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東京大学 研究Discovery Saga
2026年4月21日

オールペロブスカイト2接合太陽電池で変換効率30.2%達成

―順構造ワイドギャップセルと逆構造ナローギャップセルの組合せで実現―

【注目の成果:共同研究・産学連携のためのチェックポイント】
軽量フレキシブル高効率太陽電池の実現に役立つことが期待
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
環境学数物系科学化学総合理工工学農学医歯薬学
【Sagaキーワード】
光エネルギー/スペクトル/太陽/光エネルギー変換/太陽光/ペロブスカイト太陽電池/電子輸送/バンドギャップ/フレキシブル/ペロブスカイト/光吸収/太陽光発電/太陽電池/電池/システム工学/ナノ粒子/航空機/高効率化/エネルギー変換/結晶性/SPECT

プレスリリース

2026年4月21日
東京大学

発表のポイント

オールペロブスカイトスペクトル分割型2接合4端子太陽電池で30%を超える変換効率を実現しました。
FAPbI3ナノ粒子を種結晶に用いて順構造トップセルに用いるFAPbI3薄膜の高性能化に成功しました。
EVや電動航空機に搭載可能な第3世代の超高効率大面積ペロブスカイト太陽電池の実現に繋がる基礎研究の成果です。


発表概要

 東京大学先端科学技術研究センター瀬川浩司シニアリサーチフェロー、内田聡特任教授、張維娜特任研究員、伊藤蛍大学院生(研究当時)らの研究グループは、オールペロブスカイト2接合太陽電池で変換効率30.2%を達成しました。本研究では、高効率の順構造ワイドギャップペロブスカイト太陽電池と高効率の逆構造ナローギャップペロブスカイト太陽電池(注1)を組み合わせたスペクトル分割型2接合4端子太陽電池(注2)を用いています。特に、順構造ペロブスカイト太陽電池を高効率化するために、FAPbI3ナノ粒子(注3)を用いた光吸収層成膜技術を用いることで、この方式としては世界で初めて光エネルギー変換効率30%超を観測しました。この研究は先行研究と比較して順構造セルと逆構造セルを組み合わせた点で新規性があり、今後張り合わせ技術等を活用することで軽量フレキシブル高効率太陽電池の実現に役立つことが期待されます。
 本研究成果は、米国化学会の学術誌American Chemical Societyが発行するACS Omegaにオンライン掲載されました。

発表内容

 これまでのオールペロブスカイトタンデム太陽電池の先行研究では、逆構造ワイドギャップセルの上に逆構造ナローギャップセルを積層するため、一度に13層程度の成膜を行う必要がありました。このため、大面積化が困難なうえに歩留まりもあまり良くなく、実用化が困難と考えられていました。本研究では、工業化が容易な5層を製膜した順構造トップセルと、同じく5層を製膜した逆構造ボトムセルを独立して作成することでそれぞれの歩留まりを向上させ、最終段階でこの2つのセルを組合わせることで30%を超える高い光エネルギー変換効率を安定して得ることに成功しました。特に、ワイドギャップセルに用いる順構造ペロブスカイト太陽電池を高効率化するために、あらかじめホットインジェクション法で合成したFAPbI3ナノ粒子を2ステップ法のペロブスカイト膜形成に用いた光吸収層成膜技術で、ワイドギャップセルの変換効率を高めることができたのが重要なポイントです。現段階ではビームスプリッタを用いたスペクトル分割型2接合4端子太陽電池ですが、今後2つのセルの張り合わせ技術を開発することで、大面積で軽量かつフレキシブルな高効率太陽電池を実現することが期待できます。

図1:トップセル(a)とボトムセル(b)の構造とそれぞれのエネルギーダイヤグラム(c)(d)

表1:775nmのビームスプリッタを用いることで最大30.2%の光エネルギー変換効率が得られました。 〇関連情報:
「プレスリリース①ペロブスカイト太陽電池ミニモジュールで20.7%の変換効率を達成」(2019/7/4)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0109_00192.html


「プレスリリース②変換効率26.2%のペロブスカイト/CIGSタンデム太陽電池を実現」(2022/7/12)
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/20220712140000.html

発表者・研究者等情報

東京大学
 先端科学技術研究センター
瀬川 浩司 シニアリサーチフェロー
 研究当時:東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 教授
内田 聡 特任教授
張 維娜 特任研究員
 大学院工学系研究科化学システム工学専攻
伊藤 蛍 博士課程(研究当時)

論文情報

雑誌名:
ACS Omega
題 名:
All-Perovskite Four-Terminal Spectral Splitting Solar Cells of 30% PCE with FAPbI3 Wide-Bandgap Perovskite Fabricated by Nanoparticle Technologyy
著者名:
Kei Ito, Weina Zhang, Kazuteru Nonomura, Keishi Tada, Fumiyasu Awai, Takumi Kinoshita,Takeru Bessho, Jotaro Nakazaki, Satoshi Uchida, and Hiroshi Segawa
DOI:
10.1021/acsomega.6c00369
URL:
https://doi.org/10.1021/acsomega.6c00369

研究助成

本研究は、NEDO「太陽光発電導入拡大等技術開発事業」の支援により実施されました。

用語解説

(注1)ペロブスカイト太陽電池
ペロブスカイト太陽電池は、高効率かつ軽量などこにでも設置できる次世代太陽電池として注目されています。なかでも、異なるバンドギャップを持つ材料を積層する「多接合太陽電池」は、太陽光スペクトルを効率的に利用できるため、更なる高効率化が期待されています。ペロブスカイト太陽電池には、光入射側から電子輸送層/ペロブスカイト/正孔輸送層の順番で積層した「順構造型」と、光入射側から正孔輸送層/ペロブスカイト/電子輸送層の順番で積層した「逆構造型」があります。これまでオールペロブスカイト多接合太陽電池では、2つの逆構造型を重ねたタンデム太陽電池が殆どでしたが、本研究では順構造型と逆構造型を重ねることによって高効率化を実現しています。
(注2)スペクトル分割型2接合4端子太陽電池
多接合型太陽電池には、単純に全ての層を積層して+極と-極の2端子で電気を取り出す2端子型の他に、ワイドギャップセルとナローギャップセルのそれぞれに+極と-極を取り付けた4端子型があります。また、ワイドギャップセルからの透過光をナローギャップセルで吸収させるタンデム型の他に、ビームスプリッタを用いたスペクトル分割型があります。本研究では、スペクトル分割型4端子太陽電池の構造を採用しています。
(注3)FAPbI3ナノ粒子
ペロブスカイトの一つであるFAPbI3は、これまでは結晶の制御が難しく、均一性の高いペロブスカイト層を形成することが困難でした。本研究では、あらかじめ結晶性の高いFAPbI3ナノ粒子を合成し、これを種結晶とすることで高性能のFAPbI3薄膜を形成することに成功しました。

問い合わせ先

東京大学先端科学技術研究センター
シニアリサーチフェロー 瀬川 浩司(せがわ ひろし)
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瀬川 浩司