リソソーム制御が脳腫瘍治療のカギ!
~アミノ酸バランスを活用した“抗がん剤ブースター療法”を開発~
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
高分子/細胞内小器官/加水分解/水分解/加水分解酵素/生合成/アルギニン/細胞膜/グリオブラストーマ/悪性脳腫瘍/放射線治療/膠芽腫/分子標的/モノクローナル抗体/アミノ酸/オートファジー/リソソーム/受容体/低分子化合物/転写因子/遺伝子/抗がん剤/抗体/手術/脳腫瘍/分子標的薬/放射線
Research NEWS
ナノ生命科学研究所,教授
平尾 敦HIRAO, Atsushi
2026/6/3
概要
金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)/がん進展制御研究所の平尾敦教授、がん進展制御研究所のジン・ヨンウエイ博士研究員(研究当時)、小林昌彦助教、医薬保健研究域医学系の中田光俊教授、医薬保健研究域薬学系の荒川大准教授、ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の新井敏教授らの研究グループは、東京大学医科学研究所、慶應義塾大学先端生命科学研究所、和歌山県立医科大学と共同で、悪性脳腫瘍の抗がん剤に対する耐性が「リソソーム」(※1)の働きによって引き起こされることを明らかにしました。また、アミノ酸のバランスを変えることでリソソームの機能が低下し、抗がん剤の効果が高まることも発見しました。悪性脳腫瘍の一種である膠芽腫(グリオブラストーマ)は、手術、放射線治療、そして「テモゾロミド」(ここでは、TMZ と略します)という抗がん剤で治療するのが一般的です。しかし、多くの患者さんは治療後に再発し、がんがさらに悪化してしまいます。そのため、治療が効かなくなる仕組みを解明し、新たな治療法を開発することが急務となっています。
今回の研究では、細胞内の「リソソーム」を制御する重要な因子「TFE3」(※2)がリソソームを活性化し、治療が効かなくなる原因となることを発見しました。さらに、アミノ酸の一種である「リシン」が、リソソームの機能維持に不可欠な役割を果たしていることも明らかになりました。このリシンの働きを阻害する低分子化合物(※3)を投与することで、アミノ酸のバランスを崩し、リソソームの機能を低下させることを確認しました。この結果は、抗がん剤の治療効果を飛躍的に向上させる「抗がん剤ブースター療法」の確立に向けた重要な成果といえます。将来的に、この成果を医療に応用することで、悪性脳腫瘍の治療成績の改善に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2025年4月1日(英国時間)に英国科学誌『Nature Communications』に掲載されました。
金沢大学 研究