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京都大学 研究Discovery Saga
2026年5月25日

分⼦を識別し、⾊・⼤きさ・硬さが変わる多孔性ゲル

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
似通った構造の分⼦を精密に識別する分⼦認識はナノメートルの⾮常に⼩さいスケールで起こる現象です。この現象を⼈間が簡単に⾁眼で識別できる「⾊や⼤きさ」、触って確認できる「硬さ」などで判別できると、新しいセンサーなどへの応⽤が期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
環境学化学総合理工工学総合生物農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
化学物質/弾性率/配位結合/ポリエチレン/材料設計/センサー/ナノサイズ/ナノメートル/ポリマー/統合システム/ポリエチレングリコール(PEG)/エチレン/機能性/分子標的

研究 2026年5月22日

MOPEGゲルのメカニズム:バスケットボールのゴールネットに見立てたポリマーのネットワークが、バスケットボールに見立てた特定の分子標的を捕捉することで、材料の色や形などの見た目が変化する。

概要

京都⼤学アイセムス(⾼等研究院 物質ー細胞統合システム拠点:WPI-iCeMS)の⽴⽯友紀 ⽇本学術振興会特別研究員 PD(当時、現・東北⼤学学際科学フロンティア研究所助教)と古川修平 教授らの研究グループは、特定の分⼦を⾒分け、「どの分⼦を取り込んだか」という分⼦レベルの識別情報を、「⾊」、「⼤きさ」、「硬さ」の変化として出⼒する多孔性ゲル「MOPEG ゲル」の開発に成功しました。

 分⼦を識別する仕組みはガスの分離から⽔質管理、薬剤分⼦の輸送など、私たちの⽣活・社会に密接に関連しており、これまでにもさまざまな分⼦認識材料の開発が進められてきました。似通った構造の分⼦を精密に識別する分⼦認識はナノメートルの⾮常に⼩さいスケールで起こる現象です。この現象を⼈間が簡単に⾁眼で識別できる「⾊や⼤きさ」、触って確認できる「硬さ」などで判別できると、新しいセンサーなどへの応⽤が期待できます。

 本研究では、この分⼦認識情報を⽬に⾒える形で出⼒する新しい材料「MOPEG ゲル」を開発しました。MOPEG ゲルは、⾦属錯体多⾯体(MOP)という分⼦を「結び⽬(架橋点)」とし、柔軟なポリエチレングリコール(PEG)と連結させて作るゲル材料です。MOPの表⾯にある⾦属イオンが配位結合)を介した分⼦認識サイトとしてはたらきます。配位結合を形成できる窒素(N)原⼦をもつ分⼦を MOPEG ゲルの中へ取り込ませた場合にのみ、ゲルは緑⾊から⾚⾊へ変化し、⼤きさも収縮するとともに硬さ(貯蔵弾性率)が 10 倍以上跳ね上がりました。⼀⽅、構造が類似していても識別できない炭素(C)原⼦や⽔素(H)原⼦のみをもつ分⼦では、これらの顕著な変化は起こりません。これにより、MOPEG ゲルは、ナノサイズの分⼦情報を、⼈間が感知可能なゲル材料の⾊や⼤きさ、硬さといったマクロな物性へと変換できることを実証しました。

 本研究で⽰された材料設計指針は、MOPに限らず既存の他の機能性分⼦を架橋点とした⾼分⼦材料の開発へと展開できます。今後、「ミクロ分⼦認識」と「マクロ物性応答」の両輪がはたらく新しい種類の多孔性材料として、特定の化学物質に反応して応答する⼈⼯アクチ ュエータや、スマート薬剤輸送システムなどの実現に新たな道が開かれることが期待されます。

 本成果は 2026年5⽉5⽇(⽇本時間)に、⽶国誌「Journal of the American Chemical Society」オンライン版で公開されました。

詳しい研究成果について

分⼦を識別し、⾊・⼤きさ・硬さが変わる多孔性ゲル
論文タイトル:“Coordinative Guest Recognition Triggers Macroscale Deformation of Covalently Linked Metal-Organic Polyhedra Polymer Gels”
著者:Tomoki Tateishi, Shunsuke Imai, Ayana Miyata, Yuki Tokudome, Kenji Urayama, Shuhei Furukawa
Journal of the American Chemical Society | DOI: 10.1021/jacs.6c06620