ドローンとAIで“見えない地下の収量”を収穫前に予測
――圃場フェノタイピングと成長モデルを統合した地下部の時系列推定――
【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
![]() | 本技術により、収穫部が地下にある作物の非破壊時系列フェノタイピングの可能性が示され、収穫前の収量予測やスマート農業の高度化への応用が期待 |
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
発表のポイント
◆ドローン画像と機械学習を組み合わせ、地下部の成長モデルを用いて、地上から観測できないジャガイモ地下部の収量を収穫前に予測する手法を開発しました。◆圃場で取得した時系列のドローン画像から植物の生育指標を抽出し、サンプリングによって得られた地下部重量の実測値との関係を機械学習モデルに学習させ、未掘り取りのプロットの推定を行いました。
◆機械学習によって推定された地下部重量を成長曲線モデルのあてはめに用いることで、収量予測を実現しました。
◆本技術により、収穫部が地下にある作物の非破壊時系列フェノタイピングの可能性が示され、収穫前の収量予測やスマート農業の高度化への応用が期待されます。
バレイショの収量を予測するパイプライン
発表概要
東京大学大学院農学生命科学研究科の井町勇登大学院生、岩田洋佳教授、郭威准教授らと、株式会社クボタの研究グループは、ドローンによるリモートセンシングと機械学習を組み合わせることで、地下で形成されるジャガイモ塊茎の収量を収穫前に予測する新しいフェノタイピング手法を開発しました。本研究では、RGBおよびマルチスペクトルカメラを搭載したドローンで圃場を定期的に撮影し、植被率、群落高、色指数、植生指数などの画像特徴量をプロット単位で抽出しました。これらの情報とサンプリングによって得られた塊茎重量の実測値の関係を機械学習モデルに学習させました。未掘り取りのプロットについて、画像特徴量を機械学習モデルに入力することで塊茎重量を推定し、その推定値の時系列データを成長曲線モデルに適用することで、収穫前の段階からプロットごとの収量を予測することに成功しました。東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構(西東京市)の圃場で2年間にわたり実施され、塊茎重量推定において相関係数0.8以上、収量予測では相関係数0.7以上の精度が得られました。本研究は、収穫部が地下に形成される作物の生育を地上からのリモートセンシングで推定できる可能性を示したものであり、収穫前の収量予測や圃場管理の最適化など、スマート農業への応用が期待されます。
図 1: ドローン画像を用いたジャガイモ圃場のフェノタイピング観測ドローンによるRGBおよびマルチスペクトル画像を用いて、植被率や群落高、植生指数などの生育指標を圃場スケールで取得する。
発表内容
ジャガイモは世界的に重要な食料作物ですが、収穫物である塊茎が地下で形成されるため、生育途中の収量を把握することは容易ではありません。従来は圃場の一部を掘り取って調査する破壊的サンプリングに依存しており、圃場内の収量のバラツキを高精度に把握することは困難でした。近年、ドローンによるリモートセンシング技術の発展により、高頻度に作物の生育状態を広範囲にわたり高解像度で観測することが可能になっています。画像を用いた機械学習モデルにより地下部重量を推定する手法はこれまでにも報告されていますが、時間的な変化を考慮した収量予測への活用は十分に検討されていませんでした。
本研究では、RGBおよびマルチスペクトルカメラを搭載したドローンを用いて圃場を定期的に撮影し、植被率、群落高、色指数、植生指数などの画像特徴量を抽出しました(図 1)。これらの特徴量とサンプリングによって得られた地下部重量のデータを用いて機械学習モデルを構築し、圃場区画ごとの塊茎重量を推定しました。さらに、推定された重量の時系列データをGompertz成長曲線モデル(注1)に適用することで、収穫時の収量を予測する手法を開発しました。
実験は東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構の圃場で2023年と2024年の2年間にわたり実施され、植栽密度や種イモ条件を変化させた複数の処理区を設けて評価しました。その結果、塊茎重量の推定において相関係数0.8以上の精度が得られました。推定値を用いた成長曲線による収量予測では相関係数0.7以上の精度が得られ(図2)、収穫前の段階から収量を予測できることが確認されました。
本研究は、収穫部が地下に形成される作物の収量を地上からの観測データと成長曲線に基づいて予測する新しいアプローチを示したものです。 定期的なドローン観測とサンプリング、AIによるフェノタイピングを組み合わせることで、地下部の時空間的な変化を把握しながら収量を予測することが可能になります。成長曲線を用いた本アプローチは、最適な収穫タイミングの示唆などの栽培管理の最適化などへの応用が期待されます。
なお、本研究で公開されたデータセットとソースコードは、Dryad(https://doi.org/10.5061/dryad.5qfttdzmn)で一般公開されています。
図 2: 成長曲線による収量予測の精度検証成長曲線によって推定された塊茎重量と、収穫時に測定された真値との比較結果。
関連情報
:「ジャガイモ収穫現場のRGB-Dカメラ映像から“完全な三次元”を再構成:「3DPotatoTwin」データを公開――収穫機の不完全3Dを補うAI基盤で、収量評価とスマート農業に貢献―」(2025/10)
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20251028-1.html
発表者・研究者等情報
東京大学 大学院農学生命科学研究科井町 勇登 (Yuto Imachi) 博士課程
岩田 洋佳 (Hiroyoshi Iwata) 教授
郭 威 (Wei Guo) 准教授
Pieter M. Blok 研究当時:特任助教(現:Eindhoven University of Technology, Netherlands)
株式会社クボタ 研究開発本部次世代研究第一部
宮内 海南斗 (Minato Miyauchi)
宮本 恭輔 (Kyosuke Miyamoto)
田中 邦理 (Kunihiro Tanaka)
株式会社更別プリディクション
岡田 昌宏(Masahiro Okada)
論文情報
雑誌名:The Plant Phenome Journal題 名:Unmanned aerial vehicle-Based Spatiotemporal Phenotyping and Growth Modeling for Forecasting Potato Yield
著者名:Yuto Imachi, Kunihiro Tanaka, Minato Miyauchi, Kyosuke Miyamoto, Masahiro Okada, Pieter M. Blok, Wei Guo, and Hiroyoshi Iwata*(*責任著者)
DOI: 10.1002/ppj2.70078
URL:https://acsess.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ppj2.70078
研究助成
本研究は、株式会社クボタとの共同プロジェクト「クボタ東大ラボ」の支援により実施されました。用語解説
(注1)Gompertz成長曲線生物の成長を表す数理モデルの一つ。成長が初期はゆるやかに始まり、途中で急速に増加し、最終的に一定値に近づくS字型の変化を表す。本研究では、バレイショの塊茎重量の成長モデリングに用い、収穫時の収量を予測するために用いた。
問い合わせ先
<研究内容について>東京大学大学院農学生命科学研究科
教授 岩田 洋佳 (いわた ひろよし)
Tel:03-5841-5069 E-mail:hiroiwata@g.ecc.u-tokyo.ac.jp
<機関窓口>
東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部
総務課総務チーム広報情報担当
Tel:03-5841-5484 E-mail:koho.a@gs.mail.u-tokyo.ac.jp
関連教員
岩田 洋佳郭 威
東京大学 研究