【一橋国際シンポジウム】「外国による情報操作・干渉に対する社会的レジリエンス―学術・研究機関ネットワークの役割」
【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
【Sagaキーワード】
民主主義・人権プログラム日にち2026年3月10日
時間10:00-18:00
開催場所佐野書院
概要
2026年3月10日、一橋大学とグローバル・ガバナンス研究センター(GGR)は、「外国による情報操作・干渉(FIMI)に対する社会的レジリエンス ―学術・研究機関ネットワークの役割」をテーマとした国際シンポジウムを開催しました。開会にあたり、一橋大学副学長である屋敷二郎教授が開会の挨拶に立ちました。本イベントには、5つの大学から修士・博士課程学生、研究者、実務家など約20名が参加しました。このシンポジウムは、一橋大学が採択された大学院教育の改革を支援する文部科学省「未来を先導する世界トップレベル大学院教育拠点創出事業(FLAGs)」の助成のもと開催され、博士課程学生が複数のセッションにおいて発表を行いました。各セッションの詳細については、以下のセッション概要をご参照ください。セッション1:FIMIの複雑性(モダレーター:市原麻衣子 一橋大学教授)
一橋大学大学院法学研究科の博士課程学生であるサッシャ・ハニグ氏は、FIMIに対する社会的脆弱性に関して報告しました。ハニグ氏は、偽情報研究における3つの主要な複雑性として、分野横断的な研究の欠如、技術の急速な進歩、そして社会的脆弱性の測定における難しさを概説しました。ハニグ氏は「2050年の中国」ナラティブを事例として、FIMIがソフトパワーを活動した情報発言、AI生成コンテンツ、仲介インフルエンサーを通じてどのように機能するかを示しました。タルトゥ大学の特任研究員であるマイア・クラッセン氏は、ハイブリッド戦争および情報障害の文脈におけるFIMIの複雑性を批判的に考察しました。クラッセン氏は、偽情報および認知戦に対する民主主義の脆弱性を強調し、情報障害は単一の解決策では対処できない複雑な「難題(wicked problem)」であり、リスクを管理・軽減するための多角的なアプローチが必要だと指摘しました。カレル大学の博士課程学生であるトビアーシュ・リポルド氏は、中国の対外影響工作について、中国共産党の活動は組織的・体系的なシステムの一部として行われていると論じました。リポルド氏は、対象国で活動するアクターがどの党組織の指示を受けているかを特定・可視化することの重要性を訴えました。とりわけ統一戦線工作部は海外の華人コミュニティや政治家・学者などへの影響力工作を担う中心的な組織であると指摘しました。
セッション2:FIMIへの対抗策(モダレーター: 中谷純江 一橋大学教授)
ラトビア大学講師のロリタ・ブカ氏は、2025年の欧州人権裁判所のBradshaw and Others v. the United Kingdom事件について発表しました。本件は、ブレグジット国民投票や2019年総選挙に際し、政府がロシアによる選挙干渉に適切に対処しなかったとして元議員らが提訴したものです。ブカ氏は、本判決が民主主義を中核的価値として位置づけ、偽情報に対する法的枠組みに向けた重要な第一歩であると結論づけました。一橋大学大学院法学研究科の博士課程学生である鈴木涼平氏は、日本におけるFIMIへの対応策を分析しました。政治・社会領域への影響の拡大に対し、規制の枠組み、民間の取り組み、メディアリテラシー教育を検討するとともに、研究能力の不足、制度的連携の弱さ、国際協力強化の必要性といった主要な課題を指摘しました。
セッション3:必要な研究と学術協力(モダレーター:市原麻衣子 一橋大学教授)
本セッションでは、FIMI研究の現状と学術協力の重要性をテーマに、4名の研究者による発表が行われました。ヴィリニュス大学のギンタラス・アレクノニス教授は、プロパガンダを避けがたい社会的病理に例え、5つの主要なステークホルダーを特定する一方、プロパガンダの影響を過大評価することや検閲に頼ることへの警戒を促しました。ラトビア大学のイヴェタ・ラインホルデ教授は、政府は偽情報と戦うための手段を持ちながらも一貫した政策的枠組みが欠如していると指摘し、学術研究者は証拠と革新的な解決策を提供する一方、研究の遅さと政策の緊急性とのギャップが課題であると述べました。
タルトゥ大学のマリア・ムルマー=メンゲル准教授は、デジタルメディアリテラシーを通じた偽情報対策におけるエストニアの事例を考察しました。ムルマー=メンゲル准教授は、学際的な枠組み、早期教育、コミュニティへの関与を強調し、公式・非公式な場でメディアリテラシーを統合することが、情報障害に対する社会的レジリエンスと批判的思考力の強化につながると示しました。最後に、シノプシス創設者・ディレクターのマルティン・ハラ教授(カレル大学)は、イデオロギー、プロパガンダ、偽情報を構造的に分析し、ロシアと中国のアプローチを比較しました。ハラ教授は、世界規模で組織的な情報操作に効果的に対処するためには、学際的・比較研究が不可欠であると強調しました。
【イベントレポート作成】
チョン・ミンヒ(一橋大学大学院法学研究科 博士課程)
ビラル・ホサイン(一橋大学大学院法学研究科 博士課程)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
一橋大学 研究









