[Top page] [日刊 研究最前線 知尋] [Discovery Saga総合案内] [大学別アーカイブス] [Discovery Saga会員のご案内] [産学連携のご案内] [会社概要] [お問い合わせ]

京都大学 研究Discovery Saga
2026年5月3日

PD-1の適度な調節でがんを強力に抑制

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
PD-1を完全になくすのではなく、スイッチの操作で「適度に調整」することが安全で効果的ながん治療につながる可能性を、マウスモデルを用いて示す
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
ゲノム編集技術/遺伝子操作/PD-1/がん免疫/がん免疫療法/マウスモデル/抗体療法/免疫逃避/エンハンサー/ゲノム編集/免疫療法/T細胞/がん細胞/がん治療/マウス/自己免疫/自己免疫疾患/制御性T細胞/副作用/免疫チェックポイント/免疫細胞/ゲノム/遺伝子/抗体
この研究の主な対象者
企業・研究者の方
公開日

概要

私たちの体にある免疫細胞はがんを攻撃しますが、がん細胞はT細胞の表面にある「PD-1」という分子(ブレーキ役)を利用して、その攻撃から逃れてしまいます。現在の治療法はこのブレーキを外すものですが、効果が限定的な場合もあり、PD-1が作られる仕組みの根本的な解明が求められていました。
 このたび、セオ ・ウセオク(SEO Wooseok) 医学研究科准教授、西川博嘉 同教授らの研究グループは、PD-1を作る遺伝子の働きを調節する「上流エンハンサー」というスイッチに着目しました。ゲノム編集技術を用いてこのスイッチを壊したマウスを作製したところ、がん組織内においてT細胞のPD-1の発現が減少することが分かりました。その結果、攻撃役のT細胞が活性化し、がんの増殖が顕著に抑えられました。一方で、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」の機能は維持されており、副作用である自己免疫疾患のような症状も見られませんでした。本研究は、PD-1を完全になくすのではなく、スイッチの操作で「適度に調整」することが安全で効果的ながん治療につながる可能性を、マウスモデルを用いて示しました。今後は、次世代の免疫療法の開発に貢献することが期待されます。
 本研究成果は、2026年3月27日に、国際学術誌「Immunology Letters」にオンライン掲載されました。
画像

従来の抗体療法は外からブレーキを阻害するが、本研究は遺伝子操作でPD-1を低発現に保ち、がん細胞の免疫逃避を防いで攻撃力を高める新しいアプローチへの基礎研究である。(図作成:SEO Wooseok)

研究者のコメント
「PD-1を完全に壊すのではなく、スイッチ(エンハンサー)を操作して『適度に弱める』ことで、安全かつ強力にがんを攻撃できることを証明しました 。この『調節』という新しい考え方が、将来の免疫療法をより進化させる鍵になると考えています。
免疫チェックポイント分子PD-1を単に『阻害』するのではなく、遺伝子のスイッチ(エンハンサー)を操作することでその発現を『適度に調節』するという新しいアプローチを提示しました。 この手法が、副作用を抑えつつ治療効果を最大化する、次世代のがん免疫療法の基盤となることを期待しています。」(SEO Wooseok) 

詳しい研究内容について

PD-1の適度な調節でがんを強力に抑制

研究者情報

研究者名 SEO Wooseok
京都大学 教育研究活動データベース
研究者名 Hiroyoshi Nishikawa ORCID

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.imlet.2026.107171

【書誌情報】
Chandsultana Jerin, Wooseok Seo, Hiroyoshi Nishikawa (2026). Genetic disruption ofPdcd-1 upstream enhancer boosts T cell function and antitumor responses.Immunology Letters, 280, 107171.

関連部局

医学部・医学研究科