未来の高CO₂環境で「光のゆらぎ」に負けないイネへ
Rubisco activaseによる光合成と成長の強化戦略
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | Rubisco activaseを標的とした光合成改良が、今後の食料生産や気候変動適応型農業に向けた新たな戦略となることが期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
2026.06.02
概要
東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守 航 准教授らの研究グループは、神戸大学大学院農学研究科の深山 浩 教授との共同研究により、光合成酵素Rubiscoを活性化するタンパク質「Rubisco activase」を増加させたイネを用いて、将来の高CO₂環境下における変動光環境への光合成応答を解析しました。自然環境では、植物は雲の移動や葉の揺れ、周囲の葉による遮蔽などによって、秒〜分単位で絶えず変化する光環境にさらされています。このような「変動光環境」では、光が急に強くなっても、最大速度で光合成を行えるようになるまでの「光合成誘導」に時間がかかることによって、炭素固定量が大きく低下することが知られています。そのため、変動光環境に迅速に応答できる光合成制御機構の解明は、将来の作物生産性向上に向けた重要課題となっています。
本研究では、Rubisco activaseを増やしたイネにおいて、光が弱い状態から強くなった際のRubisco活性化速度が向上し、その結果、光合成誘導が高速化されることを明らかにしました。さらに、将来予測される高CO₂条件(800 ppm)においても、変動光環境下で高い光合成能力を維持し、水利用効率も向上することが分かりました。また、実際の自然環境を模擬した長期的な変動光条件下では、Rubisco activaseを増やしたイネで成長促進も確認されました。
本成果は、変動する光環境への適応能力を高めることで、将来の高CO₂・気候変動環境下でも高い生産性を維持できる作物開発につながる重要な知見です。特に、Rubisco activaseを標的とした光合成改良が、今後の食料生産や気候変動適応型農業に向けた新たな戦略となることが期待されます。
本研究の成果は、2026年6月2日付でPlant, Cell & Environmentに掲載されました。

詳細(プレスリリース本文)
研究代表者
東京大学大学院農学生命科学研究科稲垣 茉里香(研究当時:修士課程)
矢守 航 准教授
神戸大学大学院農学研究科
深山 浩 教授
論文情報
タイトル
"Overexpression of Rubisco activase improves photosynthesis and plant growth in rice under fluctuating light under future high CO2 conditions"DOI
10.1111/pce.70617著者名
Wataru Yamori, Marika Inagaki, Hiroshi Fukayama掲載誌
Plant, Cell & Environment掲載日
2026年6月2日問い合わせ先
神戸大学企画部広報課E-Mail:ppr-kouhoushitsu[at]office.kobe-u.ac.jp(※ [at] を @ に変更してください)
研究者
深山 浩
教授
農学研究科

農学研究科
神戸大学 研究