超伝導でととのう電荷秩序の「しま模様」
― 銅酸化物超伝導体で「位相コヒーレンス」を強める 新たな関係を発見 ―
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 高温超伝導発現機構や、intertwined orderの理解が大きく進むことが期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
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2026年5月 8日 14:00
研究者情報
〇金属材料研究所 教授 藤田全基研究室ウェブサイト
発表のポイント
これまで銅酸化物高温超伝導体において、電荷密度波(CDW)(注1)と超伝導は互いに抑制し合う競合の関係にあると捉えられてきました。銅酸化物高温超伝導体の一種であるLa885Sr0.115CuO4の超伝導状態において、CDWの振幅(強さ)が抑えられる一方、揃い方(位相コヒーレンス(注2))が強まるという現象を新たに見いだしました。
本現象は長期保管で結晶構造に乱れが導入された試料や他の銅酸化物ファミリーの既報データとも共通して観察されたことから、銅酸化物に共通する本質的な性質であると考えられます。
発表概要
高温超伝導とCDWは長らく排他的な競合関係にあるとされてきましたが、波状に現れる両者の位相の関係は未解明でした。東北大学金属材料研究所の藤田全基教授、SLAC国立加速器研究所のJun-Sik Lee上級科学者を中心とする国際研究チームは、銅酸化物高温超伝導体において、超伝導がCDWの振幅や体積を抑える一方で、CDWの位相コヒーレンスを強めることを示しました。研究チームは銅酸化物高温超伝導体の一種であるLa1.885Sr0.115CuO4を対象に、共鳴軟X線散乱(注3)を用いてCDW散乱ピークの温度依存性を測定しました。その結果、Tc(注4)直上の27 Kから超伝導状態の12.4 Kに温度を下げると、積分強度(注5)は約15%低下する一方でピーク幅は約21%縮小しました。これは、超伝導によってCDWの「しま模様」がより広い範囲で規則正しく整列したこと(実空間相関長の増大)を意味します。従来の競合モデルでは説明できないこの現象に対し、研究チームは解析によりピーク幅を結晶中の乱れを示す位相コヒーレンスの成分に分けて評価しました。その結果、超伝導下でCDW強度が減少する一方、位相コヒーレンスが増大していることを突き止めました。今後、高温超伝導発現機構や、intertwined order(注6)の理解が大きく進むことが期待されます。
本成果は、2026年5月7日に学術誌Physical Review Lettersにオンライン掲載されました。

図1. (a)超伝導体のCuO2平面における電荷密度波(CDW)を示す模式図。薄い青色と濃い青色の陰影は、それぞれコヒーレンスの高いCDW相と低いCDW相を区別している。赤い矢印は、CDW相のコヒーレンスの変化を示しており、フォノン(緑色の振動)などの集団励起によって位相φの変化として引き起こされる可能性がある。
(b) 理想的なコヒーレント位相で周期性が約4の場合(左上)と、有限の位相変化φを伴うコヒーレント位相の低下の場合(左下)のシミュレーションによるCDWピークプロファイル(右)。
用語解説
注1. 電荷密度波(CDW)電子密度が実空間で周期的な濃淡を持って並んだ状態。銅酸化物ではスピン秩序や格子振動と結びついて現れることがある。
注2. 位相コヒーレンス
波の「山」と「谷」の位置関係がどの程度そろっているかを表す量。CDWの位相がよりそろうと散乱ピークは鋭くなる。
注3. 共鳴軟X線散乱
特定の元素の吸収端にエネルギーを合わせたX線を物質に入射し、散乱したX線を測定する実験手法。本X線散乱実験では、銅のL3端を使用しており、この手法により電荷の並び方に関する情報を取得できる。
注4. Tc
電気抵抗がゼロになる「超伝導」が始まる温度。
注5. 積分強度
散乱ピーク全体の面積であり、CDW秩序の強さや散乱に寄与する秩序領域を表す量である。
注6. intertwined order(複合秩序)
スピン、電荷、超伝導などの性質が密接に結びつき、影響し合う状態。これらが単なる「競合」ではなく、共通の電子状態から派生し、位相レベルで協力し合える関係であることを示唆している。
論文情報
タイトル:Superconductivity Reinforces Charge-Density-Wave Phase Coherence across Cuprates著者:H. Lee, C.-T. Kuo, M. Fujita, C.-C. Kao, J.-S. Lee*
*責任著者:SLAC国立加速器研究所 上級科学者 Jun-Sik Lee
掲載誌:Physical Review Letters
DOI:10.1103/g41t-8456
詳細(プレスリリース本文)
問い合わせ先
(研究に関すること)東北大学金属材料研究所
教授 藤田全基
TEL: 022-215-2035
Email: fujita*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学金属材料研究所
情報企画室広報班
TEL: 022-215-2144
Email: press.imr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)


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