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千葉大学 研究Discovery Saga
2026年5月20日

「収量」だけじゃない 様々な栽培特性を空から測る新たな枠組み

―混植栽培の生産性・安定性・倒伏/雑草耐性を同時に評価―

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
混植以外にも、多面的な強みを持つ様々な農法の検証や普及の促進のほか、世界の農業が直面する「食料生産の増大」と「環境負荷の低減」という二重の課題に対する解決策を提供することが期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学複合領域数物系科学工学農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
位置情報/人工知能(AI)/不確実性/産学連携/気候変動/持続可能/環境負荷/資源循環/生産性/有機物/園芸学/環境ストレス/食品産業/農地/オオムギ/生態系/ストレス耐性/ドローン/生態系機能/土壌/微生物/ストレス

2026年05月19日
研究・産学連携

概要

千葉大学大学院園芸学研究科修士課程の和島大士氏(研究当時)、同大大学院園芸学研究院の深野祐也准教授、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、東京大学からなる研究チームは、農業研究の基本である「農地での栽培試験」を効率化・高精度化するため、ドローン空撮およびAI評価を用いた新たな枠組みを提案しました。研究チームはこの枠組みを使って混植(複数の品種や複数の作物を栽培する方法)の有効性を検証し、収量向上以外にも様々な利点があることを初めて実証しました。今回の研究成果を用いることで、混植以外にも、多面的な強みを持つ様々な農法の検証や普及の促進のほか、世界の農業が直面する「食料生産の増大」と「環境負荷の低減」という二重の課題に対する解決策を提供することが期待されます。
 本研究成果は、2026年4月10日に、学術誌Precision Agricultureで公開されました。
(論文はこちら:10.1007/s11119-026-10352-7




図1.新しく提案した枠組みの概略



■研究の背景
 農業の発展には農地での栽培試験が欠かせません。栽培試験では収量以外にも様々な項目(収量安定性や環境ストレス・雑草・病害虫への耐性など)が重要ですが、それらの評価には大きな労力が必要です。とくに、複数の作物を組み合わせる混植体系では、調査対象が増え、栽培試験の負担はさらに大きくなります。混植は収量向上だけではなく、生産の安定化やストレス耐性などの利点が期待されますが、組み合わせが膨大なため、多面的な効果を十分に調べるのは困難でした。
 そこで本研究では、栽培試験にドローン空撮とAI解析を組み合わせ、複数の項目を同時に評価できる枠組みを構築しました(図1)。さらにこの枠組みを用いて、近年持続的な農法として注目される混植の有効性を検証しました。
■研究成果のポイント
 本研究で提案する新たな枠組みの有効性を検証するため、飼料や緑肥注1)として利用されるムギ類(エンバク、ライムギ、オオムギ)の栽培試験に適用しました。すると、単一品種の栽培に比べ、混植栽培は平均収量を向上させるだけでなく、収量のばらつき(土地ムラ)を減らし、雑草耐性を向上させる利点がある一方、一部の単一栽培は倒伏耐性が高いことが分かりました(図2)。これらの多くは、一般的な人力だけの調査では評価できないものです。特に、収量のばらつきを抑えることは農業生産上重要ですが、ばらつきを精度よく評価するためには、位置情報付きの収量データが多数必要で、これまでの栽培試験では定量化が困難な項目でした。本研究で提案した枠組みは、通常の調査に並行して2-3週間に一度ドローン空撮を行い、栽培終了後にコンピュータで解析を行うだけで、それらの項目を多面的に評価できます。




図2.混植栽培の多面的評価



■今後の展望(研究者コメント)
 近年、緑肥・堆肥・微生物資材など、持続的な農法への関心が高まっています。これらの枠組みには、収量の確保に加え、土壌改良や生態系機能の向上など、さまざまな利点が期待されています。本研究で示した枠組みは、混植だけでなく、こうした枠組みを効率的かつ精緻に評価できるため、今後の技術開発や現場実装にすぐに応用可能です。
 とくに、本研究での枠組みを活用することで、栽培試験の効果検証は大きく前進すると考えられます。具体的には、以下のような展開が期待されます。

・農業試験のDX化: 最小限の追加労力で収量を含む多面的な評価が可能になるため、新規資材や栽培体系の比較試験、さらには品種選定のプロセスを大幅に加速できます。

・気候変動への適応:気象条件の不確実性が高まる中でも、安定した生産を実現するための資材・栽培体系・作物の組み合わせを、迅速に探索・評価することが可能になります。

・混植を基盤とした持続可能な農業の推進: 混植は、追加的な資源投入を伴わずに、収量の向上、圃場内のばらつきの低減、雑草抑制、倒伏耐性の向上など、複数の機能を同時に高める可能性があります。本研究の枠組みは、これらの効果を定量的に評価し、実用化を後押しする基盤となります。


用語解説

注1)緑肥:土壌の状態を改善するために栽培され、そのまま土にすき込まれる植物。土に有機物や栄養を供給し、地力の向上や雑草の抑制などに役立つ。

■論文情報

タイトル:Drone-based assessment of multifunctionality in mixed cropping systems 
著者:Taishi Wajima, Namiko Yoshino, Motoaki Asai, Wei Guo, Yuya Fukano
雑誌名:Precision Agriculture
DOI:10.1007/s11119-026-10352-7
 ■研究プロジェクトについて
本研究は、以下の支援によって実施されました。
・ヤンマー資源循環支援機構(KI0232016)
・JSPS科研費 (Grant Number 25H00928)
 

プレスリリース本文はこちら