結晶構造がありますが、アナターゼ型の結晶構造を含むTiO₂だけがH₂を生成することが分かりました。この反応では、NH₃の酸化によるN₂生成(2NH₃ + 6h⁺ → N₂ + 6H⁺)と水素イオンの還元によるH₂生成(2H⁺ + 2e⁻ → H₂)を進める必要があり、アナターゼTiO₂だけがNH₃の酸化反応を進めることが分かりました。
通常、TiO₂表面には5つの格子酸素と結合したTi種(Ti5c)が存在しますが、アナターゼには特異的に4つの格子酸素と結合したTi4c種が存在します。このTi4c種は、電子不足な性質のため、水中のNH₃を強力に吸着して酸化することができます。さらに、本研究ではTi4c種上での酸化メカニズムを解明し、本研究成果を基盤とした光触媒開発が期待されます。
本研究成果は、米国化学誌「ACS Catalysis」に、6月1日(月)13時(日本時間)に公開されました。

図1. TiO₂表面の構造
(a)アナターゼ(001)面、(b)ルチル(011)面、(c) アナターゼ(110)面
#アナターゼ(110)面だけが水中のNH₃を光酸化できる
研究の背景
NH₃は、すべての含窒素化合物を合成するための基幹化学物質です。最近では、再生可能エネルギーの貯蔵・輸送を担うエネルギーキャリアとしても注目されおり、エネルギー循環型社会の実現を担うキーマテリアルです。そのため、常温・常圧下、再生可能エネルギーを利用してNH₃水溶液からH₂を取り出す技術の開発が求められています。光触媒反応では、太陽光エネルギーによりNH₃水溶液からH₂を生成させる(2NH₃ → 3H₂ + N₂)ことが原理的には可能です。これまで、白金(Pt)などの助触媒を載せたTiO₂光触媒が、NH₃水溶液からのH₂生成に有効であることは明らかにされていましたが、活性を決定づける要因や活性サイトの構造は不明でした。
研究の内容
研究グループは、多数のTiO₂粉末を使った反応実験、スペクトル分析、および計算化学により、NH₃からのH₂生成の活性点は、アナターゼTiO₂表面に特異的に存在する4配位チタン種(Ti4c)であることを解明しました。TiO₂には複数の結晶構造がありますが、アナターゼ型の結晶構造を含むTiO₂にPtを載せた触媒だけがH₂を生成することが分かりました。この反応では、NH₃の酸化によるN₂生成(2NH₃ + 6h⁺ → N₂ + 6H⁺)と水素イオンの還元によるH₂生成(2H⁺ + 2e⁻ → H₂)を進める必要があります。様々な実験の結果、アナターゼTiO₂だけがNH₃の酸化反応を進める特性をもつことが分かりました。図1a、bに示すように、通常、TiO₂表面には5つの格子酸素と結合したTi(Ti5c)種が存在します。ところが、図1cに示すように、アナターゼには特異的に4つの格子酸素と結合したTi4c種が存在しています。このTi4c種は、配位数が少ないことにより電子不足の状態をとっています。
図2aに示すように、一般的なTi5c種は水が吸着することによりNH₃はほとんど吸着することができず、反応は進みません。一方、図2bに示すように、Ti4c種は電子不足な性質により、より電子を供与しやすいNH₃を吸着することができ、酸化が進行します。
図3には、Ti4c上でのNH₃酸化メカニズムをまとめています。隣接する2つのTi4c種(i)へNH₃がそれぞれ吸着します(ii)。TiO₂は光を吸収して、ホール(h⁺)をTi4cに隣接する格子酸素上に、励起電子(e⁻)をPt上に生成します(iiʹ)。h⁺はNH₃を酸化し、生成した–NH₂種がカップリングすることにより、N–N型中間体を生成します。一方、e⁻はH⁺を還元してH₂を生成します(iii)。この中間体は、さらにh⁺により酸化され、N=N型中間体(iv)を生成します。さらなるh⁺酸化によりN₂種(v)が生成し、これが表面から脱離することによりTi4c種が再生されます(i)。これらのメカニズムは、赤外分光法を用いるその場分析、および計算化学による遷移中間体のエネルギー解析からも裏付けられました。また、赤外分光法により求めたアナターゼ含有TiO₂表面のTi4c量とH₂生成活性にはよい相関が見られました。したがって、Ti4cがNH₃の吸着と酸化を進める活性サイトとして働き、触媒上のTi4c量がNH₃からのH₂生成活性を決定づける要因であることを明らかにしました。

図2. 表面Ti種と水およびNH₃の関係
(a)Ti5c種、(b)Ti4c種
#Ti4c種だけが水中のNH₃を吸着し、酸化する

図3. Ti4cを酸化サイトするNH₃分解メカニズム
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究成果により、NH₃からH₂を取り出す光触媒の活性を左右する重要な因子を明らかにしました。本成果にもとづいて、表面Ti4c種を多量に形成させる触媒設計指針が、高活性光触媒の開発における鍵となることが分かりました。社会実装にはTi4c種を効率よく作り出すための技術開発が必要ですが、本研究成果を基盤とした光触媒開発が可能と考えられます。特記事項
本研究成果は、2026年6月1日(月)13時(日本時間)に米国化学誌「ACS Catalysis」(オンライン)に掲載されました。タイトル:“Role of Lewis Acidic Sites on Anatase Titanium Dioxide in Photocatalytic Hydrogen Production from Aqueous Ammonia”
著者名:Yasuhiro Shiraishi, Hideki Yagura, Momoka Sasai, Wataru Hiramatsu, Satoshi Ichikawa, and Takayuki Hirai
DOI:10.1021/acscatal.6c01524
なお、本研究は、科学研究費助成事業(基盤研究A (一般)、課題番号 25H00817)「金属オキシクロリド光触媒の高次制御による革新的常温アンモニア合成」(研究代表者:平井 隆之 大阪大学大学院基礎工学研究科 化学工学領域/附属太陽エネルギー化学研究センター)の支援により実施されました。また、本研究は、文部科学省「マテリアル先端リサーチインフラ」事業(課題番号 JPMXP1225OS0006)の支援を受けました。
本研究は、関西電力株式会社との共同研究です。
参考URL
白石康浩 准教授 研究者総覧https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/f7482bda1ee072b7.html
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