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京都大学 研究Discovery Saga
2026年5月28日

脳卒中後の痛みが両側へ広がる謎を画像で解明

―LPAがミクログリアを脳梁内で連鎖的に活性化し、PGE₂増加を招く過程を可視化―

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
総合理工総合生物医歯薬学
【Sagaキーワード】
質量分析/生体内/大脳/虚血・再灌流/グリア/プロスタグランジン/プロスタグランジンE2/マウス/ミクログリア/リゾホスファチジン酸/虚血/生理活性/生理活性脂質/創薬/大脳皮質/免疫細胞/薬理学/脂質/脳卒中/疼痛
この研究の主な対象者
企業・研究者の方
公開日

概要

脳卒中後には、手足などに長く続く痛みが生じることがあります。通常は脳の損傷部位とは反対側に現れますが、まれに両側へ広がります。なぜ脳卒中後に痛みが起こり、なぜ片側にとどまらず両側へ広がるのか、その仕組みは分かっていませんでした。
 根山広行 医学研究科特定研究員、杉浦悠毅 同特定准教授らの研究グループは、この謎に、生理活性脂質リゾホスファチジン酸(LPA)、脳内免疫細胞ミクログリア、痛みに関わるプロスタグランジンE2(PGE2)が連動して関わることを、イメージング質量分析などにより本研究で初めて画像として捉えました。
 研究グループは、マウスの虚血・再灌流モデルを解析し、LPAが損傷部位だけでなく、左右の脳をつなぐ脳梁や反対側の脳領域でも増えることを可視化しました。さらに、PGE2が反対側の大脳皮質で増加することも確認しました。LPAの増加部位ではミクログリアも活性化しており、LPAがミクログリアを動かして炎症の信号を片側から反対側へ広げる可能性が示されました。
 そこで脳梁へLPAを少量投与したところ、投与したLPAそのものが遠くまで広がったのではなく、体内由来のLPAが脳梁内で新たに増える連鎖反応が起こりました。この反応に沿ってミクログリアが連続的に活性化し、反対側の脳でPGE2が増える様子を画像として取得しました。さらに、ミクログリア活性化やLPA産生を抑える薬剤により、この反応と脳卒中後の両側性疼痛が抑制されました。本研究は、脳卒中後の痛みが両側へ広がる仕組みを示すとともに、生理活性分子の働きを組織内の「場所」と結びつけて理解するイメージング質量分析研究の意義を示す成果です。
 本研究成果は、2026年5月20日に、国際学術誌「Communications Biology」にオンライン掲載されました。
画像

本研究の概要図。LPAはミクログリアを介して脳梁内に炎症シグナルを広げ、反対側の脳の神経炎症・痛みにつながる。(BioRender、作成者:根山広行)

研究者のコメント
「本研究で最も印象的だったのは、脳内で目に見えなかった炎症の流れを、LPAやPGE2という分子の画像として捉えられた点です。脳卒中後の痛みがなぜまれに両側へ広がるのかという問いに対し、LPA、ミクログリア、脳梁、PGE2が連動する様子を一つの流れとして示せたことに大きな意義があると考えています。
特に、標識LPAを用いた実験により、投与したLPAそのものの拡散ではなく、体内由来のLPAが新たに増える様子を可視化できました。薬理学的な実験とイメージング質量分析を組み合わせることで、生体内で働く生理活性分子の動きを『どこで起きるか』とともに理解できた点は、今後の病態解析や創薬研究にもつながると感じています。」(根山広行)

詳しい研究内容について

脳卒中後の痛みが両側へ広がる謎を画像で解明―LPAがミクログリアを脳梁内で連鎖的に活性化し、PGE2増加を招く過程を可視化―

研究者情報

研究者名 根山 広行 Researchmap 研究者名 杉浦 悠毅
京都大学 教育研究活動データベース

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s42003-026-10261-5

【書誌情報】
Hiroyuki Neyama, Ryoma Kizu, Rae Maeda, Hiroshi Ueda, Yuki Sugiura (2026). Lysophosphatidic acid drives to mirror-image pain via corpus callosum-mediated propagation of inflammatory responses.Communications Biology.

関連部局

医学部・医学研究科