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東京科学大学 研究Discovery Saga
2026年5月20日

プラスチック分解能力は微生物に広く存在

大規模ゲノム解析により95%以上の微生物に分解関連遺伝子を確認

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
分解能力は多様な環境に広く分布し、環境に応じたリサイクル技術や新素材開発への応用が期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学環境学数物系科学生物学工学総合生物農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
フィンランド/最適化/極地/マイクロプラスチック/海洋/データ解析/進化生物学/生分解/持続可能/プラスチック/ポリマー/マイクロ/リサイクル/環境負荷/資源循環/体系化/分解能/バイオマテリアル/古細菌/生態系/土壌/生物多様性/微生物/ゲノム解析/骨再生/骨粗鬆症/ゲノム/遺伝子/細菌/生体材料

2026年5月19日 公開

ポイント

微生物の95%以上が、プラスチックを含むポリマーを分解する可能性を持つことを解明
60万以上のタンパク質を網羅的に解析し、分解関連タンパク質の大規模データベースを構築
分解能力は多様な環境に広く分布し、環境に応じたリサイクル技術や新素材開発への応用が期待

概要

東京科学大学(Science Tokyo) 総合研究院 生体材料工学研究所 無機生体材料学分野の中村美穂非常勤講師らによる国際共同研究チームは、微生物によるプラスチック分解能力について大規模な解析を行い、微生物の95%以上が、プラスチックなどのポリマーを分解する可能性のある遺伝子を持つことを明らかにしました。
本研究では、天然および合成プラスチックの分解に関与する可能性のある60万以上のタンパク質を特定し、「PDCOGs(Plastic-Degrading Clusters of Orthologous Groups)」と呼ばれるデータベースとして体系化しました。これは、微生物のプラスチック分解能力を、これまでにない規模で整理・可視化したものです。さらに、これらの分解関連タンパク質が、海洋や土壌、深海、温泉、極地などの多様な環境に広く分布していることを確認しました。特に、土壌や岩石内部の環境では分解酵素が豊富に見られ、微生物の分解能力が周囲の環境条件に強く影響されることも示されました。
今回の成果は、プラスチック分解能力が特定の微生物に限られた特殊な性質ではなく、地球規模で広く存在する可能性を示すものです。今後、こうした自然界の機能を活用することで、環境に適した新しい材料開発や持続可能なリサイクル技術の実現につながることが期待されます。
本成果は、2026年3月18日付(日本時間午後12時)の「Environmental Technology & Innovation」誌に掲載されました。

背景

プラスチック汚染は、海洋や淡水、土壌、さらには極地に至るまで、世界中で深刻化しています。特に、マイクロプラスチックやナノプラスチックは環境中に蓄積し、生態系への影響が懸念されています。
これまでにも、個別の微生物がプラスチックを分解することは知られていましたが、その能力がどの程度広く存在しているのか、また、地球規模でどのように分布しているのかについては、十分に解明されていませんでした。

研究成果


本研究では、大規模なゲノムデータ解析を通じて、プラスチック分解に関与する可能性のある625,000以上のタンパク質を特定しました。これらを51の
オルソログタンパク質群[用語1]に分類し、「PDCOGs」として体系化しました。

解析の結果、細菌や古細菌などの微生物の95%以上が、プラスチックを含むポリマーの分解に関与する可能性のある遺伝子を持つことが明らかになりました。

また、これらの分解関連タンパク質は23種類の環境にわたって分布しており、特に土壌や岩石内部などの環境で豊富に存在することが確認されました。このことから、微生物の分解能力は環境条件に応じて形成されていることが示唆されます。


図. 細菌が産生する酵素によってプラスチックポリマーが分解される過程を示した模式図。

社会的インパクト

本研究は、プラスチック分解能力が一部の特殊な微生物に限られたものではなく、自然界に広く存在する可能性を示しました。
これは、環境中の微生物が、すでにプラスチック汚染に対応するための潜在的な仕組みを備えていることを意味し、持続可能な資源循環の実現に向けた新たな視点を提供するものです。

今後の展開

今後は、特定の環境に適応した分解酵素の機能をさらに詳しく解析することで、より効率的な生分解プロセスの開発が期待されます。
また、環境条件に応じた酵素の特性を活用することで、地域ごとに最適化された新素材の設計や、環境負荷の少ないリサイクル技術の開発につながる可能性があります。

付記

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(23K08670)、Sigrid Jusélius Foundationの支援を受けて行われました。

用語説明

[用語1]
オルソログタンパク質群:共通の働きを持つタンパク質グループ。進化的に共通の起源を持ち、同様の機能を担うタンパク質群。

論文情報

掲載誌:
Environmental Technology & Innovation
タイトル:
Plastic-degrading clusters of orthologous groups reveal near-universal biodegradation potential in prokaryotes
著者:
Mustari S, Pham LT, Saikkonen K, Nakamura M, Puigbò P
DOI:
10.1016/j.eti.2026.104872

研究者プロフィール


中村 美穂 Miho Nakamura
東京科学大学 総合研究院 生体材料工学研究所 非常勤講師
University of Turku グループリーダー・非常勤教授(フィンランド)
La Salle Campus Barcelona Ramon Llull University准教授(スペイン)
研究分野:バイオマテリアル(Biomaterials)
(English、日本語)


ペレ・プッチボ Pere Puigbò
バルセロナ自治大学 講師(スペイン)
トゥルク大学 非常勤教授(フィンランド)
研究分野:進化生物学(Evolutionary Biology)
(English, Catalan, Spanish)


カリ・サイッコネン Kari Saikkonen
トゥルク大学 教授(フィンランド)
研究分野:生物多様性科学(Biodiversity Science)
(English, Finnish)

関連リンク

プレスリリース プラスチック分解能力は微生物に広く存在—大規模ゲノム解析により95%以上の微生物に分解関連遺伝子を確認—(PDF)
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東京科学大学 総合研究院 生体材料工学研究所
非常勤講師 中村 美穂
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mihomet@tmd.ac.jp

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