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京都大学 研究Discovery Saga
2026年4月30日

ゲノム内の「撹乱DNA」を抑え込む新戦略

―ウイルス抑制因子を転用した新規抑制機構の解明―

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
撹乱DNA抑制機構の発見は、新たなレトロトランスポゾン抑制技術、関連疾患の緩和手法の開発にもつながることが期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
生物学総合生物医歯薬学
【Sagaキーワード】
悪性化/遺伝情報/胚発生/レトロトランスポゾン/トランスポゾン/ゲノム情報/LINE-1/免疫応答/ウイルス/ゲノム/遺伝子/老化
この研究の主な対象者
企業・研究者の方
公開日

概要

三好知一郎 生命科学研究科准教授(現:理化学研究所チームディレクター)、西森奎 同博士後期課程学生(研究当時)らの研究グループは、伊藤拓宏 理化学研究所チームディレクターらと共同で、ゲノム情報を書き換えるLINE-1レトロトランスポゾンを、ウイルス抑制タンパク質であるHERC5が抑制することを発見し、その機構を明らかにしました。ヒトの遺伝情報であるゲノム内には、自らのコピーDNA配列をゲノム上の別の場所に挿入(転移)する「LINE-1」とよばれるレトロトランスポゾンが存在します。LINE-1の転移は進化の原動力となる一方で、挿入先の遺伝子を破壊するリスクがあり、疾患の発症につながる可能性もあります。細胞は様々な方法でこうした「撹乱DNA」を抑制していますが、その詳細なメカニズムについては未解明な部分が多く残されていました。本研究グループは、HERC5というウイルス抑制因子が、LINE-1から作り出されるタンパク質ORF1pの翻訳を阻害することで、その転移を抑制していることを発見しました。近年、LINE-1の活性化と老化プロセスやがんの悪性化との関連が多く報告されています。本研究による撹乱DNA抑制機構の発見は、新たなレトロトランスポゾン抑制技術、関連疾患の緩和手法の開発にもつながることが期待されます。
 本研究成果は、2026年4月30日に、国際学術誌「Nucleic Acids Research」にオンライン掲載されました。
画像

HERC5によるLINE-1の抑制メカニズム:ゲノム上を移動(転移)するLINE-1は、自身の転移に必要なタンパク質(ORF1p)を作り出す。本研究で、ウイルス抑制因子であるHERC5が、このタンパク質の合成(翻訳)を特異的に阻害し、LINE-1の転移を未然に防いでいることが明らかになった。(図作成:西森奎、Created with BioRender.com)

研究者のコメント
「トランスポゾンはゲノムの約半分を構成しているにもかかわらず、『がらくたDNA』と呼ばれ、長年注目されていませんでした。しかし近年、トランスポゾンは転移によって進化に寄与するのみならず、その転写産物が胚発生、老化、免疫応答など様々な生命現象に関与していることが次々と報告されています。トランスポゾンはまだまだ未解明な部分が多く、今後も目が離せない分野だと思います。」

詳しい研究内容について

ゲノム内の「撹乱DNA」を抑え込む新戦略―ウイルス抑制因子を転用した新規抑制機構の解明―

研究者情報

研究者名 三好 知一郎 Researchmap 研究者名 西森 奎 Researchmap

関連部局

生命科学研究科