石灰石や貝殻に閉じ込められた二酸化炭素を、燃料のメタンへ
― ボールミルの機械的エネルギーを利用した新しい炭素資源循環技術 ―
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 回収した二酸化炭素をいったん安定な固体の炭酸塩として貯蔵し、必要に応じてメタンへ変換する新しいCCU(Carbon Capture and Utilization:二酸化炭素回収・利用)技術につながる基盤研究 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
概要
岐阜薬科大学と愛知工業大学の研究グループは、炭酸カルシウムなどの「金属炭酸塩」から、燃料として利用できるメタンを作り出す新しい反応を開発しました。金属炭酸塩は、二酸化炭素が安定な固体として固定化された物質とみなすことができます。たとえば、石灰石、鍾乳石、卵の殻、牡蠣やホタテの貝殻などにも炭酸カルシウムが含まれています。しかし、炭酸塩は非常に安定なため、これを再び有用な燃料や化学品へ変換することは簡単ではありませんでした。
本研究では、遊星型ボールミルと呼ばれる装置を用い、容器内で発生する機械的エネルギーを化学反応に利用しました。さらに、Ni/Al合金と水を組み合わせることで、炭酸塩からメタンを生成できることを見いだしました。外部から高圧水素を導入する必要がない点も、本反応の大きな特徴です。
メタンは都市ガスの主成分であり、燃料として広く利用されています。本成果は、回収した二酸化炭素をいったん安定な固体の炭酸塩として貯蔵し、必要に応じてメタンへ変換する新しいCCU(Carbon Capture and Utilization:二酸化炭素回収・利用)技術につながる基盤研究です。
本研究は 岐阜薬科大学と愛知工業大学の共同研究の成果であり、2025年6月に設立された岐阜薬科大学発ベンチャー「株式会社ECEテクノ(本社:岐阜薬科大学、支社:愛知工業大学)」との強固な産学連携体制のもと、社会実装に向けた開発を加速させています。なお、論文の筆頭著者は、本学博士課程の学生であるとともにベンチャーの執行役員でもあります。
研究のポイント
1.固体の炭酸塩からメタンを生成
炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩を原料として、メタンを生成できることを示しました。これは、固体として安定に存在する炭素資源を燃料へ変換する新しい方法です。2.水を水素源として利用
一般的なメタン化反応では水素ガスが必要になりますが、本研究では水を水素源として利用しました。これにより、高圧水素を外部から供給しない反応系を構築しました。3.ボールミルの機械的エネルギーを活用
ボールミル内では、ボールの運動によって粉砕・衝突・せん断といった力が発生します。本研究では、この機械的エネルギーを利用して、通常は反応しにくい安定な炭酸塩を活性化しました。4.Ni/Al合金が反応を後押し
Ni/Al合金は、メタン生成を進めるうえで重要な役割を果たしました。Ni成分は炭素種の水素化に、Al成分は反応中に生じる酸素種の捕捉に関与していると考えられます。期待される展開
本研究は、二酸化炭素を「気体」として扱うのではなく、安定な「固体」として貯蔵し、必要なときに燃料へ変換するという新しい発想に基づいています。炭酸塩は取り扱いやすく、貯蔵・輸送にも適しているため、将来的には、必要な場所で必要な量のメタンを作るオンサイト型エネルギー供給技術への展開が期待されます。現在、本技術の社会実装に向けて、連続反応装置の開発やスケールアップに関する研究を進めています。
論文情報
雑誌名:Chemical Engineering Journal Advances論文名:Methanation of Metal Carbonates with Mechano-Energy Using H2O as a Reducing Agent
著者:Naoya Ito, Naoya Sakurada, Tatsunori Iwamura, Takashi Ikawa, Hironao Sajiki
DOI番号:10.1016/j.ceja.2026.101221
掲載日:2026 年 5 月 9 日オンライン公開
QRコード

用語解説
メカノケミカル反応ボールミルなどで発生する粉砕、衝突、せん断といった機械的エネルギーを利用して進行する化学反応です。溶媒の使用量を減らせる可能性があり、環境負荷の低い反応技術として注目されています。
金属炭酸塩
炭酸イオンと金属イオンからなる化合物です。代表例は炭酸カルシウムで、石灰石、貝殻、卵の殻などにも含まれています。二酸化炭素を安定な固体として固定化した物質とみなすことができます。
メタン化反応
炭素を含む物質をメタンへ変換する反応です。メタンは都市ガスの主成分であり、燃料として利用されています。
CCU
Carbon Capture and Utilizationの略で、二酸化炭素を回収し、有用な物質へ変換して利用する技術です。
研究室情報・お問い合わせ
岐阜薬科大学 アドバンストケミストリー研究室〒501 1196 岐阜市大学西 1 25 4
TEL 058 230 8100(内線 3621)
Web:https://gpu-advchem.jp/
QRコード

岐阜薬科大学 研究