
京都大学 研究
Discovery Saga
2026年6月2日
持効型G-CSF製剤が幹細胞ドナーの負担を低減することを実証
〜注射1回で、幹細胞をより多く・より速く・より少ない日数で採取可能に〜
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
 | | 日本および世界における造血幹細胞採取の運用最適化に貢献することが期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
この研究の主な対象者
企業・研究者の方
公開日
概要
同種造血幹細胞移植は、白血病などの血液のがんに対する重要な治療ですが、その実施には健康なドナーから幹細胞を採取する必要があります。従来法では、採取前に4〜5日間連続してG-CSF製剤を注射する必要がありました。また、十分な細胞数が得られないことや、目標細胞数の確保に複数日を要する場合がありました。そのため、ドナーへの身体的・時間的な負担に加え、患者に確実な幹細胞数を届けるうえでも課題がありました。近年、1回の注射で効果が続く持効型G-CSF製剤のドナーへの使用が承認されましたが、実際の診療現場での有効性は明らかではありませんでした。
そこで、清水知成 医学研究科博士課程学生、城友泰 医学部附属病院助教、新井康之 同講師、長尾美紀 同教授、山下浩平 同特定准教授、髙折晃史 同教授らの研究グループは、「持効型G-CSF製剤」を使った場合と、「従来型G-CSF製剤」を使った場合とで、幹細胞の採取成績を比較しました。健康ドナー39人を解析した結果、持効型G-CSF製剤を使った方が、(1)採取できた幹細胞数が多く、(2)目標数の幹細胞採取に必要な時間が短縮され、(3)高い確率で採取を1日で完了できることが分かりました。副作用の増加も認められませんでした。この成果は、持効型G-CSF製剤の使用が、ドナーの負担を低減し、かつ安定した幹細胞採取につながることを示したものです。さらには、採取に関わる医療スタッフや機器の有効利用にも寄与します。日本および世界における造血幹細胞採取の運用最適化に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2026年5月29日に、国際学術誌「Transfusion」にオンライン掲載されました。
画像

研究者のコメント
「造血幹細胞移植は多くの血液のがん患者さんにとって、根治を目指せる重要な治療法です。しかし、移植を支えてくださる健康なドナーの方々に、何日も通院して注射を受け続け、採取のために複数日入院していただくことへの負担は、私たちにとってもずっと気がかりでした。今回の研究で、1回の注射で済む持効型G-CSF製剤が、通院・注射・入院の負担を大きく減らしながら、より多くの幹細胞をより短時間で採取できることを、実際の臨床データで示すことができました。ドナーの皆さんの負担を減らすことが、より多くの患者さんへの質の高い移植医療につながると確信しています。本邦の経験を世界へも積極的に発信していきたいと考えています。」(清水知成、城友泰、新井康之)
詳しい研究内容について
持効型G-CSF製剤が幹細胞ドナーの負担を低減することを実証〜注射1回で、幹細胞をより多く・より速く・より少ない日数で採取可能に〜
研究者情報
研究者名
清水 知成
Researchmap
研究者名
城 友泰
京都大学 教育研究活動データベース
研究者名
新井 康之
京都大学 教育研究活動データベース
研究者名
長尾 美紀
京都大学 教育研究活動データベース
研究者名
山下 浩平
京都大学 教育研究活動データベース
研究者名
髙折 晃史
京都大学 教育研究活動データベース
書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1111/trf.70286
【書誌情報】
Tomoshige Shimizu, Tomoyasu Jo, Noriyoshi Yoshinaga, Takashi Sakamoto, Hiroyuki Matsui, Toshio Kitawaki, Junya Kanda, Momoko Nishikori, Kouhei Yamashita, Miki Nagao, Akifumi Takaori-Kondo, Yasuyuki Arai (2026). Usefulness of pegfilgrastim for allogeneic peripheral blood stem cell collection from healthy donors.Transfusion.
関連部局
医学部・医学研究科
医学部附属病院