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大阪公立大学 研究Discovery Saga
2026年5月11日

コンパクトシティ政策、小規模自治体で福祉負担増リスク

-全国自治体データから政策への短期的影響を分析-

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学環境学数物系科学工学農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
因果推論/地域特性/コンパクト化/持続可能/人口減少/都市政策/コンパクトシティ/持続可能な開発/持続可能性/都市構造/制度設計/少子高齢化/パネルデータ/要介護/アウトカム/介護保険/高齢化

2026年5月11日
生活科学研究科
プレスリリース

発表者

大阪公立大学大学院生活科学研究科都市科学研究室 加登 遼准教授

発表概要

本研究は、日本全国の中小自治体1を対象に、立地適正化計画制度(日本におけるコンパクトシティ政策)の短期的影響を検証しました。2008~2022年の1,595団体の自治体パネルデータ※2を用い、制度施行後に各自治体が計画を導入した時期の違いを活かした準実験的手法(因果推論)により、総人口や自治体間の純移動(転入と転出の差)、介護保険認定件数への影響を分析しました。
その結果、立地適正化計画を策定した自治体では、総人口がより大きく減少する傾向が示されました。一方で、自治体間の純移動には明確な変化は確認されませんでした。さらに小規模自治体(町村)では、行政施設や教育施設の誘導を含む計画を策定した場合、要支援・要介護認定件数※3の増加傾向がみられました。
本研究成果は、2026年3月31日に国際学術誌「Sustainable Cities and Society」にオンライン掲載されました。

ポイント

    全国1,595自治体を対象に、コンパクトシティ政策の短期的影響を準実験的に検証。

    立地適正化計画を策定した自治体では、総人口がより大きく減少する傾向を確認。

    小規模自治体では、行政施設・教育施設の誘導を含む計画において、介護保険認定件数の増加傾向が示唆。

<研究者コメント>


日本のコンパクトシティ政策は、アメリカやドイツと異なり、長期的な“誘導政策”に特徴があります。本研究は、日本の政策の導入が必ずしも一様に望ましい結果につながるわけではなく、とりわけ小規模自治体では、移行期に福祉面での負担増加が生じる可能性を示した点に意義があります。今後は、都市規模に応じて、どの施設を、どこに、どう集約するかという制度設計が重要です。


加登 遼准教授

研究の背景

人口減少と少子高齢化が進む日本では、多くの中小自治体が行政サービスの維持や都市基盤の持続可能性という課題に直面しています。こうした中、日本は立地適正化計画を通じて、医療、福祉、商業、教育、行政などの都市機能を拠点へ誘導し、長期的にコンパクトな都市構造への再編を進めています。このような長期的な誘導政策は、日本のコンパクトシティ政策の特徴です。
しかし、これまでのコンパクトシティ政策をめぐる議論は、主に財政面や環境面の効果に注目したものが多く、人口減少・高齢化が進む都市で、政策移行期に住民生活や福祉へどのような影響が生じるのかについては、十分に実証されていませんでした。特に、小規模自治体における短期的な社会的コストの有無は、重要であるにもかかわらず未解明のままでした。

研究の内容

本研究では、日本の中小自治体1,595団体を対象に、2008~2022年の自治体パネルデータを構築しました。その上で、2014年に制度化され2016年以降に自治体で導入が進んだ立地適正化計画について、導入時期の違いを活用し、staggered Difference-in-Differences※4により、政策導入後の短期的な変化を推計しました。アウトカムは、総人口、自治体間の純移動、要支援認定件数、要介護認定件数です。
分析の結果、立地適正化計画の策定は総人口のより大きな減少傾向と関連していました。一方、自治体間の純移動には明確な影響は確認されませんでした。さらに、全体として介護保険認定件数の増加傾向がみられ、とくに小規模自治体では、行政施設や教育施設の誘導を含む計画で、要支援・要介護認定件数の増加傾向が示されました。
この結果は、コンパクトシティ政策が長期的な効率化を目指す一方で、小規模自治体では短期的に福祉関連の負担増加を伴う可能性があることを示しています。つまり、コンパクト化は常に同じ効果をもたらすわけではなく、都市規模や施設誘導の内容によって影響が異なる可能性があります。ただし、介護保険認定件数は行政データのため、政策が直ちに住民の自立度を低下させたと結論づけるものではなく、政策移行期における社会的・福祉的負担の変化の可能性を示したものです。



図:立地適正化計画が人口・自治体間純移動・要支援認定件数・要介護認定件数に与えた影響

期待される効果・今後の展開

本研究は、コンパクトシティ政策が常に同じように有効とは限らず、とくに小規模自治体では、政策設計次第で短期的な社会的コストが生じうることを示しました。これは、全国の自治体がコンパクトシティを推進する際、単に集約を進めるだけでなく、どの施設を優先し、どのようなアクセス確保策や生活支援策を組み合わせるかを慎重に検討する必要があることを示す知見です。
今後は、中小自治体において、人口減少時代にどのような都市政策が求められるのかを、あらためて実証的に解明していく必要があります。特に、大都市を前提としてきた都市政策をそのまま適用するのではなく、中小自治体の人口規模や高齢化、生活圏の実態に応じた政策のあり方を明らかにしていくことが重要です。また、小規模自治体では、人口減少を許容しながら市民のウェルビーイングを向上する「スマート・ディクライン」の視点を含めた、地域特性に応じた政策運用の重要性が高まると考えられます。

資金情報

本研究は、JSPS科研費(24K17421, 23K26284)の支援を受けて実施しました。

用語解説

※1中小自治体:本研究は、政令指定都市・中核市・施行時特例市を除く、人口約20万人未満の自治体が対象。日本に1700以上ある自治体のうち、9割以上は中小自治体が占めている。分析にあたっては、その他の市を「中規模自治体(人口約5万人~約20万人)」、町村を「小規模自治体(人口約5万人以下)」として区分した。
※2パネルデータ:同じ自治体を継続的に追跡したデータ。
※3 要支援・介護保険認定件数:要支援・要介護認定を受けた人数。行政統計であり、健康状態だけでなく、申請行動や認定制度の運用、人口構成の変化などの影響も受ける。
※4 staggered Difference-in-Differences:政策導入時期が自治体ごとに異なる場合に対応した差の差分析手法。導入前後の変化を、まだ導入していない自治体などと比較することで、政策の影響を推計する。

掲載誌情報

【発表雑誌】 Sustainable Cities and Society
【論文名】 Short-term Effects of the Compact City Policy on Demographic and Long-term Care Insurance Outcomes in Small and Medium-sized Cities: Evidence from the Location Optimization Plan in Japan
【著者】 Haruka Kato
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.scs.2026.107351

問い合わせ先

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院生活科学研究科
准教授 加登 遼(かとう はるか)
E-mail:haruka-kato[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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