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京都大学 研究Discovery Saga
2026年5月3日

量子のだるま落としで原子核を探るプロジェクトから初成果

―炭素、酸素原子核に重陽子クラスターを発見―

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
原子核がどのような形で存在しているかという問いに対する新しい発見であり、安定性の起源やアルファ崩壊の理解に貢献すると期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
複合領域数物系科学
【Sagaキーワード】
陽子ビーム/原子核/対称性/陽子/ヘリウム/ヘリウム3/中性子/内部構造
この研究の主な対象者
企業・研究者の方
公開日

概要

銭廣十三 理学研究科准教授、辻崚太郎 同大学院生(研究当時)、上坂友洋 理化学研究所部長、久保田悠樹 同研究員、田中純貴 大阪大学助教、緒方一介 九州大学教授らの国際共同研究グループは、炭素12および酸素16という原子核の中に、陽子1個と中性子1個のペアが固まりになった重陽子クラスターが、従来考えられていた以上に高い確率で存在することを発見しました。
 原子核の内部では陽子と中性子がバラバラで一様に配置された液滴のような構造と考えられてきましたが、その一方、小さな固まり(クラスター)が存在する可能性(非一様性の発現)が示唆されていました。そこで、陽子を衝突させ核内部から「だるま落とし」のように粒子をたたき出すノックアウト反応を利用して内部構造を調べる「おのころプロジェクト」をスタートさせました。
 国際共同研究グループは、「おのころプロジェクト」の初の成果として、陽子ビームにより炭素12および酸素16原子核から重陽子を取り出す実験を実施し、重陽子クラスターが少なくとも30~40%以上の確率で存在することを明らかにしました。今回の成果は、原子核がどのような形で存在しているかという問いに対する新しい発見であり、安定性の起源やアルファ崩壊の理解に貢献すると期待されます。「おのころプロジェクト」からは、アルファ・クラスターや三重陽子クラスター、ヘリウム3クラスターに関する新たな実験データも得られており、原子核における非一様性が従来考えられていたよりはるかに多様な形で、かつより高い確率で発現している兆候が捉えられています。
 本研究成果は、2026年5月1日に、国際学術誌「Progress of Theoretical and Experimental Physics」にオンライン掲載されました。


量子のだるま落としとしてのノックアウト反応の概念図

研究者のコメント
「基礎物理学の世界では、場所や方向によってモノの在り方が変わらない性質を大切にします。このような特性は対称性、一様性(場所に依らない)、等方性(方向に依らない)などと呼ばれており、実際物理法則は高い対称性を持っており、場所や方向に依っていません。しかし実際に私たちの周りの世界を見てみると、それはとても非対称で、非一様で、非等方に見えます。『おのころプロジェクト』では、私たちの世界の非一様性がどのようにして生まれたのかという疑問から、原子核というミクロな世界での非一様性の現れを探ろうとしています。今回初成果を報告できましたが、今後も多くの研究を行っていきたいと思っています。」(上坂友洋)

詳しい研究内容について

量子のだるま落としで原子核を探るプロジェクトから初成果―炭素、酸素原子核に重陽子クラスターを発見―

研究者情報

研究者名 銭廣 十三
京都大学 教育研究活動データベース
研究者名 Ryotaro Tsuji ORCID

関連部局

理学部・理学研究科