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大阪大学 研究Discovery Saga
2026年5月11日

仰臥位エクササイズが立位バランスと敏捷性を改善

短時間・2週間の体操で体幹下肢神経筋連携向上

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
安全かつ簡便に実施できるトレーニングとして、高齢者やリハビリテーション分野への応用が期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
情報学複合領域生物学工学総合生物医歯薬学
【Sagaキーワード】
電気通信/オープンアクセス/運動プログラム/持続性/二足歩行/運動制御/姿勢制御/医工学/トレーニング/運動機能/筋肥大/リハビリ/リハビリテーション/高齢者
2026-5-7●生命科学・医学系数理・データ科学教育研究センター特任教授(常勤)髙野 渉

発表概要

短時間(10分)で実施可能な仰向けで行うエクササイズが、立位でのバランス能力や敏捷性を向上させることが明らかになりました。本研究では、起床時に仰向けで行う2週間の運動プログラムにより、柔軟性や敏捷性、静的バランスが有意に改善することを確認しました。これらの効果は筋肥大ではなく、神経筋の適応によるものである可能性が示唆されました。

研究の背景

バランス能力や敏捷性は、二足歩行の人間の基本的な能力です。バランス能力や敏捷性を高めるには運動が効果的とされています。しかし、従来のトレーニングは立位(立った姿勢)で行うものや負荷の高いものが多く、高齢の方やリハビリテーションの現場などでは取り組みにくいという課題がありました。そのため、安全かつ手軽に実施できる新たな運動プログラムの開発が求められていました。

研究の内容

本研究では、自分の手の指で腹部に刺激を入れつつ体幹の安定性、下肢の協調性、足の指の機能向上を目的とした、仰臥位(仰向けで寝た姿勢)で行うことができる、負荷の少ないエクササイズプログラムを開発し、その効果を検証しました。
2つの実験を実施し、エクササイズの効果について、体力測定で用いられる指標や、静的立位バランス(重心動揺)、敏捷性(反復横跳び時に生じる身体各部位の加速度)を用いて評価したところ、次の結果が得られました。
柔軟性および敏捷性が有意に向上
足幅を狭くした条件において、静的立位バランス指標(動揺面積・軌跡長)が有意に改善
反復横跳び時の頭部および体幹の動きが効率化(動作中の頭部・胸郭部の加速度が減少)
一方、握力や跳躍などの最大筋力指標には有意な変化が確認されなかった

本研究の結果は、仰臥位で行うエクササイズであっても、立位や抗重力位(重力に対抗して姿勢を維持している状態)における敏捷性および姿勢制御能力を向上させ得ることを示しています。特に、重さのある体幹部分を連動させかつ安定させることと、下肢が荷重に応じて適切に連動するような協調性を高めることが、効率的な運動制御に寄与した可能性が示唆されました。
本研究成果は、安全かつ簡便に実施できるトレーニングとして、高齢者やリハビリテーション分野への応用が期待されます。



図1. 本研究の概要

今後の展開

今後は、本研究で確認された効果の持続性や長期的な介入効果について検討を進めるとともに、高齢者や運動機能が低下した(腰痛や下肢変性疾患なども含め)対象への適用可能性についても検証を行っていく予定です。

特記事項


本研究成果は、米国の非営利学術出版社 Public Library of Science(PLOS)が発行するオープンアクセスジャーナル「PLOS ONE」(2026年4月29日付)に掲載されました。
論文タイトル:A supine exercise program linking trunk stability with lower extremity coordination is associated with improved body balance and agility: A study using randomized crossover and pre-post trial designs
URL:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0345749
本研究は、東京農工大学大学院工学府応用化学専攻 博士後期課程(当時)の跡見綾氏、同大学大学院工学府応用化学専攻 跡見順子客員教授(当時、現 電気通信大学 脳・医工学研究センター特任教授)、杏林大学保健学部 跡見友章教授、東京農工大学大学院工学府応用化学専攻 清水美穂客員准教授(当時、現 東京農工大学客員教授、電気通信大学 脳・医工学研究センター特任教授)、同大学院工学府応用化学専攻博士前期課程学生(当時)の佐藤瑞樹氏、大谷内正輝氏、同大学大学院工学研究院応用化学部門 渡邊敏行教授、大阪大学数理・データ科学教育研究センター 髙野渉特任教授(常勤)で実施されました。